17話 少年、再びの改造
(´・ω・`)なんかこれを書いている時に「骨髄造血説」と「腸造血説」なる物を初めて知りました。
とりあえず素人が浅く見た感想は……両方じゃアカンの?(小並感)
勇樹が目を覚ますと、そこは穴だらけの荒野だった。
半径で数mはあるクレーターのような穴が十にも利かない数あり、勇樹はそんな荒野の中心で仰向けになって倒れていた。
「(一体何が……)!?」
何が起きたのか把握する為に起き上がろうした。
しかし、本人の意思に反して身体は全く動かず、思わず呟いた口からは空気が抜けるような音だけが漏れた。
一体どうなっているのか、動かそうにも腕や足の感覚が無く指一本動かせず、先ほどから目も左目しか開かずに辛うじて首が回せる程度の事しかできなかった。
「……よぅ。やっと目を覚ましたか」
上の方から声が聞こえ、何とか勇樹は首を動かして見上げると、そこには体中を穴だらけにした赤銅の魔王が巨岩に寄りかかって倒れていた。
左腕は肘から先が炭化して存在せず、肩や右腕には抉り取った様な跡があった。
突然の魔王の半死半生の姿に勇樹は目を見開いた。
「チッ、まさか貴様が竜の血を……いや、純粋の竜なら肉体があそこまで脆い筈がねぇ……本当に、おかしなガキだったぜ……お前」
おかしそうに漏らした笑みには、今際の際のような儚さを含んでいた。
それが証拠に魔王の体中に空いた穴からは黒いモヤの様な物が漏れ出し、顔からは生気が感じられず、初めて遭遇した時の弱者をねじ伏せるような圧倒的威圧感が無くなっていた。
そこで勇樹は初めて、自分が気絶している間に魔王がなにかと交戦し、その結果で自分も魔王もボロボロになっているのだと気付いた。
一体何が……と口にしようとして、声が出ない事を思い出して口を噤んだ。
それを見た魔王が、おかしそうに話し始める。
「ああ、お前は覚えてねぇのか。オレが頭から説明してやっても良いが……もうお迎えが来たようだぜ?」
魔王が目線を上にやると、勇樹の背後に何かが降り立つ音が聞こえた。
足音はゆっくりと勇樹に近づいてきて、すぐ脇で立ち止まる気配を感じた。
「よう、赤賢竜。また会ったな」
「ホッホッホッ、随分な姿じゃなぁ魔王よ」
勇樹の傍らに立っていたのはドラグニールであった。
ドラグニールはその場に膝を突くと、勇樹の姿を足の先から頭の先まで見回した。
「むぅ、随分と手痛くやられたもんじゃのう」
「ハッ、そんな事まで気を配れる余裕なんかなかったからな。まあ、それもあと少しだけどよ」
出血が激しい所為か意識が朦朧として、勇樹には2人が何を話しているのかを理解できなかった。
そんな勇樹を見て、ドラグニールは時間が無いと判断して魔王の前に立った。
「うむ、ではトドメを刺させて貰おうかの」
「おう……持ってけ」
魔王がそう呟いた瞬間、ドラグニールが軽く腕を横へ振るうと魔王の首がボールのように宙を跳ねた。
落ちてきた首をキャッチして、魔王が完全に絶命した事を確認するとドラグニールは勇樹の腰にあったポーチに魔王の死骸を詰めると、竜の姿となって勇樹を抱えて空へと舞い上がった。
ドラグニールが真っ先に向かったのは、ノームの里であった。
里に入った瞬間、ノーム達が目を丸くしてワラワラと集まってくる。
「赤賢竜、どうかしたか?」「肩のソレは……ニンゲンか!」「破損が酷いが、死んでるのか?」「いや、まだ生きている」「というか、ユーキじゃないか?」「おお、ユーキだ」
「えーい、ワラワラと集まるな! それよりお主らで治療ができる者がおったじゃろ! 早く案内せい!」
集ってくるノーム達を押し退けながらドラグニールが焦れた様子で問うと、ノームの一人が手を上げた。
「それならガーネの所が良い。付いてこい」
ノームに先導されてドラグニールが案内されたのは、魔法生物を研究するガーネの研究室であった。
その研究室にはSF映画などに出て来そうな治療用ポッド数台が置いてあり、そこで何やら作業をしていた白衣を着たノームのガーネはいきなり入ってきたドラグニールに目を丸くした。
「い、いきなり何なんだなぁ? おでの研究室に何の用なんだぁ?」
「話は後じゃ。すぐに此奴を治療してはくれんか?」
「はえぇ? おお、凄い怪我だぁ。はよ、治療ポッドに入れねぇと」
のんびりとした口調のガーネは慌てた様子で治療用ポッドのケースを開くと、ドラグニールを見た。
ドラグニールは小さく頷くと、ケースの中に勇樹を寝かせた。
ガーネは手早く勇樹の口にチューブが繋がったマスクを装着すると蓋を閉め、ケース内を溶液で満たし始める。
「酷い怪我なんだなぁ。両腕は捩れて千切れ掛け、肩と胸と腹は潰れて、骨も内蔵もボロボロなんだなぁ。足も千切れてるし、喉も右目も潰れて酷いもんなんだなぁ。しかも、エーテル中毒まで起こし掛けて霊酒でもがぶ飲みしたんだなぁ?」
「魔王とやり合ったんじゃ。当たり前じゃよ」
「ひえ~、無茶するんだなぁ」
ドラグニールの言葉に苦笑いしながら、ガーネは治療用ポッドのコンソールを弄っているとそこに表示された物を見て顔を顰めた。
「おや? どうかしたのかのう?」
「無茶苦茶な魔力の使い方をしたのか血管がボロボロなんだなぁ。というか、コレの体が魔力に付いて来てないんだなぁ。このまま再生させても、また同じ事が起こるんだなぁ」
ガーネの言葉にドラグニール静かに頷いた。
心臓代わりに埋め込んだ“竜の心臓”によって、勇樹の体は少しずつ心臓に適合しようと強化されていた。
しかし、ベースはあくまで人間のままである為、そこには限界があり心臓から流れる魔力の所為で体内が過負荷を起こしていた。
「せめて血か神経だけでも別物に変えれば、こんな事は起こらないんだなぁ」
「うむ……しかし、此奴は人間を止めるつもりはないようじゃからなぁ」
「なるほどなんだなぁ……」
ドラグニールの言葉にガーネは深く頷く。
確かに、高ランクモンスターの肉体を移植して強化するのは容易い。
しかし、それでは全く人間とは呼べなくなってしまうという理屈はマッドなノームでも理解できる心情であった。
どうした物かと頭を悩ませるガーネは、何かを思いついて手をポンとついた。
「そうだ、アレがあったんだな!」
そう言ってガーネは薬品棚を漁ると、古びた小さな小瓶を取り出した。
中にはドロリとした液体が瓶に半分だけは入っていて、それを見たドラグニールは首を傾げる。
「それが一体なんだというんじゃ?」
「これは不死鳥の骨髄なんだな。これを移植して血を作らせて、もっと魔力の通りが良い血液に換えるんだな」
「いや、しかしそれでは完全に普人ではなくなってしまうんじゃないかのう?」
ドラグニールの問いに、ガーネは首を横に振った。
「不死鳥の特徴は何と言っても、どんな生物にも適合する事にあるんだなぁ。通常は他の生物からの輸血や臓器移植なんて以ての外で、そういう意味では竜の心臓も結構ギリギリだったんだなぁ。でも、不死鳥だけはどんな生物の肉体にも拒絶反応も無く適合して、しかもその生物の肉体に同化するんだなぁ。これなら人間は止めなくて済むんじゃないかなぁ?」
「なるほど……言っている意味に半分も分からんが、お主がそう言うのであればそれを信じようそれを信じよう」
勇樹が聞いていればツッコミを入れそうな説明にドラグニールはあっさりと頷き、ガーネは注射器を用意して移植の準備を始める。
そして、不死鳥の骨髄を入れた注射器を治療用ポッドにセットするとコンソールを操作して勇樹の本格的な治療に入った。
容器の中で泡が立ち始め、数本のチューブが触手のように伸びて勇樹に突き刺さる。
のんびりとした口調とは裏腹にガーネは真剣な眼差しでコンソールに映し出された数値を見て、小さく頷きながら薬瓶を取り出してはポッドにセットする。
その作業を30分ほど行ってから、ガーネは大きく頷いた。
「よし、これで体の方は何とか大丈夫なんだなぁ。後は骨髄を移植するだけなんだなぁ」
「うむ、宜しく頼むぞ」
「任せろ! だな!」
ドラグニールの言葉に頷きながら、ガーネは大袈裟にコンソールのボタンを叩いた。
すると、勇樹の背後から畳針のような針が付いたチューブが伸びて背中に突き刺さる。
一瞬、勇樹の体がビクンと反応するがそれ以上の動きはなく、機械はそのまま骨髄を勇樹の中へと注ぎ込んだ。
骨髄が注入されている瞬間、勇樹は意識が朦朧としている中で背骨が燃える様に熱くなるのを感じながら、深い闇へと沈んでいった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
(´・ω・`)中途半端な感じですが、ここで4章は終了させていただきます。
また幕間に数話を挿んでから、次章はストックが溜まり次第、投稿するつもりなので開始日は未定です。




