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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
5章 少年、懐かれる

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04話 少年、馬を飼う

(´・ω・`)気が付けば、もう80話も投稿してたんですね。

 百の大台まであと少し!

 持ち出してきたマジックアイテムが、フィーアに神話級だと指摘されて思わず顔を背けてしまった勇樹は気まずい空気に包まれていた。


「で? 一体そんな物をどこから持ち出してきたの?」


「それは誤解だよ!? これは僕が一から設計図を引いて作った……」


「これ……多分、素材はミスリル以上の金属かと。それにこれは……見た事も無い術式がびっしりと刻み込まれてて……ってあれ? これ、普人ともエルフの文字とも違うような……?」


 マジックアイテムに近づいて観察していたフィーアの何気ない呟きに、アリサの疑念の混じった視線がさらに強くなる。

 それに対して、その視線から逃げる様に顔を逸らしていた勇樹は、話を聞いていなかったように吹けてない口笛を吹いて誤魔化そうとする。

 だが、そんな誤魔化しもアリサにガッチリと顔を掴まれて、無理矢理振り向かされて終わった。


「ユ~キく~ん?」


「はい……全部話すんで放してください……」


 アリサがゆっくりと顔から手を放すと、勇樹は徐にその場に膝を折って正座する。

 そして、勇樹は今までノームの里へ行ってやってきた事のみ(・・)を、自分の師匠たちをドラグニールの知り合いでドワーフの親戚のような人だと、ぼかしながら語り出した。

 特に睡眠薬で眠らされて、回る手術台に(はりつけ)にされた時の事は念入りに、恨み辛みを篭めて語っていた所は面倒臭くなったアリサに止められる。

 勇樹の話を聞いたアリサは、目頭を押さえながら息を吐いた。


「えーっと……? つまり今まで、そのおじさん達?の所でコレの作り方を習っていたと……」


「いえ、正確にはこれは僕が1から設計して、素材提供以外も全て僕がやりました!」


「ふーん。じゃあ、案外難しいマジックアイテムじゃないのね。こういうのがあれば便利なのに何で流行んないのかしら?」


 アリサの呟きに対して、フィーアが首を横にブンブンと振り乱す。

 そんなマジックアイテムがお手軽な筈がないという、奴隷故に口を挟めないフィーアの無言の訴えであったが、アリサの後頭部に目が付いていなかったので届く事はなかった。

 勿論、勇樹からの位置からはハッキリ見えていたが、あえてスルーする。


「で、ですね。コレを作った理由っていうのが……そろそろ旅に出ようかなって思いまして」


「え……旅に?」


「ヤー! そもそも、この世界を色々見て回りたくて城を飛び出して冒険者になったのに、流石に工房に引きこもり過ぎちゃったかなって思い至りまして。でも、この家も買ったばかりだし引き払うのも勿体ないなぁと考えていたら、なら『いつでもここへ帰れるようにしてしまえばいいじゃない』と思い付いて作ってみました!」


「そんな事で、コレを?」


 旅先から帰りたいが為だけに、高価なマジックアイテムを用意した勇樹にアリサは呆れて何も言えなくなった。

 しかし、聞き捨てならない事は他にもあったので、その事には目を逸らす事にした。


「それで、旅にってどこへ行くつもりなの? ただでさえ、Fランクの冒険者が旅に出るなんて死にに行くような物なんだからね?」


 この世界では商人か中級以上の冒険者でもない限りは、一生住んでいる町や村から出る事は無く、近くの村同士でさえ年に一度でも交流があれば良い方である。

 それだけ人里から出る事は、いつ命を落としてもおかしくはない危険な行為だった。

 その辺の感覚は、未だに日本人のままの勇樹には理解できていなかった。


「まあ、大丈夫だって。その為に師匠の所で色々と準備はしてきたから! というワケで、これからちょっと買いたい物があるから行って来るね!」


「買いたい物……? あ、ちょっと!」


 アリサの制止も聞かずに部屋を飛び出した勇樹は……命令で家から出られない事をすっかり忘れて、首輪の効力によって玄関で動けなくなっていた。



 結局、今日一日は家で大人しくしているしかなくなった勇樹は、フィーアに最後の望みを託した。

 フィーアの両掌をガッシリと握り締め、頭を深く下げながらフィーアに買い物を頼む。

 勿論、フィーアの方はそんな事をされて戸惑っていた。


「というワケでおねげぇしますだぁ。ぜひにフィーア様に買って来て貰いてぇもんが……」


「へ!? え、あの、ユーキ様?」


「こら! いきなり変な事を言って彼女を困らせないの!」


「きゃいん!?」


 真剣な顔でふざけ始めた勇樹の頭に、アリサが拳骨を落として止めに入った。

 拳骨を落とし慣れているアリサの拳は如何なる技なのか、今ならトラックとの衝突ですら「痛い」で済ませられる勇樹の防御力を抜いて、勇樹の頭にタンコブをもたらした。

 殴られた部分を擦りながら、今度はふざける事無く金貨の入った鞄を取り出してフィーアに渡す。


「改めて、フィーアには馬を買って来て貰いたいんだ。立派なのじゃなくていいから2頭を、用途も問わないから安いロカ種でも構わないよ」


「馬……ですか?」


 ちなみに、ロカ種とは寸胴で力はあるが臆病な性格なので、軍馬や馬車を曳かせるには不向きな品種で、主に村の畑を耕す為の馬耕用として飼われている。

 勇樹も馬屋掃除の依頼で世話をした経験があったので、こちらの馬の品種には多少の知識があった。

 子供にお使いを頼むような気軽さで、馬を買ってきてほしいと頼む勇樹に、改めてフィーアが驚き固まっていると、横から手が伸びて鞄を取り上げた。


「はいはい、フィーアだけじゃ辛いだろうから私もついて行ってあげる。というか、旅で使うのにホントにロカ種でもいいの?」


「ぶっちゃけ、馬なら何でもいいよ。老いたのだとちょっと厳しいけど、怪我してるのとかだけだったら寧ろ買いだね!」


「わかったわ。それで……この買い物鞄にはいくら入ってるのかしら?」


 アリサは手に持った鞄を持ち上げながら中身を問うた。

 勇樹は買い物に使う鞄を旅人の鞄と同じ仕様にしているので、見た目と容量が違う事を知っていた。

 そして、その鞄に生物は入れられない事と、馬を買う金よりも価値が高い物を持たされる意味を考えれば、答えは一つしかなかった。


「えーっと、とりあえず金貨数十枚に、適当に金とか銀のインゴットに宝石の原石を一抱えずつぐらい詰め込んで置いたよ。まあ、原石の方はどっかで換金してからじゃないと、使えないだろうけどね」


「入れ過ぎよ! というか、そんな物どこで手に入れて来たの!?」


「金と銀は師匠から分けて貰ったマジックアイテムの材料の余りです。原石の方は、ちょこちょこ山とかに採取に行ってたら拾いました。宝石って使い道が狭いクセに、研磨しなきゃ使えないから割と余り気味なんだよね……その癖、魔石とかのすぐ近くにあるから一緒に取れちゃうし」


「あはは、私も綺麗な宝石なら嬉しいけど原石のままじゃあね……ゴホンッ! それはそれとして、馬を買うのにそんなに必要ありません。ほら、この小袋だけでも十分よ!」


 一般家庭には縁遠い悩みを聞かされたアリサは、鞄の中から金貨が詰まった片手で持つにはズシリと重い小袋を取り出して、残りを勇樹に返した。

 それを受け取りながら、勇樹は不満そうに眉を顰めた。


「え~、でも(自家用車)を買うのに、それっぽっちで足りるの?」


「十分よ。それに馬がそんなに高かったら、村とか商人も買えないわよ。安い馬なら金貨5枚前後でも十分だわ……本当に安いのはね」


 アリサはそう言って、フィーアを連れて出掛けて行った。

 そして、太陽が山の頂に着きそうになる頃、2人が屋敷に帰ってきた。

 2人は帰ってきた時に家の中が静かな事を不審に思って屋敷の中を探してみると、勇樹が暇潰しに痺れ薬を服用して動けなくなっていて、それの対処に追われつつ買って来た馬を勇樹に見せたのだった。


「お~! 割と良いやつを買って来たんじゃない!?」


「ええ、そう?」


 アリサたちが買って来た馬を見て、勇樹ははしゃぐように喜んだ。

 2人が買って来たのは、先の話に出していたロカ種のちょっと年老いた2頭だった。

 が、買って来た当の本人たちは微妙な顔をしていた。


「ユーキ君に言われた通り、お店で安い馬を選んで買って来たわよ。2頭で金貨6枚まで値引きして貰ったけど、もう盛りを過ぎちゃってるから、馬耕にも向いてないって言われたけどいいの?」


「いやいや、最悪は死にかけの馬でも来るかと思ってたから、それを考えたら十分過ぎるよ」


 勇樹は2頭の馬の体を巻き尺で測りながら、満足そうに大きく頷く。

 そうして計測を終えると、勇樹は大袈裟に腕まくりしながら腕を回した。


「よーし、これから忙しくなるぞ! まずは2頭の装備を整えて、適当な狩場に連れてってから……」


「ちょっとちょっと、ユーキ君ってば今日1日は家から出られない事を忘れてないわよね? それに装備って何の事よ」


「もちろん覚えてるよ。ただ、ちょっとこの馬たちに旅を始める上で、やっておきたい事が一つあってね」


「やっておきたい事?」


 アリサがそう聞き返すと、脇に居たフィーアも一緒に首を傾げた。

 2人とも馬の扱いに詳しい訳ではないが、馬具を着ける以外に何かあったかと頭を捻る。

 勇樹は2頭の間に立って、小さく頷くと口を開いた。


「これから、この2頭をレベリングしたいと思います!」


 2頭の首を軽く撫でながら勇樹が言った言葉は、2人を大きく驚かせたのだった。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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