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アウクスブルク帝国への招聘1

赤の森の大討伐の帰途、結局聖龍ロプロスの出番はなかった。帰途に際して5体ものSクラスの魔物に遭遇するも、私達聖女の三重の聖歌にアル、アン、 エドヴァルドさん三人の活躍が著しかった。他の騎士団員はほとんど支援攻撃だけになっていた。何故なら、アンもエドヴァルドさんも瞬歩のスキルを得たのだ。中隊長は悔しがっていた。何せよ、魔法剣を使おうにも、三人にことごとく先を越されるのだ。魔法剣はアンから教わり、中隊長以下、小隊長全員が身に付けていた。もちろんエドヴァルドさんもだ。ははははっ、ちょっとアクレイア王国の歴史を変えてしまったかもしれない。歴史書にはテヘペロと誤魔化す発言を言い残しておこう。


森の最深部を脱すると中隊長は我慢できなくなったらしい。


「あー! もう、おまえら新人は後ろで控えていろ!?」


「ええっ?」


「まあぁ!」


「なんと!」


三人は驚いた様だが、そりゃ先輩たちの気持ちも察しないと…Sクラスの魔物相手に新人ばかりにいいとこ取られたら、そりゃ気分悪くなるわよ。アルは魔物と戦う事が出来る様になって魔物討伐に夢中で、アンとエドヴァルドさんは瞬歩のスキルに酔って、配慮ができなかったポイ。


「ここからは新人には危険だから後方勤務!」


「危険な場所過ぎてから危険だなんてあり?」


「はぁぁ~もっと瞬歩のスキル試したかった」


「瞬歩も魔法剣ももっと実戦で鍛えたかった」


三人共不承不承だが当然従う。


「なんで僕達がクリスの護衛なんてしなきゃいけないんだ?」


いや、アル、お前の本来の仕事はそれだよ。完全に私の護衛だって事忘れてるだろ? ていうか”なんで私の護衛をしなきゃいけないんだ?” だなんて酷すぎない?


中隊長達はAクラスの魔物に遭遇すると歓声を挙げて戦った。


「ひゃっはー!? 魔物がぶち殺せる!」


「オラオラオラァ 魔物共! 魔法剣の餌食だー!」


いや、もうアクイレイア王国騎士団の威厳が…ほぼ世紀末の荒くれ共のノリだ。


中隊長達は確実に強くなった。聖女の聖歌が無くてもAクラスの魔物位は簡単に倒せるだろう。アンやセシーリアさんは魔法剣を教えただけでなく、闘気や魔素の使い方も教えていた。その為、騎士団全体の力が爆上がりした。特に魔法戦力の強化は凄まじかった。何せよ今まで自身の魔力だけで魔法を発動していた処を魔素で補う事を覚えて、1/100の魔力で済むのだ。普段使えなかった魔力を要する魔法を連発出来て、火力は大幅に上がった。中には魔法の誘導も覚えた者がいる様だ。全部アンが教えてしまった。騎士団内でこっそり教室開けば、かなり儲かった筈なのに…アンの馬鹿…


「はっ!? 気のせいか? 俺の価値下がってないか?」


はい中隊長。その通りです。魔法使いが復権した今、あなたのユニークスキルはあまり意味がありません。早く魔法覚えようね♡ 今なら私が特別授業してあげる♡ もちろんぼったくり料金で♡


まだまだ、お金儲けの話がありそうなので、ちょっと安堵する。やっぱりお金大事。帰ったら、こっそり中隊長に囁いて特別教室を開こう。変な誤解されそうだけど、高額な報酬にすれば大丈夫…余計変な風に思われるかな?


ケルンの街に入る前に第三中隊長のフレデリックが一言、私に話した。


「クリスがAクラスの魔物に精通している事、エンシャントドラゴンについてすら知っている事、信じられない闘気と魔素の使い方…そして、聖龍と知り合いな事…お前が何か隠している事は皆察している。だけど安心しろ。お前は俺達の為に惜しげも無く、それを教えてくれた。だから、俺達はこの事を決して口外しない。俺達は何があっても同じ騎士同士、お前に危機が迫ったら、必ず俺達はお前の為に何にでも立ち向かおう。それだけは忘れないでくれ」


いや、結構隠したんだけど、お金儲けの為に、命も惜しいけど、お金の魅力には代えられないから、ははは、結局ほとんどアンがバラした様な気がするんだけど、中隊長、買い被り過ぎだわ。


結局、私にはお金儲けの機会はなかった。帰還して直ぐにアクイレイア王国の国王から勅命を賜ったからだ。


10日間の行程は予定通りに行われ、私達第三中隊、第四中隊は一人の死者も出さずに帰還した。そして、あくる日、報告の為の会議が設けられた。会議室には騎士団長のイェスタ叔父様、私達聖女の他、アル、アンとエドヴァルドさん。第三中隊長フレデリク、第四中隊クルト・オルフ・ニルソン、第一中隊長クリストフ、各小隊長という顔ぶれだ。


「それで、大魔石の浄化はうまくいったのか?」


「首尾よく完了しました。聖女が三人いた為、短時間で完了しました」


「良い事ではあるのだが、死傷者が一人もでなかったという事はSクラスの魔物に遭遇しなかったのか? 意外だが?」


「いえ、Sクラスの魔物には六体遭遇しました」


「ろ、六体だと?」


「まさか、何かの間違いでは? それでは全滅していても不思議はない」


イェスタ団長も第一中隊長クリストフさんも信じられないという感じだ。


「我々は幸運でした。先ず聖女が三人、それに、天才の俺がいた事!?」


第三中隊長? 何を言い出した? 聖女が三人いた事はそうだけど、中隊長が天才? 変態の間違いでは?


「どういう事だ? 話が見えない」


「先ず、これは聖女セシーリア様のおかげなのですが、聖女様は聖歌を重ねる事で俺達の力が通常より数倍増しました。魔物の防御力は更に下がり、魔力や力も下がります」


「ふむ、確かに魔法の重ねがけは可能だし、聖女が三人集まる等という事は歴史上なかっただろう。確かにその可能性はあるな。それで、フレデリクが天才というホラは何処から出たんだ?」


さすが、叔父様、中隊長のホラを直ぐに見破った。


「俺は闘気と魔素に開眼した。俺は騎士達に指導を行い、俺達の隊は他の隊の数倍の強さになった。俺が第三中隊の全ての騎士達を数倍強くした」


「「……」」


団長と第一中隊長が無言になった。そうだろう? そんなホラ話、誰が信じる?


「ホントに凄かったんです。第三中隊長が突然エンシャントドラゴンを前に開眼して、もう、天上天下唯我独尊の状態でした。あたし、中隊長になら嫁いでもいいと思いました」


「何? セシーリア? 何を?」


団長が驚く。セシーリアさんまで中隊長のホラに…私は思い出したケルンの街に入る前に第三中隊長が言った言葉を、


『お前が何か隠している事は皆察している。だけど安心しろ。お前は俺達の為に惜しげも無く、その力を使ってくれた。だから、俺達はこの事を決して口外しない。俺達は何があっても同じ騎士同士、お前に危機が迫ったら、必ず俺達はお前の為に何にでも立ち向かう。それだけは忘れないでくれ』


中隊長は私を守る為に…嘘を…


「それにエンシャントドラゴン討伐の際、伝説の龍、聖龍が助けてくれました。おかげで俺達は一人の犠牲者を出さずに帰還できました」


「そうか、そういう事か。わかった。全てつじつまは合うな」


「えっ? 団長、信じるんですか?」


第一中隊長のクリストフさんは信じ難い様だ。そりゃそうだろう、ホラ話なんだから。でも、イェスタ叔父様は嘘を承知で、話を合わせてくれている様だ。私は頭がボ~となった。自分の身が危険に晒されている自覚がなかった。楽しい事ばかりで、忘れていた。私が伝説の大魔導士であり、私は暗黒の大魔導士なのだ。バレたら、私は王国の騎士団全てを敵に回す事になる。それを知っていて、第三中隊長は…私はいつかの飲み会で酔いつぶれた時の記憶が蘇ってきた。


『それで、どうしてクリス様はそんなにこの森の事に詳しいんだ?』


『私、500年前の前世で青の大魔導士だったからです。ひっく』


第三中隊長は全て知っていたんだ。それでも私の味方をしてくれたんだ。私は涙した。人様の優しさ、思いやりに涙が出た。私にそんなもの相応しくない。私がした過去の過ちが想い出された。しばらく皆の言葉が耳に入らなかった。


「では、国王陛下の決定を伝える、アウクスブルク帝国への聖女の派遣はクリスティーナ穣とエリス穣に決まった。5日後、帝国の騎士が迎えに来る。従者は第三中隊で受け持ってくれ。第三中隊はしばらく赤の森の討伐任務が無い。適任だろう」


「第三中隊なら大丈夫」


「ええ、安心できるわ」


「はい、クリスさんにはアルさんがいますし」


えっ? 話が見えない? 第三中隊長と聖女のセシーリアさんとエリスちゃんが良くわからない事を言っている。


「クリス、涙を流してしまったのか? 無理もない。帝国は君の国外追放を取り消した。君は我が王国の正式な使者として、聖女としてかの帝国を訪れるのだ。聖女としての任務を果たして来い。クリスがやり残した事をやってこい」


「お、叔父様!」


私の頬を伝った涙が、又、一粒机の上に落ちた。皆が私の方を見て、穏やかな笑みを浮かべる。こんな罰当たりな子に過分な措置。あまりの事に私の涙は後を絶たなかった。

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『連載版こうかい』~幼馴染に振られた上、サッカー部を追放されたら、他の幼馴染がドン引きする位グイグイ来た。えっ? 僕がいなくなって困ったから戻って来てくれって? 今更そんなのしりません~
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