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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
5章 少年、懐かれる

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08話 少年、隣町に着く

(´・ω・`)本日の投稿は、前回分を加筆・分割したものになります。

 初日の夜にモンスターの襲撃に遭いながらも、その後は順調に進み。

 4日ほど掛けて、勇樹たちは隣町のルベルに到着した。


 ルベルに着いたのは昼を少し過ぎた頃だったが、王都の玄関口でもあるルベルは王都と遜色がない程に賑わっていた。

 勇樹たちは冒険者カードと奴隷紋を門番に見せ、入市税を払って門を潜る。


「そういえば、ユーキ様は冒険者でしたよね? たしか、冒険者の方は入市税が免除になるのでは?」


「それは登録した街の場合だね。他の街でも免除されるのはCランク以上なんだよ」


「じゃあ、Cランクの方は色々な町へ行き放題なんですね」


 羨ましそうな顔をするフィーアに対して、勇樹は顔を顰めた。

 勇樹の反応にフィーアは首を傾げる。


「どうかなさいましたか?」


「いや、Cランク以上は確かに入市税が免除されるんだけどね。それと引き換えに、逐一入出を記録されてるんだよ」


「え、そうなんですか?」


「そ、何せ冒険者(ならずもの)でもCにもなれば立派な戦力だから、町や協会としても確保しておきたいみたいだよ」


 特にノームの技術を受け継いだ勇樹にとっては、低ランク冒険者の制限よりも上位に上がって行動を監視される方が厄介だった。

 なので勇樹は、例え下に見られようともFランクのままでいた。


「さぁて、今夜の宿はどこにしようかな。これだけ人が多いとどこも埋まってるかなぁ」


「そこの御者さん! 宿をお探しですか!?」


 適当に馬車を転がしながら進んでいると、十代前半くらいの少女が声を掛けてきた。

 突然声を掛けられた事に驚きつつ、馬車を止めて少女の方を向きなおす。


「えーっと、男女2人と馬が2頭なんだけど大丈夫かな?」


「はい! 朝に商隊の団体さまが出て行ったのでお部屋はありますよ!」


「じゃあ、君の所でお願いしようかな」


「ありがとうございます! ウチはこっちですよ!」


 勇樹が頷くと、少女は元気良く手を上げながら駆け出した。

 それを見たアールとアルスは、勇樹に指示される前に少女の歩調に合わせてゆっくりと歩き出していた。



 少女の言っていた宿は入口のすぐ近くにあったので、数分も掛からずに到着する。

 先導していた少女は建物の中へは入らずに、建物の脇にある厩舎へ入って行った。


「にーちゃん! お客さん連れて来たよ!」


「それはご苦労だったな。レリ」


 少女が厩舎の奥に向かって声を掛けると、中から少女の兄らしき青年が出てきた。

 青年はレリと呼んだ少女の頭を撫でると、勇樹の方を向いて人の良さそうな笑顔を浮かべた。


「ようこそ、『熊の巣穴亭』へ。さぁ、馬車はこちらで止めておきますので、お客様は中へどうぞ」


「どうも。フィーア、中の荷物を持ってきて~」


「あ、ハイ」


 覗き窓をコンコンと軽くノックすると、中からフィーアが返事をして馬車の戸が開く。

 荷物を手に出てきたフィーアを見て、レリが目を丸くして驚いた。


「お姉さん、すっごく綺麗! もしかして貴族様なの?」


「え? いえ、わたしはただの奴隷で……」


 フィーアを見たレリは興奮気味になって話し掛けていた。

 そんなレリの反応に困惑するフィーアを置いて、馬車が奥に停まったのを見届けた勇樹は宿屋へと入った。

 中に入ると一階は食堂になっていて、商人とその護衛らしき男たち数人が食事をしていて、受付には誰もいなかった。

 入口で立ち尽くしていると、給仕をしていた女将が勇樹に気づいて声を掛けた。


「ちょっとそこの坊や。ウチは泊り客しか食事は出さないから、飯が食いたきゃ他所へ行きな!」


「えーっと、僕は……」


「待ってよ母さん。この人はウチのお客さんだよ」


 勇樹が返答に言い淀んでいるとレリの兄がやって来て、女将が勇樹を追い出そうとしているのを見て慌てて止めに入った。

 それを聞いた女将は険しい表情を一変させる。


「何だ、そうだったのかい。それを早く言いなよ!」


 女将は大きく笑うと勇樹の背中をバンと叩いたが、まるで岩でも叩いたかのような感触が跳ね返ってきて女将は目を丸くする。


「驚いた! 坊やってば見かけによらず鍛えてるんだねぇ! あたしの手の方が痺れちまったよ!」


「あははは、恐縮です?」


 女将の勢いに若干気圧された勇樹は、人見知りも相まって落ち着かない様子で視線を泳がせる。

 すると、レリに手を引かれて若干疲れ気味のフィーアが遅れて入ってきた。

 そして女将もフィーアの姿を見て、レリと同じように目を丸くした。


「ありゃ、随分とペッビンさんだね! お嬢さんもウチに泊まるのかい?」


「あの、その……」


「あ、そっちは僕の連れです。一人部屋を2つ、期間は5日で」


「おや、そうなのかい? ウチは一泊230Eだよ!」


「じゃあ、5日の2人分で23百Eですね」


 勇樹は手早く銀貨2枚と大銅貨3枚を手渡すと、女将は受け取りながら驚いた


「坊やって計算が早いんだね! てっきり冒険者かと思ってたけど商人なのかい?」


「冒険者ですよ。人に習っていた事があるので、ある程度なら出来るんですよ」


「そうだったのかい。じゃあロッソ、あんたが部屋まで案内しな!」


「わかったよ母さん。お客様、部屋はこちらです」


 レリの兄に案内されて部屋に向かった。

 荷物は“旅人の鞄”に全部入れてしまっているので、カモフラージュ用の運び用手荷物を部屋に運び入れが終わると、勇樹は隣のフィーアの部屋に向かった。



 一方、部屋に着いたフィーアは特に何かをするでもなく大人しくしていた。

 忌み嫌われているハーフエルフが外を出歩けば、どんな反応をされるのかは奴隷市場に居る時に何度も見ている。

 疎まれると分かっているので、部屋を出て何かをしようという気はフィーアには無かった。


 とは言っても、家と違って仕事も無いので暇を潰す物も無い。

 やる事が無いので、屋敷にいる時にアリサに分けて貰った糸で編み物でもしようかと道具を取りだしていると、部屋のドアが叩かれた。


「はい、どなたですか?」


「フィーア。僕僕、今ちょっと良い?」


「ユーキ様? どうしたんですか?」


「折角の旅だし、一緒に町を見て回ろうかなーと思ってさ。フィーアだって部屋の中で篭りっぱなしじゃ、退屈でしょ? それに、良い物あったのも渡し忘れてたし」


「良い物……ですか?」


「そそ、だから開けてー」


 催促されてフィーアが慌ててドアを開けると、勇樹を中へと招き入れる。

 すると勇樹は部屋に入って、いきなり自分のポーチを漁り出して、一本のリボンを取り出した。


「ほら、フィーアって家にいた時もあんまり外に出かけたがらなったじゃん? ただでさえハーフエルフってだけ奇異な目に晒されるし、そこで考えたのがこのマジックアイテムです」


「えーっと、そのリボンがですか?」


「これは身に付けるだけで体の一部に幻影を掛けて、普人の物に見えるようにするマジックアイテムなのです」


「え……」


 フィーアは思わず、勇樹の手にあるリボンを見た。

 幾ら自重できると言っても、十代のフィーアにも人並みに遊びに行きたい衝動はある。

 今まで我慢していた事が出来るようになる。それだけでフィーアはリボンから目が離せなくなっていた。


「さささ、余所の町に来るなんて滅多にない機会だし、それを付けて早く行こうよ!」


「は、はい。わかりました!」


 勇樹は一度部屋を出て、フィーアが身支度を終えるのを待つと、髪にリボンを髪飾りにして付けたフィーアと共に街へと繰り出した。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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