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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
幕間

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 幕間4‐1 とある冒険者の目撃談

(´・ω・`)あっちを書いてこっちを書いてを繰り返してます……

 一度乱れたリズムを取り戻すのは中々難しいです。


 ※今回は一人称です。

 俺の名はグリズゥ。

 エルクレアを拠点にしているBランクパーティ『蒼き熊爪』のスカウトだ。


 現在、俺は一人の冒険者について調べている。

 何でもソイツはFランクにも拘らず、割高な協会の貸し工房を朝から晩まで、ほぼ毎日貸し切っていたらしい。

 その上、エルクレアの冒険者ならば誰もが近づきたがらないあの人が座る受け付けに平気で座り、あまつさえ世間話までしていた。

 しかし、そこまでならば俺も態々最底辺(Fランク)の冒険者など気には掛けず、息がっているのだと一笑していたに違いない。


 本来であればBランクの俺が気に掛ける必要もないソイツを調べ始めたのにはキッカケがある。

 最初はホンの些細な事だった。

 いつもの様に早朝に協会のロビーで依頼表が掲示されるのを待っていると、近所にでも出かけるような軽装の少年が俺たちの前を通り過ぎて、真っ直ぐ受け付けへ歩いて行くのを見送った。

 それを見た俺は、漠然とどこかの子供が依頼でも出しに来たのだろうと考え気にも留めなかった。


 翌日も冒険者協会でソイツを見かけ、その次の日も次の日もソイツを冒険者協会で見かけるようになった。

 流石に気になった俺は、受け付けにあの少年が何しにここへ来ているのか聞いてみた……が、返ってきた返答は「そんな少年は知らない」だった。

 ここで俺は初めてその少年に興味を抱き始めた。


 だがBランクの俺を持ってしても、その少年を調べるのには苦労した。

 まず知っている人間が極端に少なかった。

 まるで情報操作でもされているかのように、その少年を知る人間が少なく、本来であれば街にいる冒険者とは全員顔見知りといっても良い武器屋ですら少年の事は知らなかった。

 それでも俺の伝手をフルに使って幾つか分かった事があった。


 ――名前はユーキ、Fランクの冒険者だが依頼は最低限のノルマを熟す程度しかやっておらず、それ以前の経歴は一切不明。

 『金の小鳥亭』に泊まっていたという話だが、どこからか持ち込んだ刀剣で部屋を埋め尽くしたために追い出されて、現在の住居は一切不明。

 ほぼ毎日貸し工房に詰めているが工房などの伝手は無く、寧ろ街の武器屋や工房に立ち寄った形跡すら見当たらず、どこで材料を手に入れているのかも一切不明。

 奴隷を即金で買ったという話もあったが、Fランクにそんな資金があるならば、もっと噂になっている筈なので他人の空似だろう。


 ここまで調べるのに1週間を要した。

 普通であれば3日で相手の素性など殆ど調べられる筈の俺が、コイツについては全く持って情報が得られなかった事に悔しさを覚える。

 もうここからは俺が直接出向くしかないようだな。



「よし、目標が現れた」


 まだ日が出て間もない早朝の冒険者協会で見張っていると、件の少年が現れた。

 何故か左腕に包帯を巻いて固定しているようだったが、どこかで怪我でもしたのだろう。

 少年が建物に入ったのを確認して、俺も少し遅れて中に入った。


 中に入ると、相変わらず冷や汗が止まらない光景が受け付けの片隅で繰り広げられていた。

 ロビーの隅でコソコソしている俺でさえ思わず武器に手が伸びてしまうというのに、あの少年はどうしてアレ程の殺気を笑って受け流しているのだろうか?

 だが今日の本題はそこではないので、彼を視界の端に入れつつ時間を潰す事にした。


「……長い」


 もう昼で殆ど冒険者もいないというのに、彼は未だに受け付けで雑談を続けている。

 というか、いつの間にか軽食を取り出して食い始めたぞ。

 弁当まで持参とはどこまでやるつもりなんだお前は。

 そんな俺の心の声が届いたのか、副ギルド長に受け付けでの飲食は禁止だと注意されて、少年は席を立って出口へ向かった。

 俺も後を追うように気配を消しながら協会を飛び出す。


 昼間というのは割とどこも人通りが少ない。

 何せ冒険者の殆どは外へ出かけ、住人も仕事へ出かけているので大通りは主婦か商人くらいしか通らない。

 という事でこの時間帯の尾行というのは非常に目立つ。

 特に脇道に入られたらそれ以上の追跡は不可能になる。

 追跡の基本は“相手に知られない事”であり、下手に悟られて警戒されるよりはその場では諦めて追跡し直すのが得策……なのだが、ここで俺に秘策がある。


 斥候職である俺には『気配遮断』スキルがLv5もある。

 初心者はこれを聞くと10段階の真ん中かと思うのだが、それは大きな間違いだ。

 どんなに才能があっても数年修行を重ねて、やっとLv1のスキルが付くと言えばその大変さがわかると思う。

 Lv5のスキル持ちならプロと名乗ってもいいレベルなのである。

 自画自賛ではないが、同レベル以上の斥候職でもない限り俺の気配は悟られないと自負している……いや、していた。


「おかしい……見失った?」


 脇道に入った所では見失っていなかった。

 暫く真っ直ぐな細道を歩いている所で……少年は煙のように消えていた。


「ど、どこへ行った? こんな一本道の何処に隠れる場所なんて……いや、そもそも俺は一度だって目を離していないぞ」


 これまでだってモンスターや人物の追跡など仕事上、何度も受けた。

 その中には当然、ばれそうになってヤバくなった事だって何度もある……が、人が目の前で突然消えるなんて初めての事だ。


「壁を登ったのか? いや、そんな隙は無かったし、第一そんな事をすれば目立つ。だがしかし……そうなると奴はどこへ」


 一瞬、その場に立ち止まって首を捻ったが、これ以上を当てもなく探した所で後手に回るのは目に見えているので即座に引き返した。



 3日後、俺は再び協会の前で張っていた。

 何故翌日ではないかというと、あの場では俺の尾行がばれていた可能性を考えて、相手の警戒を一旦落ち着かせる為に日を置いたのだ。

 だが、それは杞憂だったようだ。

 目標は何の警戒もした様子もなく、いつもの様に協会へ入って行った。

 俺も後から入り、前回と同じように昼近くまで協会に居て、目標は再び動き出す。


「前回はここで撒かれたが……今回はどうかな?」


 少しせこいようだが今回は罠を張らせて貰った。

 まあ、罠と言っても手前に水たまりを作って足跡が残るようにしただけだがな。

 水たまりは飛び越えられない程度の大きさに作っているから、これで前回のようにはいかない筈だ。


「さぁ、お前の正体を見極めさせてもらうぜ」



 10分後、俺は酒場のカウンターで酔いつぶれていた。

 ハッキリ言おう、撒かれた。

 あれだけ張り切って罠まで仕掛けていたのに、あっさりと目の前から消えられ、足跡もその場でピタリと途切れていて……相手はFランクなのに俺は全く追い切れなかった。

 Bランク冒険者としてやってきたこれまでの俺の実績とかプライドとか、色々な物が粉々に粉砕されてしまった。


 しかも、恐ろしい事はこれだけじゃなかった。

 いい加減、酔いを()まさないと明日に響くと思い、精算しようとポケットに手を突っ込むと、身に覚えのない金貨が一枚だけ入っていた。


 理由は分からない、だが俺は翌日には奴の事はすっかり忘れる事にしたんだ。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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