サボテンの園
部屋の向こう側は、無数のサボテンが並んでいた。このサボテンもゲルテナの作品なのだろうか。サボテンには色とりどりの小さな花が咲いていた。無数のサボテンは地面に並んでいて、まるで迷路のようになっていた。
そのサボテン迷路の前に、看板のようなものがあった。
『サボテンの園』
小さく佇む 無数の植物
踏みつける者は 怒りを買うだろう
「なによ。このサボテン迷路・・・・・・」
「へー。これ、サボテンって言うんだあ。トゲトゲしてて、痛そうだね。」
メアリーがしゃがみ込み、サボテンに触れようとそっと手を伸ばす。イヴは慌ててメアリーの手を押さえる。これは、ただのサボテンではない。無用心に触れると、何が起こるか分からない。
「向こうに物が落ちているけど。なんだか危なっかしいわね。」
地面に並ぶサボテンは、飛び越えるには大きかったが、迷路の向こう側が見えないほどの高さではなかった。ギャリーが目を凝らしてみると、迷路の奥には銀色に光る絵画のピースが見えた。
「あの欠片があるわね・・・・・・。アタシ一人でとってこようか?」
「なんで?みんなで行こうよ。」
「でも、何があるか分からないし・・・・・・。二人とも、ここで待ってて。まかせて!すぐ行って、すぐ戻るから!」
「大丈夫かなあ。」
メアリーがそうつぶやく。イヴも、心配そうにまっすぐギャリーを見つめる。
「大丈夫!アタシ、大人だから。もしなにかあったら、すぐ逃げなさいね?」
「ギャリーこそ、なにかあったらすぐ逃げてよ。ギャリー、怖がりなんだから。」
「・・・・・・アンタ、嫌味言うの上手ね。でも、まあ、ありがとう。」
ギャリーはそう言うと、サボテンの迷路をたどり始めた。ギャリーの身長だと、迷路全体が見渡せるので、サボテンにさえ気をつけていれば、絵画のピースのところまで問題なくたどり着けそうだった。
「ギャリー、遅いなあ。何してるんだろ」
ギャリーの姿が見えなくなって、ほんの十数秒後に、メアリーが文句を口にした。イヴは、そんなメアリーをじっと見る。
「なあに、イヴ。なにか顔についてる?」
イヴの視線に気がついたメアリーは、自分の顔をペタペタと触り始める。
「メアリーも、ギャリーのことが心配なんだ。」
「え?あはは、違うよ。私、待たされるのが嫌なんだよ。イヴも冗談言うんだね!」
メアリーは、笑いながらそう答える。
「メアリーは、ギャリーのこと、好き?」
「うーん、どうなんだろ。よく分かんないや。ギャリー、なんかうるさいところあるしなあ・・・・・・。あ!もちろん、イヴのことが一番大好きだよ!・・・・・・それにしても、遅いなあ。」
メアリーが飛び跳ねて、迷路の向こう側の様子を見ようとする。サボテンの高さは、二人にとっては十分高く、迷路の向こう側を見ることさえままならなかった。
ふと、イヴが辺りを見渡していると、壁に絵画が飾られているのが見えた。イヴは、その絵画に近寄る。赤、青、黄色、緑・・・・・・。様々な色が乱暴に塗りつけられているだけの絵だった。
『色彩の暴力』
「あれ?この絵、動いてない?」
いつの間にか隣に来たメアリーが、そう指摘する。イヴが目を凝らしてみてみると、塗りつけられた絵の具が、額縁の中で、ゆっくりとうねっているようだった。
イヴは、急に不安になり、慌ててメアリーの手を取り、『サボテンの園』に飛び込んだ。すると、それを合図にしたかのように、『色彩の暴力』がうねりながら、額縁の中から飛び出してきた。
イヴはメアリーの手を引き、走り出した。




