色彩の暴力
「あったわ。これね。」
部屋の角までたどり着いたギャリーは、銀色の絵画のピースを拾う。すると、鋭い音と共に絵画のピースは消えた。
「さてと。あとは帰るだけね。・・・・・・ところで、これ、何かしら。」
ギャリーが地面に視線を下ろす。そこには、黒いバラが咲いていた。
「このバラ、あの部屋にもあったわよね・・・・・・。何なのかしら?」
ギャリーは、光るチョウチョ―『捕らわれの炎』を見つけた部屋のことを思い出していた。あの部屋にも、地面に咲く黒いバラがあった。
「ギャリー、早くしてよ!」
メアリーの声が、ギャリーの耳に飛んできた。慌てて振り返ると、イヴとメアリーが、『サボテンの園』をたどって、こちらに向かってきていた。その後ろには、なにやら色とりどりの奇妙な物体が、ゆっくりと二人の後を追っていた。
「大変!早くしないと!」
ギャリーが慌てて道を引き返そうとする。すると、サボテンが動き出し、道を塞いでしまった。
「え!?これじゃあ、帰れないじゃない!?」
ギャリーが立ち往生している間にも、イヴたちの『色彩の暴力』との距離は縮まっていた。
『サボテンの園』は、先が見えない二人にとって、まさに迷路だった。途中、何度も行き止まりにぶつかり、慌てて道を引き返した。走っている間、ずっとメアリーは、ギャリーへの文句を叫んでいた。
『色彩の暴力』の動きはそれほど速くなかったのだが、道に迷いながら進んでいる二人との距離は徐々に縮まっていった。
「どうすればいいの・・・・・・」
もう、危険を承知でサボテンをかき分けていくしかない。ギャリーがそう考え始めたとき、黒いバラが目に映った。確か、アタシはあのとき、このバラを潰しちゃって、そしたら――
「・・・・・・やってみる価値はあるわね。」
もしかしたら、もっと恐ろしいことが起きるかもしれない。そう思ったものの、迷っている時間はなかった。二人はもう、行き止まりに追い詰められていた。ギャリーは、黒いバラを思い切って踏み潰す。
すると、『色彩の暴力』の形が崩れ、その場でゆっくりと地面に消えていった。突然の出来事に、イヴとメアリーは目を丸くする。サボテンも全て枯れ始め、跡形もなく消えてしまった。広い空間に残ったのは、イヴたち三人だけだった。
「二人とも、大丈夫!?」
ギャリーが慌ててイヴたちのところに駆け寄ってくる。メアリーが呆然とした顔でギャリーを見上げたかと思った次の瞬間、眉間にしわを寄せ、ギャリーを睨みつけた。
「ギャリーのバカ!だから三人で行こうって言ったんだよ!ギャリーの役立たず!」
メアリーが次々とギャリーに罵声を浴びせる。ギャリーは、ただただうなだれるしかなかった。
「ギャリー、あれ。」
ギャリーは顔を上げ、イヴが指差したところを見る。そこには、また絵画のピースがあった。
「あら?こんなところにあったかしら?」
「ギャリーのことだから、見逃してたんじゃないの?」
イヴが絵画のピースに近づき、手を伸ばす。すると、また鋭い音を鳴らして、絵画のピースは消えてしまった。
「これで、三つね。あと、いくつ必要なのかしら・・・・・・」
「こんなんだと、先が思いやられるなあ。次の部屋に行こうよ。」
メアリーはそう言うと、一人で部屋を出て行ってしまった。ギャリーは、大きな溜息をつく。
「たしかに、メアリーの言う通りだわ。あれだけ、三人で行動しましょうって言っていたのに。ごめんね、イヴ。怖い思いさせちゃったわね。」
すると、イヴは首を横に振った。
「さっきの、ギャリーが助けてくれたんでしょ。ありがとう。」
イヴは、そっとギャリーの手を取る。
「行こ、ギャリー。」
「ありがとう、イヴ。」
ギャリーはイヴに連れられ、部屋をあとにする。




