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恨みの正体

 三人は、『キャンバスの中の光源』の前までたどり着く。すると、『捕らわれの炎』はメアリーの手から離れ、『キャンバスの中の光源』の中に入っていく。『捕らわれの炎』は蝋燭の先端に止まると、ゆっくりと羽を動かす。いつの間にか、絵のタイトルも『ロウソクの絵』に変わっている。

「どうしてタイトルが変わっているのかしら?これ、ライターの代わりになりそうね。持っていきましょ。」

 ギャリーは、『ロウソクの絵』を壁から外し、抱える。三人は、さっきの真っ暗な部屋に向かう。

 三人は真っ暗な部屋の前まで来る。ギャリーは扉を開けようとするけれど、『ロウソクの絵』を抱えているせいで、うまく扉を開けることができない。

「ギャリー。その絵、持っててあげる。」

「え?でも、この絵、結構重いし・・・・・・」

「いいから。それじゃ、扉開けられないでしょ。」

 メアリーは絵を受けて取ろうと両手を前に出す。

「そう?じゃあ、お願いしようかしら。」

 ギャリーはメアリーに絵を渡すと、扉を開ける。すると、メアリーが抱えている『蝋燭の絵』から光が漏れ出した。

「見て!絵から明かりが・・・・・・。どういう原理かわかんないけど、足元くらいは見えるかも。気をつけて進みましょ。」

「おー!」

 メアリーが元気な声を上げる。イヴも大きく頷き、それに応える。

「メアリー、持っててくれて、ありがと。」

 ギャリーはそう言うと、メアリーから『ロウソクの絵』を受け取ろうとする。

「いいよ。私が持ってる。」

「けど、その絵、結構重いし・・・・・・」

「いいって言ったら、いいの!」

 メアリーはそう言って、絵を抱えたままギャリーに背中を向ける。

「大丈夫ならいいんだけど・・・・・・。みんな、離れ離れにならないようにね。」

 ギャリーはそう言うとイヴの手をとる。イヴもしっかりとギャリーの手を握ると、三人は部屋の奥に進んでいく。

 部屋の中は机が並んでいて、まるで迷路のようになっていた。三人はお互いを見失わないようにゆっくりと歩いていた。

「あれ、なにかな?」

 しばらく、部屋を探索していると、メアリーが一枚のキャンバスを見つけた。三人が近づくと、そこに紫色で『9』と描かれているのが見えた。

「これ、もしかして、時計の下にあったパネルに入れる数字かしら?ということは、他にも似たようなものがあるかも!探しましょ!」

 ギャリーがそう言って先に進む。すると、ギャリーの肩に何かが触れた。


 パリーン!

「ギャーッ!!」


 乾いた鋭い音とともに、ギャリーの叫び声が部屋に響き渡る。メアリーがギャリーの足元を『ロウソクの絵』で照らすと、そこには粉々になった陶磁器のポッドの破片があった。

「ビックリしたぁ・・・・・・二人とも、大丈夫?」

「ギャリーの声にビックリしたよ・・・・・・」

 メアリーがそう言うと、イヴも頷く。

「そう・・・・・・すごいわね、アンタたち。アタシなんか、口から心臓出るかと思ったわ。・・・・・・いや、喉くらいまで出たわ。さ、気を取り直して行きましょ。」

 ギャリーはそう言うと、イヴの手を取り歩き出す。メアリーも、その後をついていく。

(そういえば、前にも似たようなことがあったなあ)

 イヴは初めてギャリーに会ったことを思い出し、そんなことを思った。

ひとりで不思議な美術館を歩いていて、心が押しつぶされそうになったときにギャリーに出会った。そのとき、すごくうれしかったのを覚えている。ひとりじゃないことが、こんなに心強いなんて、初めて知った。

 イヴは、ギャリーの手をほんの少し強く握る。それをメアリーがじっと見ていたことに、イヴは気がつかなかった。

 

 三人が部屋を探索していると、思った通り、色のついた数字が描かれたキャンバスがいくつもあった。

「えーっと。今まで見つけたのは、紫色の9と、黄色の3と・・・・・・。あと、オレンジで7、だったかしら?」

 ギャリーはイヴに確認する。けれど、イヴもはっきりと覚えてなく、首を傾げる。

「これは、もう一回見てこないと行けないかしら・・・・・・。あー、メモしとけばよかった。」

「紫の9、黄色の3、赤の7、オレンジの8、緑の1、青の2だよ。」

 すると、メアリーがスラスラとキャンバスに描かれていた数字を口にする。

「覚えてるの!?すごいじゃない、メアリー!」

「メアリー、すごい。」

「えへへ。」

 イヴに褒められたメアリーは照れ笑いを浮かべる。すると、『ロウソクの絵』の蝋燭の先端に止まっていた『捕らわれの炎』が絵から飛び出し、部屋の奥に飛んでいった。

「あっ!待ってよ!」

 メアリーは明かりのなくなった絵をその場に置き、慌てて『捕らわれの炎』の後を追いかける。

「メアリー!待って!!」

 ギャリーが慌てて手を伸ばすが、ギャリーの手はメアリーを捕まえることはできなかった。

 メアリーは、明るく光る『捕らわれの炎』のあとを追っていた。『捕らわれの炎』はそんなに速くなく、あっという間に追いついた。

「捕まえた!もう逃がさないぞ。」

 メアリーの手の中で、『捕らわれの炎』は静かに羽を動かし、もう飛び出すことはなかった。

「イヴ、ギャリー。捕まえたよ!」

 メアリーが振り返る。けれど、そこには誰もいなかった。

「・・・・・・みんな、どこに行ったのかな。」

 すると、メアリーの中にモヤモヤとした焦りが生まれてきた。メアリーは二人を探そうと、『捕らわれの炎』を掲げる。すると、壁に一枚の絵がかかっているのが見えた。メアリーは、その絵のタイトルを見る。


『恨みの正体』


 メアリーは、ゆっくりと『捕らわれの炎』を上に持っていく。額縁が見えて、徐々に絵の全体が見えてくる。メアリーは思わず小さな悲鳴を上げる。

 そこに描かれていたのは、真っ赤な人の頭だった。目はなく、黒い眼窩が赤一色の顔にポッカリと空いている。メアリーは恐怖のあまり、その場から動くこともできず、助けを求めるために声を上げることもできなくなっていた。

 すると、歪な形の隙間を通った風が鳴らすような奇妙で不気味な笑い声が、その絵から響いてきた。すると、メアリーは意識を失い、その場に倒れ込んでしまった。


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