09話 少年、小鬼を見つける
(´・ω・`)このお話は思い付きとボーっとした頭で書いています。(マジ)
療養という頚木から解放された勇樹は、早速家を飛び出して消耗した素材の確保とレア物の探索に魔王領方面の森へと来ていた。
だが森に来てたった数分で、勇樹はがっかりする事となった。
――ブモォォォ!! ……ごぎゃ!?
「はぁ……これで何匹目なのさ」
勇樹が森に入ってすぐに遭遇したのは、ゲームでもおなじみの猪顔をした巨人オークの群れであった。
この世界でのオークとは、1匹を見かけたら30匹はいると言われるゴブリンの上位種であり、鎧のような分厚い皮膚と人一人なら簡単に殴り飛ばせてしまう腕力を持つモンスターである。
加えて、動物系や昆虫系が幅を利かせていたこの森ではあまり見かけない筈だったモンスターでもある。
「はぁ~、これもやっぱりあの時の影響かな。何匹か殴り飛ばした記憶もあるし、あの時の生き残りが森に逃げ込んでたかぁ」
向かってくるオークの頭を殴り飛ばしながら、変種やここには生息しないレアなモンスターに出会えると期待して意気込んでいた勇樹は盛大に溜息を吐いた。
確かにオークもここには生息しないモンスターの一つではある。
しかし、勇樹が欲していた素材として見た時にはオークは食用肉程度の価値しかなく、牙も皮も既に持っている素材の劣化にしかならなかった。
一応補足しておくと、そんなオークでも普通の冒険者パーティにとっては簡単ながら道具を使い剣や弓では致命傷を与えられない危険なモンスターであり、オークの革鎧はCランク下位までの冒険者でも愛用するような丈夫な素材なのである。
「もうモンスターの肉だって余り気味だってのに、こんなに要らないよ……かと言って放置しておくと余計な物も呼び寄せちゃうから持って帰らない訳には行かないしなぁ……」
独り言で愚痴を零しながら、頭を吹き飛ばされたオークの死体を回収する。
といっても武器にも薬にも使えないので、このままでは腐らせる事が確定している。
そんな風にダラダラと回収作業をしていると、勇樹は突然後ろに跳んだ。
一瞬遅れて黒い影が頭上から落ちてきて、勇樹のいた場所を地面ごと抉り貫いた。
――ギチギチギチ!
「おう……今度は君たちですか」
無感情な目がギロリと勇樹の方を向いた。
黒い影の正体は大型犬ほどの大きさもある甲虫ホーンビートルであった。
地面に刺さった自分の角を引き抜きながら、ホーンビートルは勇樹の方を振り向いた。
そしてゆっくりと体勢を沈めて、いつでも突撃できる姿勢に入る。
お互いに緊張した空気が流れる……と思いきや、ホーンビートルが体制を整えたのと同時に勇樹が突進した。
突然の勇樹の行動にホーンビートルは反応できずに固まっている隙に、勇樹は跳び箱の如く背中を飛び越え、ホーンビートルの背後に回った。
「もろたで! 往生せいや!」
下手な関西弁を叫びながらホーンビートルの背中、厳密には僅かに開いていた硬い鞘翅の隙間に槍を叩き込んだ。
硬い外殻に守られていた柔らかい腹を殴られたホーンビートルは、狂ったように暴れ出す。
振り回した角が周囲の木々を傷つけ、バタバタと土埃を上げて暴れ回り、勇樹を近づけまいと暴れ回る。
「まあ、こうなったら対処は簡単なんだけどね~」
勇樹はそう呟くと、振り回されている角を容易に掴んで見せた。
ホーンビートルの角は槍のように貫通力に特化した形をしている為、掴んで抑えてしまえば大した脅威にはならない。
とは言え、興奮した闘牛の角を掴んで抑えるような物で、しかも相手は痛覚を感じない昆虫なので普通はやろうと思っても出来ない。
ギシギシと音を立てながら勇樹に抵抗するホーンビートルであったが、腹に受けたダメージで次第に力が弱まり、最後はピクリとも動かなくなった。
「ふぅ……何とか外殻を傷つけずに確保できたかな」
動かなくなったホーンビートルを回収しながら、改めて周囲の気配を探る。
幸い、オークがいた所為か周囲に居たのはホーンビートル1匹だけだった。
緊張の糸を軽く緩めながら、両手を開ける為に抱えていた槍を持ち直す。
「それにしてもこっちから近づいたわけでもないのに、何で肉食でもないコレが攻撃してきたんだろう? 産卵期じゃないから卵を守ってた訳じゃないとすれば~」
――何かに追われて逃げてきた。
その結論に至った瞬間、頭上から黒い影が轟音と共に勇樹の背後に落下し、土埃を舞い上げた。
しかも今度は先ほどとは違い、圏外から勇樹がそれの気配を感じ取る間もなく降ってきたのである。
勇樹は意識よりも早く、自身の体が咄嗟にソレから離れようと動き出していた。
そしてその勘は当り、土埃の向こうから殺気と共に何かが数発、勇樹の頭があった空間を横切った。
勇樹は近くにあった大木の陰に身を寄せると、落ちて来た物を確認する為にゆっくりと向こう側を窺う。
そして、土煙が晴れた向こう側に居た物に目を見開いて驚いた。
「な! ご、ゴブリン!?」
そこに居たのは見紛う無きゴブリンであった。
小学生程の身長で鷲鼻とでっぷりと突き出た腹、そして膝下まである太い腕。
初心冒険者の登竜門的モンスターが、ただならぬ雰囲気を纏わせて佇んでいた。
「うむ、何やら闘争の気配に飛んで来て見れば……勇者ではなかったカ」
「ゴブリンが喋った!?」
見た目は普通のゴブリンの口から、流暢な人族の言葉が聞こえてきた事に勇樹は驚いた。
通常のモンスターに言葉を発するような構造はない。
故に人の言葉を話す事が出来るモンスターは極一部の知能の高いモンスターに限られている筈だった。
そんな勇樹の驚愕を余所に、ゴブリンはガッカリしたように肩を落とす。
「全く、魔王様に呼び出されてみれば勇者がこちらへやってくる気配が無ク、餌として変種を撒いてみれば掛かったのは人の子一匹のみトハ……」
件のゴブリンは小さく溜息を吐くと、気の陰に隠れた勇樹の方を見据えた。
「おい、そこの人の子ヨ。貴様の死は確定でアル。精々足掻いてオレを楽しませロ」
話し終えると同時にゴブリンのいた場所が爆ぜた。
と同時にゴブリンが地面とほぼ平行に勇樹の方へと砲弾の如く飛ぶ。
それを見た勇樹は慌てて転げるように大木の影を離れる。
その直後、ゴブリンが子供の胴程の腕を振り回して大木を圧し折り、突進の衝撃で粉々に粉砕する。
「!! コイツ、変種!?」
「その辺の雑種とオレを間違えないでいただこウ」
ゴブリンは冷静な声で呟くと、足元にあった岩を持ち上げて勇樹へと投げ付ける。
しかし勇樹も無様に背中を向けて逃げるつもりは毛頭なかった。
飛んできた岩をジャンプで軽々避け、近くの木を足蹴りすると木々の間をピンポン玉のように跳ね回り始めた。
「ほう、少しは動ける様だな「そりゃどうも!」……!?」
不意に後ろから声が聞こえ、ゴブリンは咄嗟に背後へ腕を振るった。
が、振るった腕は空を斬り、そこに勇樹の姿はなかった……と、何気に目線を上げた瞬間、目の前には勇樹の槍が迫っていた。
「てぇいや!」
「ぐふっ!?」
ゴブリンの脳天を殴りつけ、動きが止まった所で顎を狙って蹴り飛ばす。
幸い相手が怯んでいて体格差もあってか、ゴブリンは人形のように吹っ飛んで木に叩き付けられる。
ズルズルと落ちるのを木の幹に指を食いこませる事で留まり、空いた腕で口元を拭いながらニヤリと笑った。
「ほう、勇者でもないのになかなかやるではないカ」
「ハッ! 伊達にズタボロにされてないよ!」
「では、お返しダ!」
ゴブリンが再び砲弾のように飛び込んできた。
当然、力で劣る勇樹に真正面から受け止めるという選択肢はない。
かと言って受け流せるほどの技術も無い勇樹が取った行動は……膝の力を抜いて地面に倒れ込む事だった。
「秘技、土下座回避!」
「!?」
予想外の行動にゴブリンは全く反応できず……というよりも飛んでいる速度を緩める事が出来ずに明後日の方向へ飛んで行ってしまう。
草むらの向こうで様々な破砕音がした後、肩で息を切らせた泥塗れになったゴブリンが飛び出してきた。
「貴様、真面目に戦え!」
ゴブリンがそう言い放つと、勇樹はニヤリと口角を歪めた。
そしてゆっくりと槍を構え直すと、その雰囲気の変化にゴブリンも凶悪な笑みを浮かべて構えた。
「んじゃ、見せてやるよ。僕流の真面目な戦いって奴をな!」
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




