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「怖いものじゃないか。私が何をしたと言うんだ?」
「だからね、君は忘れているかもしれないが、確かに自分の首を吊ったんだよ」
「おかしいね。私には自分のことさえ分からないのか」
「忘れただけさ。あんまり覚えていたくなかったんだろうよ」
「いやぁ、やっぱりその説明は納得できないな。だってここは私の家、私の机だぞ?妻も子供も元気だったようじゃないか。話もしたし」
「それでも、君は死んでいるんだろうね」
「バカヤロウ、食事がまずくなるじゃないか。やめてくれよ」
「君が食事する時に僕を呼び出したのがそもそも悪いんだ」
「そうかい。それならもう要らないよ。台所に放り込んでやる」
「どうぞお勝手に」
私はその箸二本をぐしゃりと握りしめて水の中に浸し込んだ。
油の浮いた水が溜まっている鍋の中。
その箸は、「納得できないことって、案外あるものさ」と囁いている。




