17話 少年、盗賊と初遭遇する
(´・ω・`)前の話を後半部分を変えて書き直しました。
前話も合わせてご覧ください。
国境となる大きな丘を越え、下まで降り切った所で周囲の雰囲気が変わった事に勇樹が首を傾げた。
「なんだろう。この今まで張り詰めていた物が緩んだような、今まで重たい水の中に居て急に浮上して軽くなったようなこの感覚」
「ははは、そりゃそうだろ」
勇樹が周囲の雰囲気に戸惑っていると、脇の小窓からルシアが顔を出した。
「オレも実際にここを通り過ぎた時には驚いたぜ。国境を越えただけだってのにモンスターのランクが一つ二つ上がるんだからよ。こっちじゃ出てくるのは軒並みEランク程度でDランクだってもっと深い所に行かなきゃ遭遇しないからな」
「なんていうか……滅茶苦茶温いっすね」
「いや、寧ろDランクがホイホイ出てきて、下手するとCランクのモンスターまでそんな深くない所で遭遇するエルクレアの方がおかしいんだよ。昨日のホーンイーグルなんざ他の国じゃあ森の奥まで行かないと会わないな」
「え、アレって割と見るレベルじゃないの?」
「そんなワケあるか。アレだってDランクだぞ。あんな街道沿いに出て来たら余所なら大騒ぎだ」
ルシアにおかしい物を見るような目で見られ、改めて魔王領の影響を受けた土地の厄介さを実感したと共に、なんて所に召喚してくれたんだというエルクレア王家への苛立ちが湧く。
勇樹が内心で抜け出して正解だったと憂さを晴らしていると、ルシアが何かに気付いてニヤリと笑った。
「なあ、確かに他の国はエルクレアのようなモンスターの脅威は少ない。だけど、その代りに余計な物も湧くんだぜ?」
「へ? それってどういう……」
勇樹が疑問を口にしようとした時、アールたちが嘶いた。
そして、フラントリーに入ってエルクレアでは見かけなかったものと遭遇する。
「動くな! 荷物と女を置いていけば命だけは勘弁してやる!」
「うわっ、リアル盗賊ktkr!」
街道を陣取るように現れた男たちは、勇樹たちが近づくと武器を抜いて叫んだ。
それに対して勇樹は今まで遭遇した事が無かった盗賊に、目を丸くして驚く。
エルクレアでは生息するモンスターのレベルが高い所為で、人里を離れて森に住むなどCランク以上の冒険者でも嫌がる案件であり、それが出来るのなら盗賊なんかやらずに冒険者で充分に食べて行けるので、エルクレアで盗賊業を行う者はいなかった。
創作の中でしか見た事が無かった盗賊に目を輝かせた勇樹であったが、ある事に気が付いて顔を顰める。
「でも、なんていうかアレだね……やっぱり盗賊って臭いんだね。悪臭がここまで……」
初遭遇の盗賊に勇樹はしみじみと呟いた。
それに鼻を押さえて同じく顰め面になっているルシアが答える。
「そりゃ、コイツらは食って飲んでヤれれば、それで満足だからな。体臭なんか気にしねぇよ」
「うわ、なんか聞いてるだけで身体が痒くなりそう」
「てめぇら! 無視してんじゃねぇよ!」
武器を構えて怒声を上げる盗賊に、勇樹は面倒臭くなってアールたちに合図を送ると、勇樹は棍棒を持って御者台を降りた。
勇樹が下りたのを見て、頭らしき男がニヤリと笑みを浮かべる。
「ハッ、観念した様だ……」
勇樹の小柄な体型と初心者染みた装備を見て、完全に油断しきっていた頭は一歩踏み出した瞬間に吹き飛ばされた。
頭が足を踏みだした瞬間、勇樹が一気に距離を詰めた棍棒で突いたのだが、周囲は何が起こったのか理解できずに固まってしまう。
その僅かな隙を勇樹は逃さなかった。
棍棒を軽々振るう勇樹は、完全に動きの止まった盗賊たちを殴り飛ばして意識を刈り取り、あっという間にその場を制圧した。
「おーい、こっちも終わったぞ」
倒した盗賊の腕を縛っていると、馬車の後ろからルシアの声が聞こえてきた。
後ろに回って覗いてみると、そこにはルシアの足元で盗賊を3人ほどが地面に転がっているのが目に入る。
「前で派手に暴れて後ろから奇襲するのは、コイツらの常套手段だからな。分かり易い奴らだ」
「助かったよ。それで……捕まえたは良いけど、コレどうしようか?」
「近くの町へ持って行けば、そこそこの金にはなるぜ?」
「……この臭いを我慢する労力と割に合いそうもないから、ここへ置いて行こう。縛って転がして置けばいいでしょ」
「お、おう、中々エグイ事するな」
勇樹は気絶している盗賊たちを一まとめで縛ると、街道から外れた所に転がして先を進んだ。
暫くして、モンスターの鳴き声と悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、勇樹は特に気にも留めなかった。
フラントリーに入って初めての盗賊の襲撃を適当に処理した勇樹たちは、迷宮都市に向けて馬車を進めていたが、ここで小さな問題が発生した。
「なんか、盗賊が鬱陶しくない? 下手なモンスターよりも湧くんですけど」
野営地で襲い掛かってきた盗賊を縛りながら、勇樹はうんざりした声色でそう言った。
モンスターならば勇樹が調合した薬品を使えば、完全ではないが近寄らせない効果で野営時にモンスターからの奇襲を減らす事ができた。
ただし、これはあくまで臭いで動物やモンスターを近寄らせないだけなので、人間である盗賊には全く持って意味が無かったのである。
勇樹の呟きにルシアは顔を上げると、さもありなんと言わんばかりに苦笑いした。
「あ~、それはユーキとこの馬車を見て、どう見ても初心者の冒険者が無理して出てきたようにしか見えないからじゃねぇか? 盗賊なんてやってる奴らにはカモに見えるんだろ」
「ぐぬぬ、目立たない様にする偽装がこんな事になるとは」
「いやいや、そうでなくともこの馬車は異常すぎるって。重量を半分以上軽減してるわ、ある程度なら自走できるわ、おまけに空間拡張? そんな馬車、御伽話でも聞いた事ねぇよ」
「自信作だからね!」
勇樹は胸を張ってそう言い切る。
しかし、実はまだまだ取り付けたい機能は沢山あり、変形機能も付けたかったという事は胸の内に秘めていた。
アリサが聞けば頭を抱えそうな事を考えつつ、何度目かになる倒した盗賊を道の脇に退かして馬車を進ませる。
暫く馬車を転がして、そろそろ昼食に入ろうかと考え始めた頃、遠くの方に巨大な壁が見えてきた。
何も無い草原に突如現れた城壁は、周囲の牧羊的な光景とは正反対な堅牢な作りで見る者に違和感すら覚えさせる。
近づくにつれて聳え立つ外壁の高さに、勇樹は思わず声を上げた。
「あ、もしかしてアレって……」
「お~お~、見えて来たな」
顔を出したルシアがニヤリと笑って告げる。
「あそこが目的地、迷宮都市アルハブラスだ」
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
(´・ω・`)ここで5章は終了させていただきます。
次章はストックが溜まり次第、投稿するつもりなので開始日は未定です。




