08話 少年、余計な事をする
(´・ω・`)なんか話の方向が定まらない……
近々、また更新を一旦止めるかもしれません……(予防線)
勇樹とドラグニールが衝撃的カミングアウトをぶちかましていた頃、冒険者協会に一人の冒険者が駆けこんできた。
そして彼の持ち込んだ物を見た協会の買い取り受付にいた職員は目を丸くした。
「こ、これはブレイドマンティスの翅……? いや、それにしては色が黒いし形状も……一体これをどこで?」
「お、俺たちはソイツに奇襲され全滅しかけたんだ。そこを別の冒険者に助けられて、コイツを協会に持って行くように言われて……ハッキリ言ってコレの主は今までのブレイドマンティスとは様子が全く違ったんだ……」
ぽつぽつと語る内容に、最初は怪訝な顔をしていた職員であったが次第に顔色を変えて奥へと引っ込んだ。
そして別の職員が静かに、しかし慌てて駆け寄ってくると顔を寄せて他の冒険者に聞かれないように、真剣な顔で小さく囁いた。
「ちょっと詳しい話を奥で聞かせてくれ。ひょっとしたら君たちのパーティを暫く拘束しなければならないかもしれない」
「え?」
「詳しくは奥で。ああ、それと仲間は外にいるのかな? 一緒に連れて来てくれると嬉しんだが……」
「い、いや、仲間はまだ目を覚ましてない……」
「分かった。ならこっちで運び込もう。兎に角、今は君だけでも」
物々しい雰囲気に気圧されながら職員に案内されるがままに、協会の奥へと連れて行かれた。
そして通されたのは上品な家具で纏められた、立っているだけで緊張しそうな部屋だった。
部屋に彼が入ると眼鏡を掛けた壮年の女性が待っていたように立ち上がった。
「貴方が黒いブレイドマンティスの翅を持ち込んだ冒険者ですね。どうぞそちらにお掛け下さい」
「は、はい……」
目まぐるしく変わってしまった状況に呆然としながら、勧められたソファーへと腰かけた。
沈み込むようなソファーのクッションに驚きながら彼が座った事を確認すると、女性は話を切り出した。
「それで、貴方がたのパーティが全滅したというのは本当の話なんですか?」
「あ、ああ……音の無く忍び寄られて気が付けば一人は真っ二つにされ、一人は串刺し。一緒に逃げようとしたもう一人は、途中で遭遇したグリードグリズリーに殴り殺されて……俺も食い殺されそうになった所で気絶しちまって、気が付いたら森の外に居たんだ。あんな入り口近くになんでDクラスのモンスターが居たんだよ……っ!」
「それは分かりません。しかし貴方の仲間は生きていたんですよね?」
「そうだ……まず助からない筈のダメージを受けた筈だったのに、俺が目覚めた時には怪我一つなかった。まあ、装備はボロボロのまんまだったけどな」
力なく笑う青年に女性は冷静な様子で質問を重ねる。
「それで、助かった時の状況は? 誰かに助けられたという話だけど」
「ああ、変な格好を奴だったけど冷静に考えて見りゃアイツが俺たちを助けてくれたんだよな……」
「その人の容姿は? 年齢とか人相とか、特徴になる様な物は覚えてないですか?」
女性の食い気味な質問攻めに驚きながら、必死に助かった時の事を思い出す。
しかし、直前まで死を覚悟して状況が把握できず混乱していた当時をハッキリとは覚えておらず、とりあえず思い出した事を断片的に口に出した。
「相手は男だった……と思います。兎に角、変な格好で顔を隠して体に何か模様を描いていたような……目が覚めた俺に変な薬を飲ませて、気が付いたら仲間が荷台に乗っていました……すみません。それぐらいしか思い出せません」
「その人物に心当たりは?」
「あったら直接礼を言ってますよ」
青年の話を聞いた女性は深く考え込んでいた。
「死人を蘇生させた? そんな秘術を見知らぬ冒険者に? でも、何の為に……いえ、それよりもそんな事よりそんな技能を持った人間がこの辺に居るっていうの……?」
「えーっと……?」
「……ああ、今日の話はここまでで構いません。明日は皆さんからも話を聞きたいので、今夜はこちらが用意した宿にお泊り下さい」
「わかった」
そうして青年を職員に案内させると、扉が閉まる音を合図に女性は深く溜息を吐いて崩れ落ちる様にソファーに深く座り込んだ。
「死んだ直後の人間を蘇生させた? そんなの勇者の時代の話みたいじゃない。魔法であれ薬であれ、そんなおとぎ話みたいな存在が欲の皮を張った貴族にばれたらどうなるか……ああ、何でこんな重大な案件を私に任せるのよ! あのハゲは!」
無駄に上品な家具で纏められた部屋――副ギルドマスターの部屋で壮年の女性――副ギルドマスターが眼鏡を外し長めな髪を振り乱し、ちゃらんぽらんなギルドマスターへの恨み言を叫びながらソファーの足を蹴った。
30回ほどソファーの足を蹴り飛ばした所で、肩で息をしながらゆっくりと息を整える。
そして眉間を抑えると、先ほどの青年から聞いた話を纏めた資料にチラリと目をやり大きく溜息を吐いた。
「はぁ……それはそれとして変種が出たって? しかも比較的浅い所にって……これは調査隊を編制する必要があるわね。とりあえずBランクの冒険者辺りに声を掛けて……」
早速、モンスターの調査を依頼する為に目ぼしい冒険者をリストアップと調査隊の計画を立てる。
こうして彼女は一人で自分の部屋で黙々と仕事に打ち込み、同世代とのコミュニケーションを逃す二十代であった。
そんな、ある馬鹿の安易な行動で冒険者協会内が密かに慌てていた頃、その馬鹿といえば……
「そう言えば今日、ここで調合したエリクサーの実験してみたんだけど、結構上手く行ったよ! とりあえず腹に開いた穴と真っ二つになった胴体がくっ付くのを確認できたよ。一応、一時間ほど経過観察したけど変な副作用も出なかったから成功って言っていいんじゃないかな」
「ほほう、もうそんな所まで行っておったか。なら、次は聖剣でも作ってみるといいじゃろう」
「え、聖剣って聖属性の魔法剣の事じゃないの?」
何気なく言ったドラグニールの言葉に勇樹は首を傾げた。
今まで勇樹は感性の赴くままに打った剣に光属性っぽい効果が出れば“聖剣”、闇っぽい効果が出れば“魔剣”と名付けていた。
しかし、勇樹の勘違いをドラグニールは首を振って両断した。
「そんなわけあるか。聖剣とは特殊な素材を幾つ使って打つ意思を持つ魔法剣の事じゃ」
「意思を持つ……え、意思を持つ道具ってこと?」
そこで勇樹は若干目を輝かせ始めた。
自分の意思を持って言葉を話す道具といえば、ファンタジー物に欠かせない物の一つである。
加えてゴーレム製作時に頭脳の代用として使えるのではないかという打算も含まれていた。
「残念ながらそんな物ではない。過去の勇者にはそんな物を持っておった者もいたが、現存する物は残ってない筈じゃ」
「なんだ~、ちょっと期待したのにがっかりだなぁ」
僅かな期待が外れて気が抜けた様に机に突っ伏す。
すると、自分の脇にアリサが立ったままある事に気が付いた。
アリサもフィーアもドラゴンのままであるドラグニールの腕を、目を白黒させながらみつめていた。
「あれ? 2人ともどうしたの?」
「そりゃそうじゃろう。こんなナイスでダンディな老人が実はドラゴンだと聞けば、驚くのは仕方なかろう」
「ははは、ナイスジョーク」
ドラゴンの腕のままおどけて見せるドラグニールを、勇樹は指を差して笑う。
しかし、アリサたちの方を見てみると顔が引き攣ったままピクリとも動かない。
その様子に勇樹も物知り顔で頷く。
「ああ、でも気持ちは分からなくもないか。僕だって初めて見た時には言葉を失ったもん」
「ハッ、嘘を吐くな。目の前で変身して見せた瞬間に目を輝かせておったではないか」
「あ、アレはほら、攻勢防御って奴だよ!」
「いや、意味が分からん」
意味不明な言い訳を展開する勇樹に首を振って無視すると、ドラグニールは2人に話し掛けた。
「まあ、色々と気になる事はあるやも知れんが、こいつは見たまんまの奴じゃからあまり気にせん方が良いぞ。寧ろこっちからしても割と愉快な奴じゃ」
「は、はあ」
「酷いよ!? 赤爺や師匠たちに比べたら僕なんて可愛いもんじゃないか!」
「どこがじゃ! 早々に彼奴らに馴染みおって、そもそもあそこへは安静にする為に連れていったというに、彼奴らに我先にと師事されると聞いた時には頭が痛くなったわ!」
「だってアレは赤爺が師匠に何でもやらせろって言ったからじゃないか!」
「普通なら彼奴らも興味のない奴には適当になるから、それでも構わんと思ってたんじゃよ! 普段はひきこもっとる癖に、変な行動力を起こすな!」
「何を~!」
「なんじゃ~!」
次第にお互いの頬を引っ張り合い、間抜けな争いを始めた2人にアリサは溜息を吐いて2人の頭を掴んで引き離した。
「はいはい、よくは分かりませんが分かりましたよ。とりあえず、今から夕食の支度を始めるから野菜剥くのを手伝ってね」
「はーい」
「え、ワシもか?」
きょとんとした顔で自分を指すドラグニールに、アリサはニコッと笑い掛け。
「『働かざる者食うべからず』って勇者の言葉、知ってます?」
「はっはっはっ、ドラゴンを扱き使おうとは末恐ろしい娘じゃのう! 良かろう、茶と菓子の礼じゃ。手伝うとするか」
アリサの答えがツボに入ったのか、ドラグニールは大笑いしながらキッチンへと向かった。
その後、ドラグニールは夕食までしっかり食べて行き、帰り際にはフィーアからお土産まで貰って帰って行った。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




