09話 少年、奴隷と町をぶらつく
(´・ω・`)だいぶ遅れてしました……
ヒロインとの話が書きづらいってどういう事なの……
勇樹たちが町へ繰り出した頃には、通りは仕事を終えた冒険者や商人などで賑わい、様々な屋台や露店が並んでいた。
フィーアは勇樹に手を引かれながら、興味深そうにキョロキョロと見回している。
「じゃあ、まずは腹ごしらえからしようか。フィーアは何か食べたい物はある?」
「何かと言われても……こうも色々あると迷っちゃいます」
「なら適当に決めてこうか。まずはアソコだ!」
勇樹は軽く見回して、目に付いた屋台へとフィーアを連れて突撃していった。
そこで串焼きを2本買い、食べ歩きながら次の屋台を探す。
「次はパンか汁物か、また串焼きにするか……フィーアはどこがいい?」
「それなら飲物を……」
この旅の間もどことなく余所余所しかった2人だったが、食べ歩いている内に自然と距離が縮まり、普通の会話が詰まらずに出来るほどには進展していた。
お腹も膨れ、適当に店を冷かしていると金属細工を並べている露店の店主に声を掛けられた。
「そこの美しいお嬢さん。その綺麗な髪を飾るアクセサリーには興味ありませんかな?」
「お嬢さん……? わたしの事ですか?」
「勿論ですよ。さぁさ、色々あるので見て行ってくださいな」
初めて声を掛けられた事もあって、フィーアは思わず露店の前で足を止めた。
脇に居た勇樹も自信ありげな店主の言葉に、興味を引いて覗いた……が、すぐに失せた。
「どうです? 高級店にも負けない物をお出ししておりますよ」
「そ、そうですね」
ニコニコと商品を見せる店主に対して、フィーアは愛想笑いで返す。
フィーアは奴隷市場に長く居た中で様々な教育を受け、読み書きや計算は勿論、貴族に買われても良いように美術品の鑑定スキルも持っていた。
一目で見ただけでフィーアは露店に並べられている品が、安物であると見破ってしまったのである。
「今なら、どれでも銀貨3枚でお売りいたしますよ」
「ぎ、銀貨3枚ですか?」
高すぎる――という言葉が喉まで出かかるフィーア。
どうすれば角も立たずに断れるかと笑顔の裏で考えていたが、隣にいる彼女の主はそんな事には無邪気に無頓着だった。
「えー、おじさん。これで銀貨3枚は高すぎるよ。台座部分はバリが多くて接着部が汚い。仕上げが雑で表面はザラついてるし……この石ってその辺で拾ったのを磨いたんじゃない? これだと銅貨2枚でもお釣りがくるよ」
「な!?」
「せめて研磨する石を選んで土台もデザイン重視なら、銀貨1枚くらいにはしても良いと思うけど、ここで売るんだったら半値でも十分だよ」
「ぐぐっ、商売の邪魔すんならあっち行きな! シッシッ!」
図星を突かれた店主は、顔を真っ赤にして怒鳴り上げて追い払い、勇樹たちは逃げるようにその場から離れた。
その後も色々な露店を見て回ったが、いずれもそれなりの物ばかりだったので買わずに冷やかすのに留めた。
のんびり2時間ほど歩いて街の反対側まで来た2人は、町の郊外に見世物小屋を発見する。
中々の客入りを見た勇樹は、フィーアの方を振り向いて見世物小屋のテントを指差した。
「今度はあそこに入って見よう。なんかやってるみたいだよ」
「そこの看板によればモンスターを使ったショーみたいですよ?」
「サーカスみたいな物かな。どっちにしろ見た事ないから入ろう」
受け付けで2人分の入場料を払って、テントの中へ入った。
テントの中は思いの外広く、半円状の広場を囲うように階段型の観客席が設置されていて、既にショーが始まっていたので、2人は適当な所に座ってショーを見始めた。
「さーさー、お次はこの凶悪なモンスター、グリードグリズリーが大玉に乗って吊るされた餌を取ってみせます! 上手く行ったら拍手喝采!」
派手な格好をした男がグリードグリズリーの足元を軟便で叩くと、脇にあった大玉を吊るされた餌の下まで転がして、大玉に乗って二本足で立ち上がった。
大型のモンスターが立ち上がる迫力に、周囲の観客からも声が上がる。
「わぁ、ユーキ様凄いですよ! あんなに大きなモンスターが器用に大玉の上に乗っていますよ!」
「うーん……」
グリードグリズリーが器用に餌を取っている姿に興奮気味なフィーアに対して、勇樹は微妙な顔をしていた。
「あのグリードグリズリー、5mもないから多分子供なんじゃないかな? それにグリードグリズリーは好物の蜜を捕る為に、高い木の上にある蜂の巣とかを狙ったりもするから、不安定な足場も結構平気なんだよね」
「そうなんですか?」
「正直、森に入ってるとこれくらいは珍しくない……あ、今度はグレイファングだ。人に飼われてるだけあって毛づやが良いなぁ」
司会の男が鞭を叩くと、仕切りの奥からグレイファング数頭が列を成して入ってくる。
グレイファングたちは男を中心に規則正しい円を描き、男が合図すると一斉にその場で座った。
「さて、お次はグレイファングによる曲芸です!」
再び合図を送ると一斉に横並びになり、右から隣のグレイファングを馬跳びのように飛び越え始める。
時には空中で捻りを加えたり、二頭越えしてみたりするたびに、観客からは歓声が上がったが、そこでも勇樹は冷静な目で見ていた。
「アレ、不味いね。若頭がいる」
「わかがしら? それは何ですか?」
「簡単に言えば次のリーダーを狙ってる若いオスの事だよ。今の所は司会の人がリーダーっぽいけど、さっきからグレイファングたちが司会の人を見てないんだよね。だから多分、何かきっかけがあれば……」
勇樹がそう言い切る前に、1頭のグレイファングが足を滑らせて着地するはずだった台から滑り落ちてしまった。
グレイファングの悲鳴と台の倒れる音が、それまで沸いていた空気から熱を引かせてしまう。
凍りついた観客達を見た司会は顔を真っ赤にして、失敗したグレイファングに駆け寄った。
「テメェ、つまんねぇ失敗なんかしやがって! このッ!」
「あっ」
――きゃいん!?
勇樹の小さな呟きなど聞こえる筈も無く、男はグレイファングの腹を蹴り上げた。
その瞬間、そこにいたグレイファング達の目付きが変わる。
「あ~あ、やっちゃった」
「あの、なんか様子がおかしいんですけどっ」
蹴られた仲間を庇うように、グレイファング達は唸り声を上げながら男を囲んで行く。
そこで初めて、観客も様子がおかしい事に気が付きざわつき始めた。
「あ、あの。アレって大丈夫なんですかっ?」
「うん? 大丈夫だよ。アレくらいなら僕でも簡単に制圧できるし、多分あの男がパックリやられれば下剋上が済んで大人しくなるんじゃないかな」
「パックリやっちゃダメですよ!?」
「えー、でも助けるの面倒臭い……」
「ユーキ様、お願いします!」
フィーアに懇願されて、仕方なく勇樹は重い腰を上げた。
ポーチから棍棒を取り出すと一跳びで広場まで駆け、男のすぐ脇に降り立った。
突然現れた勇樹に、男はギョッと驚く。
「な、何だお前は!」
「まあ、善意の第3者って事で気にしないで。とりあえず、スー……」
勇樹は息を深く吸い込むと――大きく咆えた。
空気を震わせるほどの咆哮がテント内に響き渡り、観客は思わず耳を塞ぎ、グレイファングも驚き仰向けにひっくり返る。
「ふぅ、これって結構力技だから疲れるんだよね……全部ぶっ飛ばした方が早かったかも」
「あ、が……がが」
「ああ、気にしないで頼まれて助けただけだから。じゃ!」
至近距離で無防備に勇樹の咆哮を受けてしまった所為で、耳に大きなダメージを受けて動けなくなっている男を放置して、勇樹はフィーアの元へ戻った。
そして、死屍累々になっているテントから逃げるように、2人はその場を立ち去った。
2人が宿へと帰る道中の通りでは、日も暮れ始めている事もあって仕事終わりの男たちが酒場で騒いでいた。
依頼を終えてそのまま来たのか、防具をつけたまま騒いでいる冒険者もいて、明らかに治安が悪くなっている。
勇樹たちは絡まれないように道の端を歩きながら、宿へ向かっていると2人の前を若い冒険者3人組が立ち塞がった。
3人は明らかに酒気を帯び、顔を真っ赤にして酔っぱらっている。
「よぅよぅ、彼女。奢ってやるから俺たちと飲まない?」
「そんなヒョロイ坊ちゃんの相手より、俺たちと楽しく遊ぼうぜぇ~」
「大丈夫、酔っぱらっちゃったらオレたちが宿まで、ちゃぁんと送ってあげるからよぉ」
下卑た笑みを浮かべる3人の全身を舐め回すような視線に、フィーアは咄嗟に勇樹の陰に隠れる。
最初は何が起こったのか把握できなかった勇樹も、フィーアの反応と3人の顔を見て漸く自分たちが絡まれている事に気付き、目を丸くして思わず感嘆の声を漏らした。
「うわぁ、こんなテンプレな絡まれ方されるなんて思いもしなかった。ある意味ちょっと感動」
「あの、ユーキ様。そのような事を言っている場合では……」
「おいおい、無視してんじゃねぇよ。俺たちと一緒に行こうぜ。な!」
「いや、放してください!」
コソコソと話していた勇樹たちに焦れた酔っ払い達が、フィーアの腕を掴んで強引に引き寄せようとする。
フィーアも咄嗟に振り解こうとするが、冒険者の腕は簡単には振り解けない。
流石に勇樹もその行為を見咎め、フィーアを掴んでいる冒険者の手首を掴んだ。
「これこれ若人よ。今なら酔った勢いという事で済ませられるから、正気に戻ったらベッドの上でバタバタしそうな事はよしなさい」
「あぁ? 何言ってんだよ。何様のつもりだぁ? つうか手を放せ……ちょ、ビクとも動かねぇ!」
「調子乗ってんじゃねェぞボンクラが!」
酒気を帯びて短気を起こした1人が、躊躇なく勇樹の顔面に拳を叩き付ける。
『ガチン』と金属がぶつかる様な音が、屋台の前に響いた。
「痛ってぇ! 何だコイツ、滅茶苦茶堅ぇ!」
「コイツッ、いい加減放せよ! 痛っ、痛たたたた!? 手が、手が潰れぇ!!」
「もう我慢できねぇ……ぶっ殺してやる!」
勇樹が軽く手に力を篭めただけで、暴れもがく仲間を見た冒険者たちは武器に手を掛けた。
冒険者たちの血走った目に、物騒な空気を感じ取った勇樹は掴んでいた手を放し、フィーアを自分の後ろへと隠す。
解放された冒険者も仲間と合流して、同じように武器を取り出して勇樹に向けた。
「NPCの癖に勇者に舐めた真似しやがって……こりゃあ、有り金全部と女を置いて土下座されても許してやれねぇな!」
「手足の5、6本は覚悟しやがれ!」
「いや、人間には手足は4本しか付いてないよ。というか“勇者”?」
気になる単語に興味を引きつつ、勇樹は武器を抜いた3人を相手にする為に構えを取った。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




