22話 初陣!
前回:――ユーシャ、またお説教喰らってる。流石ねぇ――
「じゃぁ、アンタが独りでどこまでできるか、見させてもらうからねぇ……たかがゴブリン相手って言っても、20は居ると思うから、何か作戦がない限り、独りは勧めないんだけど、ホントォにやるのぉ?」
カキアの街の冒険者ギルドにあった、4等級ミッション『ゴブリンの巣の掃討』推定数20~30。これを僕の正式な冒険者試験にするつもりらしい。
草原の先の雑木林に小さいけど、巣があるとか……昨日のあいつの話を聞くまでは、絶対できるって自身、あったのに。よくよく考えてみると、ぼくがこういう事をする必要がない事がわかる。
日本でも、自分が天才だと信じたかったけど、本当は成績悪いし。何とか取り繕っていたけど、見下されるのが悔しくて、塾通いしていたんだから。それでもダメだったけど……
「あ、あのー……やっぱり1人は、ちょっと……」
「あぁ、アンタ漸く、ちょっとは分かったぁ?じゃぁ、ヴァンくん、加減した状態で手伝ってあげてぇ」
あいつの加減っていうのが分からないけど、あの氷の力は使わないって事なのか?火竜と渡り合う力なんだし……
「了解、――点火――モードフロスト、いつでもいけるよお」
いきなり炎に包まれたと思ったら、炎が凍って体にまとわりついた。腕と足、胸に氷の塊が防具に重なって分厚くしている。腕の先から、つららみたいな爪が2本出てきた。背中は、ハリネズミみたいになってる。
遠目で分からなかったけど、ドラゴンと戦った時もこうだったのか?
「え、それで行くのかよ!さっき一瞬火に包まれてなかったか?お前、火じゃないのかよ!」
僕の言葉に3人は首を傾げた。なんでだろう。
「そういえば、この力の事何も言ってなかったっけ?属性の事もあるけど、出力自体は、火の方がずっと高いんだよ。そのせいもあって、加減しにくい。
逆に、氷は出力が低いけど、物質を作るっていう面で利便性が高いし、戦略的に使えたりするんだよ。
それに火竜の時に使ったのは、あいつが溶岩遊泳しても平気な身体で、自身の肌も発熱するから、街に居るだけで火事になるんでね。
氷を浸食させて熱を相殺、氷の樹とかバリケード設置で妨害、氷塊や氷の剣で牽制と攻撃って感じで、バランス取れたからだね。
要は使い様だよ。ハサミやユウタと同じ」
「え、最後の意味わからないけど……つまり便利だから使ってたって事でいいの?」
それだけ?そんな訳ないよね?
「そう、それでいい。たったそれだけさ」
それだけなのかよ!?
「じゃぁ、準備イイね?ユータは武器、大丈夫?一応ヴァンくんが取り寄せた、アダマンタイト製の高級品ではあるんだし、あの盾だって、出来は悪くないはずだからさぁ。マナを貯め込む仕組みのおかげで、ちょっと重いし、出力も弱いだろうけどねぇ」
「出力については改善の余地はあるねえ。でも、ゴブリンの攻撃くらいは大丈夫だろうさ。
エストックは先端が斬れ易くなってる代わりに、折れやすくもなってるから、無理な使い方するなよ?アダマンタイト製が折れるなんて、想像できないんだけどね……」
2人の言葉に、ぼくは装備を確認する。
軽量化して着やすくなっている革鎧、ぼくの身体能力を上げてくれている。
アダマンタイト製っていう、ロングソード。一応、突くだけじゃなくて、斬れるようになってるのか。先っぽだけって、剣道だってそうなんだから変わらないよな。
貰った盾、昨日調整していたみたいだ。軽い金属と、あの火竜の翼膜を使っている。向けた方に壁を作る術式と、周り一周に壁を作る術式がかけられる。
それと、リュック……じゃなくて、この世界のポーチのパックルだっけ。そこに一応、予備のスタンガンの棒が入ってる。
これが、ぼくの初期装備?
「なんて言うかー、初めて戦うのに、装備がずいぶん高価じゃない?ちょっとズルいなー」
「え、でも犬だって……ああああああ!」
「ガブリ」
やっぱり、カミツカレタ!
「いや、ごめん、分かった!オオカミ、オオカミだからあああ!」
少し噛みついてから、こいつは離した……ちょっと怖いんだけど。
「全く、俺の最初の戦いって言うなら、パンツ一丁だったんだからな。その時はゴブリン3匹で、魔法も使えなかった。むしろその時に、武器を奪ったくらいだったんだけどさ」
パンツ一丁って、どんな変態だよ。これ言ったら、また噛みつかれそうだな。
「どうやって勝ったんだよ」
「喉をガブリで狩ったんだよ」
なんか言葉がおかしい気がする。まあ、いいや。スタートで凄くいい状態なんだって事だし、独りじゃないなら、負けないはず。
「いけるな?」
「うん……行こう!」
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雑木林の中心に、わらのようなもので作ったみすぼらしいテントが2つ置かれている……ぼくだったらあんなの作れないかもしれない。案外、ゴブリンって頭いいのか?
「で、お前の試験だから、お前が方針決めるんだけど、どうする?」
イヌ……って考えてるとまた噛みつかれるだろうから、ヴァンが囁いてきた。でも、作戦とかってすぐに思いつかない。周りを見ても、特に何があるって感じじゃないし。
「えっと、そのまま突っ込んで、全滅じゃダメなの?」
「いや、こういう場合、サークレットフレアとかの魔術で、周りを火の海にして、逃げ場を無くして炙り焼きとかの方が、定番なんだけどさ」
ゲームとかの考えでいたけど、それをずっと上回る怖い話をし始めた……炙り焼きって……
「小さい洞窟なら、落盤させるのが一番楽だよね。でも、ここ屋外だから、あいつらの巣を直接穴に落として埋めるか?
あ、何ならあれやろうか。『メテオストライク』的なヤツ。出来るよ?高位の魔術師なら、詠唱に時間かかっても、大体できるし」
どれだけ危険な人が大量に社会にいるんだよ、それ。やめてくれよ……でも僕も魔術師なら、覚えるかな。いや、それはとにかく。
「あまり地形変えるのもダメじゃないか?なるべく穏便に……」
「ならどうするか。錯乱させて同士討ちとか?
睡眠や泥酔、雷撃の麻痺で行動制御か……俺なら氷像も作れるぞ?一瞬で綺麗に、産廃が芸術に早変わり、スバラスィ」
確かに安全っぽいけど、芸術っていうのは何だ?
「いや、直接……」
「ギャ、ギュギャアギア!」
作戦決めるのに話してたら、見つかった。見回りとか、いたのかよ?雑木林の中通ってたみたいだから、気付かなかった。
「テスト第一段階、失敗。残念。殴り込みますか」
なんか冷めた顔のヴァン。今のテストなの?!それより戦わないと!
「う、っうあああああ!」
僕は見回りゴブリンに、斬りかかった。
剣を縦に思いっきり振ったら、見回りゴブリンが横に避けた。
それで剣の先には岩があって、剣先がぶつかって食い込んだ……岩に剣が食い込むって、何だよこれ。まさか、マジで名剣とか言うのか?
とにかく引き抜い……
――パキン――
名剣、オレタ。
「うっそおおおおお!」
「ああ、ハイハイ。俺のサーベル使っていいから。これ鉄製だけど。とりあえず、折るなよ?それより折れやすいからさ」
あれ、こいつ、鉄の剣使ってたの?サーベルだからよく斬れるかも知れないけど、ぼくより弱そうな武器を使ってたってのかよ!ウソだろ!?
しかも見回りゴブリンはいつの間にか凍り付いて……表面がダビデとかのような、ローマの彫刻みたいな雰囲気になってる。何なんだよ、真面目にやれよ!
「ほら、一気に寄って来たよお。どうする、ユウタ。アイツら毒も使うから、結構危ないよ?毒って言っても大体はトリカブト系の神経毒だし、濃度薄いけど」
「そんなの聞いてない、知らない!……でも、りゃあああ!」
たくさんのゴブリンが寄ってきて、そこに剣を向けて突きをだして、同時にゴブリンが剣を叩いて、折った。
……なんで?!
「……やっぱり無理いいぃいぃいい!」
背中を向けてぼくは雑木林の中を逃げた。武器折られたし、数が多すぎるし、毒使われたらヤバいじゃん。死ぬじゃんか、絶対!
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何を言ってるのか分からない叫びをあげながら、ユータは巣から離れていく。声が無駄に大きいから、そっちばかりに産廃先輩が向かっていくんだけどね。
見回りも、居るの気づいてて無視してたけど、考えなかったのかね?
「ですよね、知ってた。――アサルトヘイル――」
――ハー、あいつの虚勢は筋金入りだねぇ――
そうだろうね。日本人はカッコつけるためにケンカ売るくせに、暴力反対とか言って予防線張って保身したりとか大好きだし。
居るんだよ、メンチ切るくせに「俺様はケンカなんてしねぇんだよゴッルルアア!」なんて叫んでる、チンピラ。俺が会ったのは50くらいのオッサンとか。まあ、どうでもいいけど。
俺の使った連射系の術式で、攻めてきたゴブリンが氷に抉り削られ、血しぶきを上げる。普通の氷だったらならないような傷だ。勿論、特製だしね。
ドリル状に作った氷塊が高速回転しながら飛んでいく。つまり、普通の氷が当たるのではない。ドリルが突き刺さるのだから。しかも当たった場所に氷を浸食、そして『クラッシュ』……つまり、細胞ごと凍った場所を崩壊させていく。
氷だけなら、粉雪みたいになるだけだが。発熱するドラゴンの皮膚だろうが、浸食した場所は問答無用で壊すんだから、堅さとか関係なしだ。火竜は流石に浸食しにくかったけど。
発射間隔も秒間5発。雪玉より多く、火球より少ない。でも、効果で見れば一番、エグイ。
さて、ユウタを追っていった数匹も狙いますか。
「よし、ユウタ。そのまま走り続けろ」
一気に「跳躍」でユウタの頭上に移動して、ちょっと刻印。新型の1つだ。
「アイススプー――エクステンション、アイスフィールド」
「え、何?!」
「要約すれば拍車をかけた。以上」
拍車というのは馬に乗る時に使う道具、ウエスタンの人たちがブーツにつけている車輪とかだったはず。
つまり、それを模して作った、他人に自分の技の一部を、強制的に使わせるものだ……でも、インフェルノとかは無理だけど。多分あれは、俺以外がやれば、術者も爆散するし。危険ダメ絶対。
適当に空中を跳ねていながら、後ろを確認。
「ほい、ゴブリン掃討終わったよ。ユウタお疲れ」
こいつが一生懸命逃げていて、ゴブリンは大半がこいつを追いかけていた。
ならばそれを利用して、一気に叩ければいい。出来るなら余計な時間や手間を省ければよかったのだけどね。まあ、仕方ない。
追いかけていた奴は勝手にフィールドに入り、そのまま凍り付いた。俺の氷属性のマナが浸食して身体を巡り、芯まで凍っているはずだから、心臓も脳も動かない。
ゆっくり溶かしてやれば蘇生できるかもしれないけど、する必要のある相手じゃないので、
「クラッシュ、華のように散れ。産廃ども」
指を弾いて音を出し、それを合図に氷を砕く。
――あー、あたしの傑作が……――
イフリータさん、出来ればそれはゴブリン相手に使うものにしないでください。
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今目の前で、ダビデとかミロとか観音みたいな形に凍っていたゴブリンが、粉々に砕けていった。
その奥の方にも何匹か、体中を抉られておかしなくらいボロボロになっているゴブリンが倒れている。
「な、何をしたの……?」
「単純に言えば、俺の技にある、氷塊連射の技で穴だらけにしたのがあれ。ただの氷塊じゃなくて、ドリル状だ。
ほら「銃弾がほおをかすめて通った」みたいなシーンとかあるだろ?あれ、ちょっとした擦過傷くらいだけど、この術だと周辺の肉が凍って崩壊、一生そこは抉れたままになるような感じだ。最悪、ほおに穴が開いたままになる。そんなオリジナル術式を使った。
お前に掛けたのは、お前も受けたことのある「氷像」を作れる術式と、それを広げるために、他人を術の軸にする術式。つまり、一時的にお前もチートしてたんだよ」
こいつ、前にチート作れるって言ってたよな?これがチートなのか?でも、今ぼく逃げてただけなのに……
「因みに、俺1人だったら、最初から気づかれる間もなく爆散。ナパームとか、核爆弾のような状態が作れるから」
「どう……やるんだよ」
「俺の体の全部のマナを圧縮して燃焼してまた圧縮。それをぶつける。
ぶつけた瞬間、空間が焼かれて燃焼、その後爆風が飛んでいく。地面にぶつければ上空に力を逃がさず、地上のみにその効果を打ち込める。
その後、イフリータさんが熱を吸って、マナ回復するけど。しないと精霊は体維持できないらしいからさ。
熱量で言えば、初めて撃った時には既に千度越えてたんだったっけ?今は……3500度、了解」
「……わかんないんだけど、どういうこと?」
「対比温度としての予備知識。溶岩は最低でも千度。鉄が溶ける温度は千2百。
大戦時に核爆発を受けたところの地表で、3千とかだっけ?
太陽の表面温度が6千、内部は2万度以上だね。核爆弾爆発中心地は数百万度らしい」
つまり、こいつはすでにちょっとした核爆弾になり始めていたのか?
それは言いすぎでも、馬鹿みたいな熱を出すって……チートとかそういう考えを持っていたのも間違いかも知れない。
よく考えれば、こいつみたいなアブナイ奴になるの、嫌だな。
精霊のボヤキ
――なんで引っこ抜こうとして折れたのかなぁ――
あれだ、ギャグのチートがあるんだ。
――絶対要らない能力……――
そもそも硬い金属って言っても、結局は物質だからねえ。アダマンタイトって名前だけだったのか?
――変な捻り方してたからじゃない?――
剣道ってそんな捻るような動きしなかったような?




