コレクション
部屋の中に入ると、道が三方向に続いていた。左には、顔を大きな黒いバツ印で塗りつぶされた子供の絵が飾られていた。その子供は、ボロボロの布切れのようなものを身にまとっていた。ギャリーは、その絵のタイトルを見る。
『失敗作』
「失敗作でも、額縁に入れてタイトルをつけるのね・・・・・・」
「へんなの。――ねえ、あっちに見えるの、何かな?」
メアリーが扉から入って右の通路の先を指差す。壁の額縁から緑の長い胴体が伸びているのが見えた。メアリーがイヴの手を取り、その緑色の胴体に近づく。ギャリーも、その後ろをついていく。
「これ、蛇の身体じゃないかな。」
緑色の胴体に近づいたとき、イヴがそうつぶやいた。確かにこの胴体は、この部屋の外に出ていた蛇の頭とちょうど同じ位置にある。
「ねえ、引っ張ってみようよ。イヴ、手伝って。」
メアリーはそう言うと、蛇の尻尾を掴む。イヴもメアリーと一緒に蛇の尻尾を掴む。
「せーのっ!」
メアリーの掛け声と一緒に、二人は蛇の尻尾を引っ張る。しかし、蛇の胴体は全く動かなかった。何度か引っ張るけれども、やはり動く気配がない。
「動かないね。」
「ギャリーも見てないで手伝ってよ!」
メアリーが振り返り、何もせずに立っていたギャリーに向かって叫ぶ。
「ひっぱても、大丈夫かしら・・・・・・。起きたりしない?」
「いいから、手伝ってってば!」
メアリーに袖を引っ張られたギャリーは、しぶしぶ蛇の胴体を掴む。
「いくよ!せーのっ!」
メアリーの掛け声に合わせ、三人は蛇の胴体を引っ張る。すると、ズルズルと胴体が動き出し、額縁から胴体が出てきた。しかし、ある程度動くと、何かに引っかかったのか、ピクリとも動かなくなった。
「これ以上は、動かないみたい。」
「なーんだ。面白くない。」
メアリーはそう言うと、イヴの手を取り、来た道を戻り始める。ギャリーは、地面にとぐろを巻いている蛇の胴体を見、イヴの手を取っているメアリーの背中を見た。
(あの子が何を考えているのか、さっぱりだわ。)
ギャリーが二人の後を追おうとしたとき、壁に黒の絵の具で何かが書かれているのが目に映った。ギャリーは、その文字を読む。
『絵には 心を 作品には 魂を』
(・・・・・・これ、どういう意味かしら。)
「ギャリー!早くこっちに来てよ!」
メアリーの声が遠くから聞こえてくる。声の感じから、二人の身に危険が及んでいるようではなかったが、ギャリーは急いで声のする方に向かう。
ギャリーが通路を右に曲がると、二人がこちらを見ているのが見えた。
「どうしたの?何かあった?」
「なんか、針みたいなのが飛んでて、先に進めないんだけど・・・・・・」
「針?」
ギャリーは先に進み、通路の角から顔を覗かせる。すると、通路の壁の穴から飛び出し、反対の壁の穴に消えていった。針の大きさはちょうどギャリーの脚ぐらいだった。
「たしかに、これじゃ先に進めないわね・・・・・・」
ギャリーは通路の角から身体を戻す。すると、壁に何か書いてあるのが見えた。
『コレクション』
「これも、ゲルレナの作品なのかしら?」
すると、ギャリーの横を通り過ぎる小さな影があった。ギャリーはその影に気がつき、振り返る。イヴが針の飛んでいる通路を歩き始めていた。
「ちょっと、イヴ!?」
ギャリーが慌ててイヴに走り寄り、イヴの肩を掴む。肩を掴まれたイヴは立ち止まり、振り返る。
「この針、一定の間隔で飛んでいるから、その間に通れば大丈夫だよ。」
「だからって――。・・・・・・分かったわ。アタシが先に行って様子を見てくるから、イヴとメアリーはここで待ってて。」
イヴはじっとギャリーを見つめる。
「大丈夫。通り方が分かったら、簡単よ!」
イヴは頷く。ギャリーは通路の正面に立つ。しばらく、針の飛んでくる様子を見ていると、確かにイヴの言う通り、一定の間隔で飛んできているようだった。
(このくらい、どうってことないわよ。)
ギャリーは大きく深呼吸する。針が飛び出すのを見届けたあと、ギャリーは地面を蹴り、走り出す。




