表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
4章 少年、鬼を見る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/130

15話 少年、魔王を殴りに行く服が無い

(´・ω・`)躓きまくっていたこの章も漸く終わりが見えてきました……

 もう二度と予定外の話なんか挿まないよ。

 朝になると小鬼王(ゴブリンギング)との戦闘で負った怪我も殆ど癒え、ベッドから降りて歩き回れるほどに回復していた。

 寝ぼけ眼で起きてきた勇樹は、リビングにてお茶を飲んでいたドラグニールの姿を見た途端、カッと目を見開いて詰め寄った。


「赤爺! なんで!?」


「あ~、それはアレの所為じゃな」


「アレが!?」


「全く別物なのじゃ」


「じゃあ、どうすれば?」


「慣れるんじゃな」


「2人とも、ちゃんと会話をしなさいよ……」


 主語どころか色々な物をすっ飛ばした会話をしている2人に、アリサは溜息混じりにツッコんだ。

 しかし、本人たちは至って真面目で、ドラグニールの回答に勇樹は頭を抱えていた。


「ぐぬぬ……まさか魔法が使えない弊害(へいがい)がこんな所にまで出るとは……」


「ちなみに、お主がレベルの割に魔王に後れを取っておったのも、体内の魔力コントロールが上手く行っていない所為じゃな」


「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」


「前の勇者たちなんぞはこっちが教えんでも勝手に覚えておったし、戦っている内に気付くかと思ってたんじゃが……まさか(わし)も、お主が家まで買って工房を作っておるとは思いもせんかったんじゃよ」


「う、うぐぅ……」


 肩を(すく)めて首を横に振るドラグニールの言葉に、勇樹がぐうの音も出なかった。

 そして、うーうーと駄々をこねる子供の様に机に突っ伏して唸り出した勇樹を見て、アリサは苦笑いしながらドラグニールの方を見た。


「えーっと……何の話ですか?」


「なに、此奴(こやつ)が抜けているという話じゃ」


 我関せずとお茶を啜るドラグニールと唸っている勇樹を交互に見て、やはりアリサは溜息を吐くのであった。



 朝食を食べ終わり、動ける様になった勇樹が真っ先に向かったのは自分の工房だった。

 工房に入った勇樹は壁に引っ掛けたポーチの一つを手に取ると作業台に様々なモンスターの皮や鱗を広げ、作業台をバンッと叩いた。


「攻撃は頭打ち、足と技は要特訓、あと足りないのは……そう、防御!」


 ノーム達の技術を得てからと言うもの、勇樹はいつも武器や補助具ばかりを作り、防具については護符程度の物しか作って来なかった。

 その所為でいつも狩りをする時は、簡単に作った革の胸当てに防護効果を持った魔術印を体に直接書くという、食い詰めた冒険者ですらしないような恰好をしていたのである。


「と言うか何で今まで僕はあんな格好で狩りをしてたんだろう……材用になる革だってミスリルにも困ってないのに」


「なんじゃ。飯を食って真っ先に駆け込んだかと思えば、また工房に引き篭もる気か」


「げ、赤爺」


 背後から声を掛けられ振り向くと、そこには呆れ顔で作業台の上を見ているドラグニールがいた。

 ドラグニールは勇樹に近づくと、腕を掴んでグッと引っ張った。


「うむ、やはりこうなっておったか」


「あ、赤爺? 腕がどうかした……痛っ!?」


 突然の行動に首を傾げていると、ドラグニールは徐に勇樹の腕に生えていた何か(・・)を引き抜いた。

 ドラグニールが引き抜いた物を(てのひら)の上に乗せてみせると、それは透明な何かの破片のような物だった。


「痛てて……赤爺、いきなり何するのさ。というか、何を引き抜いたの?」


「あ~、うん、お主は気にするな」


 ドラグニールは何とも言い難い複雑な表情を浮かべながら手に持った物をしまうと、代わりに二枚貝の薬入れを取り出した。

 そして、中の軟膏を指で少し掬って勇樹に付き付ける。


「それよりも、ほれこれを腕と額に塗るぞ。どうせここから出ないなら、ついでに魔力コントロールの訓練も兼ねるんじゃ」


「はーい」


 勇樹は素直に服の袖を捲ると、ドラグニールは勇樹の額と腕に軟膏を塗り付けた。


「この軟膏は魔力に反応して光るんじゃよ。そして、一定以上の魔力が流れると高熱を発するんじゃ」


「つまり、この軟膏を光らせつつ熱を持たせるなというワケですか」


「その通りじゃ」


 ドラグニールに頷かれ、勇樹は渋々体に魔力を流し始めた。

 すると、すぐに体に塗られた軟膏が光り出して……激しい光を発し出した。


「熱っ!? あちちち!?」


「阿呆、魔力の流し過ぎじゃ! もっと流す量を均一にするんじゃ!」


「そ、そんな事言われたってっ!」


 軟膏から発せられる熱を我慢しながら、暴れ回る魔力を何とか掴んで抑えつけようとした。

 しかし、どこかを押さえつけると別の所が噴き出してきて、イタチごっこを繰り返した。


「何をしておるんじゃ。流す魔力を一定にして、無理矢理押さえつけるのではなく全身に魔力を循環させるようにするんじゃ」


「一定……循環……」


 ドラグニールがアドバイスを送ると、勇樹はゆっくりと魔力のコントロールを掴み始める。

 そして数分を掛けて(ようや)く全身を覆うように魔力が薄らと膜を張っている状態になった。


「ぐぐぐ……この状態を維持するのがキツイんですが」


「慣れじゃ慣れ。ほれ、その状態で作業を始めんか」


「え……作業どころか腕を動かすのも辛いんですがそれは……」


「慣れじゃ」


 一言で切り捨てられ、勇樹は肩を落としながらハサミを手に取った……が。


「あちちち!?」


 ハサミに意識を向けた瞬間に集中力が緩んで、軟膏が再び高熱を発するのであった。



「そういえばさぁ、何で僕って魔王と対面して無事だったの?」


 魔力を身体に纏いながら作業する事になんとか慣れ始めた頃、勇樹が思い出したようにドラグニールに聞いた。

 その問いにドラグニールは自身の顎を撫でながら目を細める。


「そりゃ、儂が割って入ったからじゃよ。昔から魔王と神龍とその眷属とは天敵関係にあるんじゃよ」


「え、なら勇者とか要らないじゃん。なんで神龍が魔王を倒さないの?」


「互いに互いへの興味が無いからのう~。縄張りが侵されれば別じゃが、戦い始めると天災に天災をぶつけるようなもんじゃよ? それこそ、魔王領ぐらいの土地は軽く吹き飛ぶ事になるぞ」


「ああ、怪獣王みたいに周りへの被害を(かえり)みてくれないんですね。わかります」


 ちなみに、過去には何度か勇者を召喚せずに魔王討伐を試みたり、勇者が魔王討伐に失敗した事があり、その(たび)に龍が魔王とぶつかる事も少なくない。

 その結果、森は塵となり、山が消え、街が吹き飛び、湖の水は一瞬で蒸発し、幾つもの国と文化が歴史から消えてしまっている。


「そもそも神龍は現在、自身の神殿で引き篭もって寝ておるから魔王が直接乗り込んでもしない限りは目覚めんよ」


「えぇ……じゃあ赤爺じゃ無理なの?」


「儂じゃあのう~。天竜様ならいけるかもしれんが、賢竜の儂では精々目覚めたばかりの魔王を追い払うくらいしかできんよ」


「そうか……ん? 魔王が目覚めたばかりだとどう違うの?」


「魔王は目覚めてから大体半月ほどかけて、周囲の瘴気を吸いながら全盛期の力を取り戻してゆくんじゃ」


「は? ……はぁ!?」


 何気なく放たれたドラグニールの発言に、勇樹は思わず振り向いて集中力を乱した所為で腕と額に塗られた軟膏が激しく光り出す。

 痛みで思わず裁断していたハサミを放り投げる勇樹を見て、ドラグニールは呆れ顔で溜息を吐く。


「何をしておるんじゃ。集中力を乱すからそうなるんじゃよ」


「いやいや!? 今のは僕、悪くないよ! と言うか、半月でって城にいる勇者とか間に合わないじゃん!」


「そうなるの~」


 纏っていた魔力を一旦止めながら勇樹は暦表を取り出した。

 そして、とある日から日数を数えると顔を青ざめた。


「あのモンスターの大進攻からもう一週間は経ってる……半月って事はあと一週間も無いよ!?」


「安心せい。勇者が間に合わなければ、まあお主たち3人くらいなら儂が抱えて竜の里辺りまで送ってやろう」


「冗談じゃない! 折角、魔王から素材を剥ぎ取るチャンスなのにボヤボヤしてらんないよ! とにかく、すぐに装備整えて殴り込みだ!」


 勇樹は張り切って作業台に向かうと、魔力を纏いながら黙々と作業を始めた。

 集中し始めて反応が無くなった勇樹の背中を見て肩を竦めながら、ドラグニールはゆっくりと工房を後にした。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ