赤の森の探索1
冒険者になって、ギルドに向かった。私とアルは子供の頃の様に手を繋いでギルドへ向かう。ギルドの前で、流石に恥ずかしいので手を放して、中に入った。既にアンとエドヴァルドが来ていた。
「遅いですよ。クリスさん、アル君!」
「そうですぞ! 新人冒険者は早起きが常識ですぞ!」
二人に叱咤される、だけどいつもより早くない?
「あの、いつも通りの時間なんだけど?」
「それはいつもアル君が変な依頼ばかり受けてくるからですよ」
アンが言った。確かに変な依頼ばかりだった。ファッションショーのモデルにイベントのコンパニオン……基本、男が働かないやつだ……こいつヒモになる気か?
「そういえば、一度も冒険者らしい仕事してない様な気がする」
「どうもアル君が冒険者の受付穣を篭絡して、その手の依頼ばかり斡旋してもらっていた様だ」
何? アル、いつの間に!?
「流石にちゃんと魔物の討伐とかしないと経験値を稼げないとまずいでしょ?」
「うん」
「だから俺とアン君で先に目ぼしい依頼をチェックしておいたんだ」
「ありがとうございます。私、もう、魔物ぶち殺したくて、手が疼いてたんです」
「何気にヤバい発言するな、クリスは……」
アルに言われたくねぇ。このヒモ野郎。
「で、何かいい依頼がありました?」
「いや、それがとてもいいんだがな、う~ん」
「そうなんです。う~ん」
んん? アンとエドヴァルドさんが何故か言いよどむ。
「どういう事なんですか?」
「条件が良すぎる事と、ピンポイントに俺達のパーティに依頼するつもりだとしか思えなくて」
「クリスとアンのファンじゃないですか?」
何の話だ? アル?
「その線なんだが、依頼主からするとその通りなんだが、理由がさっぱりわからない」
「依頼主は誰なんですか?」
「第一騎士団。このケルンの守護騎士団の団長からだ」
あ!? もしかして?
「もしかしてイエスタ叔父様からですか?」
「ああ、騎士団長イエスタ・メクレンブルグ様からの依頼だ」
「じゃ、安心していいですよ」
「確か、クリス殿の叔父上でしたか?」
「そうです。だから安心していいですよ」
依頼の条件は新人冒険者で男性2名、女性2名、そしてファッションショーに参加した事がある女性がいる事が条件だった。該当者は私達だけだろう。内容は騎士団の魔物討伐の随伴だった。騎士団と帯同するので安心だ。しかも、ご飯もついているというのが嬉しい。魔物をぶち殺せる! そう思うと私の心は踊った。
依頼内容詳細をギルドの受付嬢から聞くと、第一騎士団第三中隊の魔物討伐に帯同。低レベルの魔物の討伐、食事時の哨戒などだった。行程は3日、それで一人金貨3枚はかなり破格だ。この街だと金貨一枚で、大人が一人一か月暮らせる。
騎士団は一個中隊につき6名の小隊が4隊、合計24名の大所帯だ。3日間というとかなり奥まで行くが、騎士団と一緒なら安心だ。何より夜の野営が簡単なのがいい。交代で見張り番するにしても、人数がいないと話にならない。
私達はすぐに指定された場所に行き、騎士団に合流した。そして赤い森を目指して出発した。
懐かしい。私はそう思った。赤の森に入り、森の奥深くに入るにつれて、懐かしい赤の森の事を想いだしていた。前世で何度も通った森。深部は今もイメージがあまり変わらない様だ。この森の最深部には大魔石が今も埋まっている。その為、聖石が埋められているケルンの街の近くでありながら、赤の森には魔物が出る。
「君達には哨戒任務についてもらう。無理はするな。何か魔物がいたら、すぐに本隊へ連絡に走って欲しい」
この人は第三中隊の中隊長だ。名をフレデリクと言う。
「わかりました。任せてください。こう見えても腕は確かです」
「ああわかっている。だが、君達のパーティはその、なんだ、決して女性蔑視ではない。女性が二人もいる。それで騎士を二人護衛につける」
「はぁ?」
パーティ団長のエドヴァルドさんが素っ頓狂な声を上げる。それはそうだ。冒険者がやや危険な哨戒の仕事を引き受けるのは当然だ。それに護衛をつけるのだなんて、意味が無い。それなら哨戒任務は騎士二人で十分だろう? 本末転倒と言うしかない。
「いや、実はこの団の若い者の大半がクリス殿とアン殿のファンなんだ。それで、哨戒の合間におしゃべりできたらいいんだそうだ。護衛は皆、志願だ」
「そうですか! クリス殿とアン君の魅力が判ってくれたのですな!」
何故かエドヴァルドさんが興奮する。なんかこの人キモい香りがするんだよな。
こうして、私達は騎士二人に護衛されて哨戒任務についた。そして、森の1/3位まで来た時。
「出たぞ!」
先頭を歩いていたエドヴァルドさんが合図した。魔牛アウドゥムラだ!
魔牛アウドゥムラは姿は狂暴そうな牛で、みかけはそれ程怖くは無いが、何しろサイズが5mはある。十分怖い。だが、私はこの魔物の事を良く知っていた。この魔物のお肉は美味しいのだ。
「今日はすき焼きですね!」
私が喜々として言うと、
「いや、先ず本体に知らせよう。三匹もいる、これは低位の魔物じゃない」
危ない、危ない、前世では雑魚だったんだけど、今は強い魔物になっているんだ。危なく瞬殺する処だった。
エドヴァルドさんとアンが本体に連絡に行く、私達は騎士二人と牛の魔物を牽制する。魔物も値踏みしているのだ。自身より弱い敵か? 強い敵か? あるいは敵意があるのか?
3分もたたず本体が合流する。総数12名、残りの12名は荷物を運ぶ馬の護衛と周囲の哨戒だ。流石に騎士団は人員が多いので、鉄壁の用意周到さだ。
騎士団の戦いが始まる。流石騎士団! 見事な陣形、アタッカー、タンク、後方支援、囮役と、見事だ。だが……
「なんで弱点を攻撃しないの?」
「クリス殿? 今 何と?」
中隊長のフレデリクさんに聞かれてしまった。
「え!? 魔牛アウドゥムラって額が弱点だったんじゃなかったですか?」
魔牛アウドゥムラは額の骨が薄く、一番の弱点だ。額を打ち抜けば脳を破壊して簡単に倒せる。しかし、騎士団は肉弾戦で魔牛を力ずくで倒そうしているとしか思えない。
「あの、魔牛は額の骨が薄いんです、そこに剣で打撃を与えれば、脳震盪を起こすし、剣で刺し貫く事ができれば、簡単に倒せますよ!」
私はじれったくもあったが、早く魔牛を倒して欲しかった。何故なら、魔牛アウドゥムラは牛系の魔物で最も脂がのり、霜降り肉で有名なのだ。そして、あまり暴れられると、肉が硬くなり、美味さが半減する。私はどうしても久しぶりに美味しいすき焼きが食べたかったのだ。
「確かに、魔牛の頭の頭骨は額の部分が薄かったな。一理あるな」
「そうですよ。剣で魔牛の額を狙って一撃入れれば簡単ですよ!」
「よし、命令だ! 隙を見て魔牛の額に剣を打ち込め!」
「「「「「「はぁ!!!」」」」」」
先頭で魔牛と対峙していた6人の騎士達が勇ましい返事をする。そして、囮役の一人が一匹の魔物の気を逸らす事に成功すると、
「もらった!」
一人の騎士がこの隙に魔牛の額に激しい剣の一撃を入れる!
「ぐぉあおおおおおおおおお!」
魔牛は怒りの咆哮を上げるが、身体がぴくぴくしている。脳震盪を起こしたのだ。
「今だ!」
続いて他の騎士が連携良く、魔牛の額にとどめの剣を打ち込む!
グサッ
驚く程簡単に剣は魔牛に突き刺さった。そして、魔牛は動かなくなった。続いて他の2匹も簡単に倒された。
「皆さん凄い!」
「わ~凄~い!」
私とアンが歓声を上げる。女の子の歓声はおそらく騎士達も気分がいいだろう。アンは打算はないだろうが、私は下心丸出しでわざとらしく、騎士達を誉め称えた。これで私の評価ばっちり上がる筈♡
「じゃ! 皆さん、今、さばきますね! 任せてください!」
そういうと私は魔牛を解体し始めた。既に涎が出ている。魔物の解体は血とか内臓が出るので、大抵は嫌な仕事だが、私は前世で散々やっていたからへーきだ。
「え!?」
「はぁ?」
何人かが驚く。多分、私の手際が良すぎてびっくりしたのだろう。私は前世では、この魔牛の解体は国で一二の早さの自信があった。あっという間に一匹を解体する。そして、美味しい部分をピックアップ。
「なあ? そのあんた、そんなにいっぱい肉を切り取ってどうするつもりなんだ?」
「いや、24人分ですよ。3日もあれば全部食べられますよ。それに残ったのは売り飛ばしたいです」
「いや、そんなにたくさん持ち歩けないだろう?」
何を言ってるんだ? この騎士は? 私は不思議だったが、不用意にも良く考えていなかった。美味しい魔牛のすき焼きに目を奪われて、良く考えていなかった。
「嫌だな、こんな時の為にこれがあるんじゃないですか~!」
私はそういうと、一番美味しい魔牛のロースの塊を魔法の収納袋にいれた。巨大な肉片が小さな袋に収まる。魔法の収納袋とは、革袋に魔法を付与し、収納の魔法をかけたものだ。私はおかしく無い程度に魔法の力を落として、魔牛一匹分位の収納力に抑えていた。これ位なら駆け出し冒険者が持っていても不思議は無い筈だった。しかし、
「で、伝説の収納魔法だ……」
げっ!? まさかの今は存在していない魔法技術?
私は目が泳いでいた。又、やらかしてしまった。中隊長と目が合う。中隊長の目は不審者を見る目だ。
「えへ! テヘペロ!?」
「誤魔化されんぞ!」
可愛いアピールは簡単に潰えた。
連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)




