幕間4‐2 100人の勇者たちの変調
(´・ω・`)毎度毎度、主人公以外が動かし辛い(愚痴)
アレですね、「掘り下げないから設定ができずに、どう動かせばいいかわからない」の悪循環なんですね。
ユーキが小鬼王に遭遇して魔王が虫けらのように踏み潰した頃、勇者たちにある変化が訪れていた。
「……? ねぇ天使。ちょっとこれ見てよ」
「何? 花菱さん」
最初に気付いたのは、『正統派』の女子リーダーで天使星也と試合をしていた花菱明日菜だった。
偶然、小休止中に自分のステータス画面を開いているとあるスキルが追加されている事に気が付いた。
『魔王が復活した事で新たなスキルを追加します』
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『共闘』
[勇者]スキルによるレベル上昇率を下げる代わりに、レベルアップ阻害効果を無効にする。
魔王が復活した時、勇者全員が一定レベルに達していない場合の救済スキル。
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そこにあったのは、逃げられぬ脅威の出現と自分たちが未熟であるという烙印であった。
しかし、それを見た2人が真っ先に思った感想は「やっぱりな」である。
共闘できないという勇者のシステム上、それの所為でレベリングできる人数が限られてしまい、ゲームの主人公ように不眠不休でレベル上げをし続けるという事も出来ないので、個々の運動量や一晩で抜ける疲労を考えれば大体一人2時間が限界であった。
そんな遅々とした状況で魔王が倒せるはずがないと、勇者たちの間でも状況に手詰まりを感じて焦燥感を覚えている者も多かった。
故に、それを解消できるスキルを得られたのは素直に嬉しかった……が、後半の説明文には否が応でも自分たちの不甲斐なさを直視させられる。
ステータス画面を見る2人の間に重い空気が流れる中、明日菜が話しを切りだす。
「ねぇ、アナタは現状の私たちで魔王に勝てると思う?」
「ははは、そこで『できる!』って断言できるほど、自分知らずでも命知らずでも無いつもりだよ。僕たちには圧倒的に経験が少なすぎる」
「そうなのよね……」
彼らの戦闘経験といえば、一日に2時間ほど郊外の草原に生息するモンスターを相手にする程度。
勇者たちに付けられた指導役たちの話に出てくるような、大型トラックほどの大きさの熊や山を跨ぐような大蛇などの強大なモンスターと戦った事も無ければ、多くのモンスターが生息する森の中へ入った事すらなかった。
「この前、モンスターの大進攻で山のように大きいモンスターを見かけたって噂もあるし……ますます私たちはのんびりしていられないわね」
「でも、あんまり根を詰め過ぎると倒れるよ。ただでさえ花菱さんは……」
星也が明日菜に何かを言おうとした時、兵士が駆け寄ってきて2人の前で立ち止まると小さく敬礼をして口を開いた。
「ノレド隊長より勇者様たちへ連絡があります。『勇者たちは2日後、特別訓練に入るので準備しておくように』との事です!」
「「特別訓練?」」
突然の知らせに2人は首を傾げるが、兵士は他の勇者へ知らせる為に走り去ってしまった。
そして2日後、街の門前に集められた勇者たちは、まるで兵士のように同じ防具に身を包んで整列していた。
そこへ今回の指揮を任された隊長のノレドが馬に乗って勇者たちの前へと出る。
ノレドは軽く勇者たちを見回すと軽く頷いて、声を張り上げた。
「今回の訓練では少し遠出する! 一応新しいスキルの事は聞いているが、今回は戦闘経験を積んで貰う為に行くのでローテーションは少人数でこまめに行う予定だ!」
ノレドの台詞に勇者たちがざわめく。
突然の遠征に戸惑う者や新しいスキルに今気付いた者、そして戦闘経験を積むという言葉に反応している者たち。
勇者の反応は様々であったがノレドが手を叩くと、スッと喋るのを止めてノレドに注目する。
「皆は既に知っていると思うが……魔王が復活している。我々としても早く諸君らには戦えるようになって貰う為、これより4日間ほど街の外へ出て野営を体験して貰おうと考えている。それでは出発!」
合図と共に勇者たちは歩き出した。
しかしこの時はまだ勇者たちは半分ピクニック感覚だったが、すぐにそれが間違いだった事に気付くのである。
街が見えなくなって暫く経った頃、最初に異変が起こったのは気が弱かった生産系メンバーであった。
元々運動が苦手だったとはいえ、既にレベルも平均で20以上は明日菜テータスも大幅に増えてこの程度の距離を歩くのは余裕の筈だった。
にも拘らず、突然何の前触れもなく数人が気絶するように倒れ、この世界にも慣れ始めていた勇者たちに動揺が走る。
「チッ、思った以上に消耗は激しいな」
「あ、あの……一体これはどういう事なんでしょうか?」
勇者たちの様子を見て舌を打つノレドに、星也は思わず問い掛けた。
そこで初めて、星也も自分がいつも以上に消耗して息が上がっている事に気が付く。
動揺する星也にノレドは周りを見回しながら冷静に答えた。
「ここは既にモンスターのテリトリーだからな。だがここから先はこんな物じゃないぞ?」
「ど、どういう意味ですか?」
ノレドの物々しい雰囲気に思わず星也は気圧される。
そして、何かあるのかと周囲を見回すがそこはいたって普通の草原にしか見えず、星也には何が起こっているのかまるで理解できなかった。
勇者たちの動揺している様を見て、ノレドは溜息を吐いた。
「まったく、まだ外へ出たばっかりだってのに、こんな所でビビってるようじゃあ先が思いやられるぞ」
「ビビるって……こんな所で彼らが何に怖がってるっていうんですか」
「あ? ああ、お前も気付いてないのか。いいか? ここはモンスターの領域で、俺たちは常に奴らからの“殺気”に曝され続けているんだよ。ちょっと前まで戦った事も無いようなガキが、死ぬか生きるかの空気に耐えきれるワケがねぇだろ。冒険者だって初心者は大体がモンスターの殺気に当てられて辞めちまうって話だ」
「……」
ノレドからそう聞かされた星也は何もない草原を見回した。
そこには何の変哲もない風景が広がっているようで、よく見れば小さく動く影や空には取りにしては大きすぎる影が飛んでいるのが見える。
星也にはそれらが全て凶悪なモンスターの影にしか見えなくなっていた。
「こら、お前まで気圧されてどうする。せめてお前ら数人ぐらいには動けるようになって貰わんと、この遠征の意味がないぞ。この程度は笑って流せるようになりやがれ」
「そ、そんな事を言われても……」
平和な日本の学生だった勇者たちにとって、剥き出しの殺意を瞬間的に向けられる事はあっても、空間に満ちた殺意に曝され続ける事などまずあり得ない。
遠くの方で付け狙っている獣型モンスターや上空から気が緩んで隙が出来るのを待っている鳥型モンスターなど様々な脅威が彼らの隙を窺い、ともすればその肉を貪ろうと集まっている。
「はぁ、しゃあない。もう少し先でやるつもりだったが、今日はここでテントを張るぞ! 食料は持って来た物を使って自分たちで作り、見張りの順番はお前らで決めて交代でやれ! 開始!」
ノレドが手を叩きながら合図を送ると同時に、付いてきた指導役も手伝って既に疲れ果てている勇者たちに肩を貸したりしながら、ノロノロと行動に移し始める。
その様子を見たノレドはこれからの4日間の事を考え、大きく溜息を吐くのであった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
多分、続きます。




