02話 少年、ダンジョンへ入る(準備編)
(´・ω・`)今回の章はダンジョン編です。
ただし予定は未定。
案内係に案内された勇樹たちは、商人冒険者パーティ用の大部屋に案内された。
「こちらが、ご希望のお部屋となります」
「おお、ここが! ……あの、ここって明らかに3人だけで泊まる部屋じゃないですよね」
通されて入った部屋は、談話室のような大部屋に個室が4つほど付き、簡易的な調理場まで備え付けてあった。
個室は普通なら2人、無理をすれば3人が寝泊まりできるほどのスペースがあり、どこをどう使っても勇樹たちでは持て余すほどの広さがある。
「最近、ダンジョンに挑戦する冒険者の方が急に増えまして、3人以上がお泊りになれる部屋はここしか残っていないんですよ」
「オレは泊まれるならどんな部屋でも文句ないぜ」
「まあ、広い分には別にいいんだけどさぁ」
予想以上の豪華な部屋に若干落ち着かない勇樹だったが、ルシアは特に気にした様子はなく、フィーアは1階を横切った時から気分が悪そうにしているので部屋を気にする余裕すらなかった。
そもそも、狭い一人部屋を3人で使うよりスペースが余るだけならば、勇樹も使い道は幾らでもあるので、すぐに文句をひっこめる。
暫く何かを待つようにジッと入口で待っていた案内係に心ばかりのチップを渡し、部屋割りを決める段になってフィーアから手が上がった。
2人部屋を一人で使うのは落ち着かないという事で、1部屋をフィーアとルシアで使う事にして、1部屋を勇樹の寝泊り用に、残りの2部屋は荷物置き場兼勇樹の内職場として使う事となった。
荷物を置いた勇樹たちは、早速この町の目玉でもあるダンジョンに潜るべく冒険者協会へ向かう事にした。
但し、フィーアはまだ調子が戻らず冒険者にも登録していないので、宿に残して荷下ろしの続きを任せるついでに留守番してもらう事になった。
日も傾き始めて賑わい始めた道端の屋台の前を通り過ぎ、この世界に来てすっかり見慣れた協会の建物を見つけて中へと入る。
中へ入った瞬間、勇樹の目に飛び込んできたのはあらゆる意味で初めて見る光景だった。
「うわぁ……何というか、これは酷い」
「何立ち止まってんだ? さっさと入るぞ」
「あ、うん」
勇樹たちが足を踏み入れた瞬間、幾つかの視線が勇樹たちの方を向いた。
但しそれは他の冒険者協会でのような力を測るような視線ではなく、肉食獣のようなギラついた視線が2人に集まる。
どことなく面倒臭い物を感じ取りながらも、ルシアの後を追い掛けた勇樹の前に、3人の男たちが一人立ちはだかった。
「やあ、君は見ない顔だね? もしかして今日が初めてかい? もしよければ、俺達が色々と教えてあげよう」
「あ、結構です。そう言うのは受け付けの方で聞くんで」
勇樹が構わず通り過ぎようとすると別の男が前を塞ぐように立つ。
「いやいや、受け付けは聞いた事には答えてくれるけど、冒険者の心構えみたいな物は教えてくれないんだよ。そして、それを教えられるのは同じ冒険者からだけなのさ」
「特に初心者が一人でやるのは危ない。始めに仲間を見つけておくと色々便利だぞ?」
「結構です。というか……」
勇樹はそこで言葉を切ると、男たちの頭から足元までを見回して溜息を吐いた。
「皆さんは本当に冒険者なんですか? 見た所防具は着けていないし武器も持たずに刃毀れしたナイフが一本だけ、まだ強盗だって言われた方が信用できますよ」
勇樹の言葉に、男たちはまるでバカにする様に肩を竦めて笑い出した。
すると一人の男が勇樹の肩に手を回してガッチリと掴むと、ニヤニヤと笑いながら子供に言い聞かせるように話し出す。
「まあ、他の所の冒険者はそうだろうけど、俺達は“迷宮都市”の冒険者なんだよ。迷宮の中は野外での仕事とは一味も二味も違ってね。俺達みたいな軽装で行く奴もいるのさ」
「それに防具を着けてないワケじゃない。こうして服に木の皮を縫い合わせた防具を着けているじゃないか」
「ダンジョン内は狭いから、ここの冒険者は長い柄の武器は持たず、防具もすぐに手に入れ易い材質で作るのが当たり前なんだよ」
「当たり前、ねぇ」
勇樹は何気なく男たちの腰からナイフを引き抜いて手に取った。
一方、男たちは油断していたとはいえ極自然にナイフを奪い取られ、一瞬何が起きたのか理解できずに固まった。
男たちが沈黙している間に、勇樹は刃がボロボロになっているナイフ3本を見て、一本の刃先に指を掛けるとまるで薄氷でも割る様な音と共に、手の中のナイフがポキンと折れた。
「うわ、質も悪っ。こんなの武器にも剥ぎ取りにも使えないでしょ」
「お、おい! なんて事をしてくれたんだ!」
勇樹の言葉にいち早く気が付いた男の一人が、勇樹の手の中の折れたナイフを指差して怒鳴り付ける。
「それは俺達の大事な商売道具だぞ! それをこんな風にしちまってどう落とし前をつけてくれるんだ!」
「いや、こんなナイフじゃ仕事も何もないでしょ。刃は錆び切ってボロボロだし、質も悪いからこんな事も出来ちゃうよ」
勇樹はそう言って残り2本の刀身部分を掴むと、紙細工の如く握り潰して柄がカランと床に落ちる。
同時に3人の視線も床へと落ちた。
そして勇樹は徐に両手を開き、手の中でガラスのように割れているナイフだった金属片を床へと零しながら、3人に聞こえる様にハッキリとした口調で告げる。
「とりあえず、真面な装備も整えられない方を仲間にする予定はありませんし、連れを待たせているので失礼しますね」
そう言って勇樹はナイフだった物を捨てて、3人の脇を通り過ぎて行く。
後に残されたのは呆然としている男3人とナイフだった物だけだった。
変な3人組に絡まれた勇樹は、見失ってしまったルシアの姿を探して人集りを掻き分けながら受け付けカウンターへ向かうと、人の間に見慣れた銀髪を見つけ慌てて駆け寄る。
勇樹が近づくと、気配を感じたのかルシアが振り向いた。
「おう、どこ行ってたんだ? お前を待ってたんだぞ」
「あははー、ちょっとゴミの処分をね」
「それじゃあ、連れも来たみてぇだしダンジョンについて説明させて貰うぞ」
「あ、はい」
勇樹が席に着いたと同時に、冒険者のような鋭い目付きの職員が話し始めた。
「最初にダンジョン内は地上の常識が通じると思うな。迷宮内ではどこからでもモンスターが湧くから一度通った所だからと油断していると、帰り道で集団と遭遇したり、逃げた先で待ち構えられて全滅なんて事もあり得るからな」
「質問です! モンスターが湧く瞬間とかってわかったりしてるんですか?」
「ああ、見た奴の話によると道の真ん中に突然黒いモヤみたいのが現れて、中からモンスターが出て来たらしい。ただ予兆もなく突然現れる様だからその辺にも注意しろよ?」
職員はそう言って勇樹たちの顔を見回すと、カウンターの下から少しくすんだ色の小さい石を取り出してカウンターの上に置いた。
「さて説明の続きだが、外との違いは何と言ってもダンジョン内のモンスターは倒すとモンスター自体が消える。武器や防具、体の一部なんかはたまに残る場合はあるが、殆どはコレを残して全身が消える」
「あ~、コレって魔石ですよね? 随分と質が……」
「そう、コイツは低層階のモンスターから取れた魔石なんだが、外のよりも質が良いだろ? 低層階にいる冒険者にはまずコイツを集めて貰う所から始まる。コレがこの町がここにある理由でもある」
魔石の用途は多岐に渡る。
代表的な物としてはマジックアイテムを作る為の材料として、他にも魔法薬を煎じたり生活の道具にも魔石が使用されている物もあるので、魔石には一定の需要がある。
そう言う事情もあって子供のゴッコ遊びの様な格好でも冒険者として成り立ち、ダンジョンの上に町が出来る理由でもあった。
「まあ、大体は9階ぐらいまでで足踏みしてるけどな。ダンジョンには10階ごとにその階層に出て来るモンスターより1ランク上のモンスターが1体だけ陣取っている大部屋があって、倒すのは中々骨だがソイツを倒すと、転送の魔法陣がある部屋への扉が開いて、そこから地上と自由に行き来できるようになっているんだ」
「じゃあ、それを使えば面倒な階はすっ飛ばして直接行けるんですね」
「悪いがそう簡単な話はねぇよ。今から渡すが、その階まで行ってダンジョン専用の冒険者証を魔法陣に登録しないと、地上からその階へは飛べない仕掛けになっている。まあ、実力も伴ってねぇ奴がいきなり最下層へ行っても死ぬのがオチだけどな」
「へぇ、じゃあもうここのダンジョンは最下層まで行った人がいるんですか?」
「はっはっはっ、最下層まで行った奴が居たらこのダンジョンはとっくに崩壊してる。えーっと、今の所は43階が最高記録だな……お前たちには縁遠い話だが。あと幾つか注意事項だが、ダンジョン内のスライムは退治するな。アイツらはダンジョンのゴミを綺麗にしているから、スライムを倒した魔石なんか持ち込んで来たら厳罰だから覚えとけ。それと各階には一ヶ所だけ休憩所が……」
この後も、勇樹たちはダンジョン内での注意事項を聞き、手続きを行ってダンジョン用の冒険者証を手に入れたのであった。
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