表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
4章 少年、鬼を見る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/130

04話 少年、主人が奴隷になる

(´・ω・`)見切り発車過ぎて迷走中……(愚痴)

 ゴーレム作りに初っ端から躓いた勇樹は、情報共有も兼ねてノームの里へ連絡を取っていた。

 勇樹のゴーレム作りに関して鍛冶の師匠であるジェイドは門外漢である為、専らノームの里のゴーレムを管理している使い魔の作成などを専門にしている魔法技師のアレキサが相手である。


「という訳で、魔法核からの人工知能作りは現状スライムしかモデルがいないみたいっす。ただそれだと赤ん坊みたいに体の動作から学習させないといけないから時間が掛かると思うよ」


『なるほどネー。ソレについてはこっちでも色々試作してみるから、ユーキには一つ課題を出すアルヨ』


「課題?」


『恐らく人工知能とやらが出来たとしてもテイムされたモンスターと違って、いきなり命令を実行させるのは多分無理ネ。なので、その辺の命令系統を学ぶ為に“―――”の作成するネ。図面は後で送っておくヨ』


「え、はい。了解しました」


 突然言い渡された課題内容に驚きつつ、勇樹は頷いた。

 話が終わった後に受け取った図面を片手に、再び工房に引き篭もった勇樹にアリサはまたかと呆れ、フィーアは何も言わずに仕事へ戻った。

 後にアリサは、この時の勇樹の行動を気に掛けていればややっこしい事態にはならなかったと後悔したという……



 事件は3日後の昼に起きた。

 勇樹はアレキサから出された課題の物が出来たので、それの動作テストを一人ではできないので屋敷にいる誰かに手伝って貰おうと工房から出てきた。

 この時、アリサはフィーアに頼まれて夕食の買い物へ出ていた為に不在で、フィーアはキッチンにて昼食の準備をしているところだった。

 実験が出来れば誰でも良かった勇樹は、料理中のフィーアに話し掛けた。


「フィーア、ちょっといい?」


「は、はい。何でしょう?」


 突然、背後から話し掛けられたフィーアは慌てて手を止めて、勇樹の方を振り返る。

 首に見覚えのないチョーカーというのは些か頑丈過ぎる首輪を着けた勇樹が立っていた。


「ちょっと、ここに血を垂らしてくれない? これ、針と塗り薬ね」


「え、血ですか?」


 勇樹の突然の要望にフィーアは戸惑いながら針と薬瓶を受け取ると、受け取った物と勇樹の顔を見比べた。


「たった今作ったばかりのマジックアイテムの動作チェックしたいんだけど、自分の血じゃ動かせないんだよ。一滴だけここに付ける程度でいいから、ちょっとお願い」


「わ、わかりました」


 渡された針で指先を指すと、赤い水玉がプクリと膨れ上がる。

 そしてそれを、勇樹の首にある首輪のプレートに付けた。

 すると血がプレートに刻まれた溝へと吸い込まれ、薄らと魔力光を放つ。


「……うん、正常に起動はしたみたいだね。じゃあ、次は僕にコップを持ち上げるように言ってみてくれない?」


「はい、ユーキ様。コップを持っていただけますか?」


「ヤダ」


 勇樹が拒否した瞬間、首輪に文字が浮かび上がりギシギシと音を立てはじめ、勇樹は苦悶の表情を浮かべた。

 予想外の出来事にフィーアは驚いて慌てふためいた。

 時間にして3秒ほど経ってから、勇樹は深く息を吐いて屈み込んだ。


「ユーキ様、だ、大丈夫ですか?」


「うん、へーきへーき。動作チェックは無事終了っと、とりあえず『従属の首輪』のチェック項目その3、クリアっと」


「じゅ、従属!?」


 物々しい名前のマジックアイテムに、思わずフィーアは勇樹から離れるように一歩下がった。


「これから作るゴーレムの命令系統について調べるのに作ってみたんだよ。一応、主人と設定した相手の命令を強制して、反抗すると全身に苦痛を与えるようになってるんだよ。背けば背くほど強くなる設定になってるけど、まだ試験段階だから機能はそれだけ。反逆防止機能とかはこれから付けるつもりなんだけど……あれ?」


 首輪に手を掛けた勇樹は数回ガチャガチャと弄った後、そのまま固まった。


「どうかしましたか?」


「うん……なんか取れない」


「ええ!?」


 大変な事になってフィーアは慌てている脇で、勇樹は冷静にボソリと呟いた。


「そうか……試験用で簡単に外せる仕掛けを施した方じゃなくて、後でその辺のモンスターをとっ捕まえて実験しようと思っていた方を付けちゃったみたい……てへっ♪」


「『てへっ』じゃありませんよ! それは外せないんですか!?」


「う~ん、外せない事は無いんだけど、こっちはロックの試験も兼ねてたからガチガチに封印を掛けちゃってて、師匠にでも頼んで外して貰うしかないね」


「じゃあ、早く外して貰わないと……わたし、ユーキ様にとんでもない事を……」


 奴隷に主への命令権があるなど前代未聞である。

 その上、エルクレア王国には『奴隷は所有者に危害を与えてはならない』という法律が明記されている。

 もしこの事がバレれば極刑は免れないかもしれないと思い至った所で、フィーアの顔から血の気が引いた。

 そんなフィーアの思いもどこ吹く風で、勇樹は暢気に頭を掻いた。


「ただ、師匠の所へは僕一人じゃ行けないからなぁ。赤爺が捕まればいいけど、捕まらなかったら僕も腕がこんなだし、まず無理かな」


「そんな無理って……そのお師匠様という方に来て頂く事は出来ないんですか?」


「いや、それは駄目、絶対に駄目。僕じゃあの場所の封印は解けないし、そんな事したら世界が滅んじゃう」


「そんな、滅びるって……」


 こんな時に性質の悪い冗談をと声を荒げそうになったが、勇樹の割と真剣な表情に思わず言葉を飲み込んだ。

 しかし、次に勇樹から出た言葉はフィーアの思いとは正反対の言葉だった。


「まあ、暫くこのままでもいいかな。付けてても邪魔になる物じゃないし」


「じゃ、邪魔になるとか、そう言う問題じゃないです!」


「でも、外れないんじゃしょうがないじゃん? 腕がくっ付くまでの辛抱だよ。それまでフィーアが僕のご主人様って事でよろしく!」


「え、ええ? えええ!?」


 勇樹の無責任発言にフィーアは目を白黒させる。

 自分にその気はないとはいえ、奴隷に命令権を渡して平然としている勇樹に驚いた。

 ちなみに、フィーアの首筋には契約魔法によって刻まれた奴隷紋があり、本来であれば主人からの命令を無視したり、反抗的な態度を取ると電撃が流れる仕組みになっている……筈なのだが、今回の件は特殊過ぎた為に奴隷紋は反応しなかった。


「そんな困ります! また何かの弾みでユーキ様に危害を加えてしまうかと思うと気が気じゃありません!」


「ただいま~って、何騒いでんの?」


「聞いてください、アリサ様!」


「あ、ちょっと待って!?」


 勇樹の抵抗も虚しく、今起こったありのままをアリサに話されてしまった。

 最初こそ怪訝そうだったアリサの表情も、フィーアの話が進むにつれて眉間に皺が寄り、話し終えた時には眉が吊り上っていた。


「ユーキ君! 君は何て事をしてるのよ!」


「待って! ワケを、ワケを話させてください!」


 アリサの雷から逃げるようにフィーアの陰に隠れながら弁解した。

 課題を出された事とそれの動作テストの為に誰かが首輪を着けなければならなかった事、そして万が一の事も考えてフィーアには着けられなかった事を話した所でアリサは頭を抱えた。


「ユーキ君の言い分はわかったわ。でも、そう言う実験は自分の安全を確かめてからにしなさいよ」


「いやね。試作品は並行していくつか作ってて、僕が着けるのは『命令無視に対してのペナルティ』を確かめるだけの物だったはずなんだよ。ちょっとそれを動物実験用の奴と取り違えちゃっただけで……」


「とにかく! それはどうにも外せないワケ? ユーキ君が持ってる剣とかで切っちゃえないの?」


「モンスター用に牙や爪で引き千切られたりしないように頑丈に作ったんで、首輪を切る前に首を切った方が早いです。はい」


「そう言う洒落にならない事は良いの! はぁ……抜けてるとは思ってたけど、まさか自分の奴隷の奴隷なるなんて思わなかったわ」


「ある意味対等になったよね!」


「「はぁ……」」


 アリサたちが思わず吐いた溜息がシンクロする。

 結局、この件についてはどうする事も出来ないので保留となった。

 しかし、この首輪はつい寝食を忘れて工房に引き篭もってしまう勇樹に、フィーアが呼びかけるのに割と活躍する事になるのであった。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ