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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
5章 少年、懐かれる

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05話 少年、旅立つ

(´・ω・`)冷静に考えてみると……何で旅に出てるんでしょう。

 当初の予定には全くなかったのに……(無計画)

 勇樹の科白に2人は大いに戸惑った。

 この世界にも『レベリング』という概念は存在する……が、モンスターとの戦いが命懸けのこの世界では、レベルとは自力で上げた『強さ』であり、他者の手を借りて行うのは自分で戦い必要のない者が格上げに行うものという認識である。

 加えて、人間やモンスターと違い、魔力も僅かにしか持たない動物はレベルが上がり辛く、戦えない上に貴重な足である馬のレベルなど重要視されてはいなかった。

 しかし、そんな2人の戸惑いなど全く気が付かずに勇樹は話を進める。


「そもそも、この世界に存在する全ての生物には“レベル”という概念が存在します。なのに、何故移動手段である馬をレベリングしないのか? 僕は常々疑問に思ってました。なので目指せ、僕の育てた最強の馬車馬!」


「確かに理論上はそうだけど……馬のレベル上げなんて上手く行くの?」


「とりあえずはスライムを踏み潰すところから始めようかと、最近また増えてきた閣下の処理もできて一石二鳥だしね。えーっと、鎧のサイズはどうだったかなぁ」


 勇樹は馬体のサイズを測り終えると、ポーチからガラガラと鎧のような物を取り出し始める。

 その中の一つを手に取ると、馬の脚に当ててはその場でサイズを調整して行く。

 ちなみに閣下とは、勇樹が前に捕まえてきたスライムのことで、アリサ達も残飯処理で餌を上げるので3日に1回のペースで分裂していて、その度に勇樹が潰しては素材として冒険者協会に持って行っていたりする。


「えーっと、ユーキ君。本気?」


「本気も本気、大マジです。というか、ずっと不思議だったんですよね。小説なんかじゃあ、テイムしたモンスターとか奴隷はバンバンレベル上げしてチートだヒャッハーってしてるのに、乗ってる馬にはノータッチな事が多いのは何でかな~って」


「それは、馬はレベルが上げ辛いし、そもそもモンスターを攻撃する手段を持ってないから余計に難しいのよ。怪我して歩けなくなったら困るじゃない?」


「でも、怪我は魔法なりで回復させればいいんじゃないですか?」


「回復って……」


 勇樹の科白にアリサは言葉を失った。

 回復魔法とは基本人の為に使うもので、動物に使うという考えすらなかった。

 破天荒なアイディアばかりを出す勇樹に、一周回って関心すら覚え始めていた。


「というワケで、僕はこれから鎧のサイズ調整を部屋でやってきますね。じゃ!」


「あ、こら!」


 一瞬呆けてしまった隙を突いて、勇樹は屋敷の中へと飛んで行ってしまった。

 会話に参加していなかったフィーアはといえば、勇樹が屋敷に入っていくのを確認すると、馬を厩舎の方へと連れて行った。



 それから3日間で、勇樹の旅の準備は着々と進んでいった。

 そんなある日、いつものように教会の勤めを終えて帰ってきたアリサが、夕食を食べている最中に何かを決意したような顔で話を切り出してきた。


「あのさ……私、明日にでも教会に戻る事にしたわ」


「うん、わかった」


 帰って来てからというもの、ずっと様子がおかしかったアリサが漸く切り出した話を、勇樹はあっさりと頷いて何事も無かったかのように食事を続ける。

 一方、アリサは余りにもあっさりと頷かれた為に思わず呆気に取られて、そのままの状態で固まってしまった。

 が、すぐに復活して吼えた。


「ちょっと! あんまりにもあっさり頷きすぎじゃない!? そりゃ、私はここに家出中だったけども、もう少しなんかあるでしょう!?」


「いやー、たまに孤児院に遊びに行くとシスターのヘレンさんが「アリサちゃんはそっちで元気にしてる?」って聞いて来てたし、この前に行った時に「そろそろアリサちゃんに帰ってきて貰わないとねぇ」なんて呟いてたから、そうなんだな~って」


「私、それ初耳なんだけど!?」


 自分の知らないところでされた自分の話をモノマネ交じりに説明されて、アリサの顔が(のぼ)せたように赤くなる。

 アリサはそれを誤魔化すように、わざとらしく咳払いをして話を本筋に戻す。


「ゴホン、それでね? 私がなくなっちゃったら、この広いお屋敷でフィーアが一人きりになっちゃうじゃない? その辺は考えてるの?」


「うーん、フィーアを一人で残しておくのも不安だし、いっそ屋敷を封印しちゃおうかなって考えてたんだけど」


「封印って……こんなお屋敷を業者に頼んだら、凄い金額を請求されちゃうわよ?」


「モーマンタイ! こんな事もあろうかと、専用の道具は準備済みです!」


「あ、そう。その辺は抜かりないのね」


 ちなみに“封印”とは主に使わない部屋などを保存する魔法の事で、これをすると中に入れなくなるが封印した時の状態のままを保てるので、専門の業者がいるほどよく使われている魔法である。

 勇樹は腰のポーチから幾つかの道具を出して見せると、アリサは何も言えなくなり納得した。

 そして、勇樹はくるりとフィーアの方を向き直すと、彼女の手を取った。


「というワケで、何の相談もなしにフィーアも旅に付いてきて貰う事になるんだけど、よろしく!」


「は、はい。そもそもわたしはユーキ様の奴隷ですから、わたしの都合など気にしないでください」


「ダメよフィーア! 私が傍に居られないんだから、ユーキ君の手綱は貴女が握らなきゃ」


「あ、いえ、ですがわたしは所詮は奴隷で……」


「特に休憩は忘れずこまめに取らせてね! 絶対、ユーキ君の事だからまだ行けるとか言い出して、キャンプ地から離れた所で野宿する羽目になるかも知れないのよ!」


「ああ~……ハッ、いえ、その!」


 一瞬納得した声を上げてしまい、慌てて否定するように手をバタバタさせるフィーアだったが、アリサはそんな事は一切気にも留めずに念を押し続けて、最後にはフィーアが折れて頷いたところで、その日の話は終了した。



 そして翌日……


「というワケで、ちょっとの間だけ旅に出てきますね!」


「おやおや、それは随分と突然だねぇ」


「大丈夫ですよ。時々は顔見せに帰ってきますから!」


 寂しそうにするヘレンに、勇樹は元気よくそう答えた。

 今朝になって勇樹が突然、今日にでも旅立つと言い出して、アリサが教会へ帰るのに合わせて別れの挨拶へ来ていた。

 足元では孤児院の子供たちが、勇樹の膝を棒で叩いている。


「ユーキ兄ちゃんめ! コマで勝ち越してるからって逃げんなよ!」


「この前の勝負だって着いてなんだからね!」


「はっはっはっ、敗者が何とでも言うがいい! てか、棒が痛いんだよ!」


「「きゃー!」」


 勇樹が軽く威嚇すると、子供たちは奇声を上げて中庭にアリサの方へと走って行った。

 一緒にいたフィーアは始めて教会を訪れたので、子供たちとどう接していいのか分からず、アリサの陰に隠れながらオロオロしていた。


「あ、そうだ」


 その光景を見て、勇樹は思い出したようにポーチに手を突っ込んで、何かを探し始める。

 そして、ポーチの中から一抱えもある箱を取り出して足元に置いた。


「これ、僕が作った子供たち用のオモチャです。乱暴に扱っても、ちょっとやそっとじゃ壊れないように出来てますので、これを孤児院に寄付しますね」


「あら、いつもありがとう。ここの子供たちも君と遊ぶのを楽しみにしてたから、寂しくなるねぇ」


 そういうと、ヘレンは勇樹の頭を撫で始めた。


「君みたいに子供たちと遊んでくれる冒険者は、後にも先にも君ぐらいだろうし、アリサちゃんも心配するからくれぐれも道中は気を付けてね」


「はい! その辺りはアリサさんとも約束したんで大丈夫です!」


 勇樹はそれだけ言うと、ヘレンに手を振りながらフィーアを呼び寄せる。

 そして2人は馬車に乗り込み、ヘレンとアリサ、そして孤児院の子供たちにも送られながら馬車を発進させる。


「それではお元気で! また帰ってきた時にはよろしく!」


「アリサ様、お世話になりました!」


「2人も気を付けてね! 特にユーキ君は危なっかしんだから!」


 3人は姿が見えなくなるまで手を振り合った。

 レベルを上げて逞しくなった馬に、ノームの技術で作られた高性能馬車、そしていつでもエルクレアに戻って来られる『妖精の通り道』を携えて、勇樹の旅は始まったのであった……


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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