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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
3章 少年、家を買う

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16話 少年、シスターが押しかける

(´・ω・`)今日、2月14日は“煮干し”と“ふんどし”の日です。

みなさん、ふんどしを巻いて煮干しを食べましょう!

 通常であれば1ヶ月以上は戦闘が続きそうな大規模のモンスターによる進行にしては珍しく、エルクレアに押し寄せたモンスターの進行は3日程度で収束した。

 但しこれは押し寄せるモンスターと交戦していた期間のみの話で、千体以上のモンスターの戦後処理には元の状態に戻るまで、最低でも半年は掛かると予想された。

 何せ国の正門前にモンスターの死骸が山と積み上がっていて、現状でも交通を阻害していて、これが腐ってくれば悪臭を放ち公害となる。

 更に戦闘で街道の土は抉れ、撃ち漏らしたモンスターが突撃した事で街壁も一部が破損していた。

 結果、働ける者を総動員して道を塞いでいるモンスターの死骸の解体作業に当たっていた。


 そんな中で、作業をする者たちの間に一つの噂が出回っていた。

 それは「忽然と消えた巨竜」の噂であった。


「なあ、お前知ってるか? あの話」


「ああ、デカいドラゴンが忽然と消えたって話だろ?」


「何でもあの時戦ってた冒険者や騎士は殆ど見たって話だぜ?」


「マジかよ……じゃあ、今もこの近くに潜んでんのか?」


「いや、山ほどもデカかったって話だから、早々隠れる場所なんてねぇだろ……」


 多くの冒険者や騎士から目撃情報があったにも拘らず、山ほどの巨体が忽然と姿を消したので、何かの前触れではないかと特にランクの低い冒険者たちは戦々恐々としていた。



 冒険者協会でも戦闘後の処理と巨竜の目撃情報が続々と押し寄せられて、てんやわんやしていた。

 そんな中、腕の件で謹慎を言い渡されて午前中一杯は家でゴロゴロしていたがすぐに飽きて、暇を持て余して孤児院へ遊びに行ったがアリサに見つかり逃げ出してきた勇樹が、ふらりとやって来ていつもの受付カウンターに座り、突っ伏しながら騒がしい協会内を観察していた。

 討伐部位を片手に報酬の値上げを交渉している冒険者や、依頼の発注が殺到して処理に追われている職員に、肩がぶつかっただの足を踏んだだので言い争いを始めるチンピラ共など、見ている分には見飽きない程に様々な人間が行き交っている。


「というか、こんな時でも暇そうにしているオッチャンはどこ行ったんだろう? ひょっとしてアレか? 今日はサボって出勤してないのかな?」


「おい、随分と失礼な事を呟いてるじゃねぇか。こちらこの5日間は徹夜だったってのによ」


 頭の上から聞こえた声に顔を上げると、そこには目の下に隈を作って不機嫌を隠しもせずに勇樹を見下ろしているアーノルドが立っていた。

 それを見た勇樹は興味を失って再びカウンターに突っ伏した。


「おい、何だその態度は」


「オッチャンが徹夜で仕事? 嘘でしょ」


「嘘じゃねぇよ。流石に皆が忙しなく動いてるのに、脇で傍観決め込んでいられるほど無能を気取ったつもりはねぇよ」


「え~、オッチャンならやりそう」


「失礼だなおい!?」


 寧ろ普段、隣の若い女性職員が大変そうに対応に追われている脇で暇そうに鼻クソを穿っているような姿を見ているからとは、勇樹は武士の情けで口には出さなかった。

 勇樹の視線を受けて自分でも思い当たる節があったのが、アーノルドはさり気無く目を逸らしていつもの席に座った。


「で、一体ここに何の用だ? 見ての通り今はてんやわんやしててテメェと駄弁ってる暇はねぇぞ」


「の割には座り込んでるよね? 別に僕は良いけど。それよりちょっと聞きたいんだけど、こんなゴタゴタしてて依頼ノルマってどうなるの?」


「いいんだよ、今は休憩中だ。冒険者はランク関係なく全員、外の片付け依頼を熟すのがノルマだ。せめて今週中にも街道だけでも通れるようにしとかないと流通が止まって大変だからな」


 ジト目で睨む勇樹の視線を涼しい顔で受け流しながら、脇に置いてあった水差しから水を注いでコップを傾けた。

 勇樹もこれ以上追及した所で何の得にもならない話題なので、すぐに切り替えて前々から疑問に思っていた事をぶつけてみた。


「そういえばさぁ、ここの代表者って“ギルドマスター”って呼ばれてるんだよね?」


「あ? ああ、そうだが……それがどうした?」


 突然、明らかに挙動不審になったアーノルドの態度には気にも留めず、眉を寄せてポツリと呟いた。


「冒険者“協会”なのに、何で代表は“ギルド”マスターなの?」


「な、なに?」


「だってそうでしょ? ここでのギルドの定義は“1つの冒険者パーティを中心とした複数のパーティからなる集団”って聞いたよ。なら何で協会のトップがギルドマスターな訳?」


「ああ……そう言う事か」


 肩透かしを食らったように溜息を吐くアーノルドの様子に、勇樹は首を傾げた。

 アーノルドは面倒臭そうに頭を掻いて溜息を吐くと、紙とペンを取り出した。


「あー、そもそもだな。『冒険者協会』ってのは、全国の一定の人口を満たした町にならどこにでもある国の運営から離れた独自の組織で、個々の協会は冒険者協会っていうギルドが所属する国に雇われている状態なんだよ。だから、冒険者協会ってのは言いてみれば巨大なバックアップ専門のギルドみたいなもんだな」


「なるほど、だから代表はギルマスになる訳なのか」


「そう言う事だ。だから、職員には元冒険者だった奴が多いし、ギルドマスターには高ランクの冒険者がなるのが決まりなんだぞ」


「へ~、じゃあ、ここのギルマスってどんな人? オッチャン知ってる?」


 勇樹の質問にアーノルドは僅かな時間だけ考え込むと咳払いを一つした。


「あ~、ここのギルマスはスゲェ優秀な人でな。冒険者ランクは何と『A』、ドラゴン殺しなんかも成し遂げた英雄だぞ」


「へぇ、結構凄い人なんだね」


「フッ、それ程でもあるがな」


「……何でオッチャンが得意げな訳?」


 したり顔をして頷いているアーノルドに、勇樹は苦笑いしながら徐に立ち上がった。


「さてと、じゃあそろそろ帰るね。本当は家で大人しくしてなきゃいけないのを抜け出してきちゃっただけだし」


「あ? なんかあったのか?」


 アーノルドの問いに勇樹は左腕のギプスを見せる。

 するとアーノルドは今気付いたように目を見開いて驚いた。


「おいおい、何だよそれ。随分と重症じゃねぇか」


「あーうん、ちょっと刃物でバッサリ切っちゃってね。治るまで腕が動かせないんだ」


 勇樹の言葉に痛そうに顔を顰めると、追い払うように手を払った。


「んじゃあ怪我人がこんなとこ来んなよ。俺だって忙しいんだから、さっさと帰れシッシッ」


「仮にも知り合いにする態度じゃないよそれ!?」


 あんまりなアーノルドの態度に、勇樹は思わずツッコんだ。

 そして、十分に暇を潰した勇樹は自分の屋敷へと帰って行った。



「ただいま~……あわ!?」


「ユーキ様! 今までどこに行っていたんですか? 昨日あれだけアリサ様から出かけないように言われていたじゃないですか」


「あわわ……」


 家に帰ると、フィーアが仁王立ちで玄関に立っていた。

 勇樹は悪戯が見つかった子供の如く動揺する。


「ほら、怪我だってまだ全然治っていないんですから、部屋で大人しくしていてください!」


「で、でもさ~。ただ部屋でゴロゴロするだけって結構退屈で……」


「それは怪我人なんですから当然です!」


 アリサという気の合う友人を得た所為なのか、いつの間にかフィーアも明るく振舞うようになっていた。

 引き換えにアリサに色々と吹き込まれたのか、フィーアの勇樹への扱いが若干荒くなったというか、まるで出来の悪い弟の面倒を見るかのような扱いに変わっていた。

 勇樹としては祖父が余り面倒を見るような性格ではなかったので、ぞんざいに扱われる事には慣れているので異論はないが、生来の一人っ子である勇樹はむず痒さを感じていた。


 何とも言えない微妙な表情を浮かべて渋る勇樹の態度に、業を煮やしたフィーアは強引に手を掴んで最近完成した勇樹の部屋へと引っ張って行った。

 そして強引に部屋に押し込んでドアを閉めた。


「それじゃあ、わたしはお夕食の準備をしてきますから、ユーキ様は安静にしていてくださいね!」


「……は~い」


 勇樹はドアに耳を当ててフィーアの足音が遠ざかるのを確認すると、退屈そうにベッドに座り込んだ。


「ハァ……こうなるんだったらあの時エリクサーなんか使うんじゃなかった……」


 勇樹は腰に巻いたポーチを撫でながら溜息を吐いた。

 あの時は殆ど意識が朦朧としていて、「とにかく回復薬を飲もう」という漠然とした思考の中でたまたま適当に掴んだ物がエリクサーだったのだ。

 勇樹のポーチの中には他にも薬品が10種以上は入っていたので、偶々一本だけ入れていたそれに当たったのは運が良かったのか悪かった微妙な所である。


「僕が調合させられた粗悪品が残り3本……これ使ったら腕くっ付くかなぁ」


 勇樹はベッドに倒れ込むと、そのままズブズブと思考の海に意識を沈めて行く。

 瞼が落ちかけた瞬間、部屋のドアがノックされた。


「は、はい! どうしたの?」


「ユーキ君。今、大丈夫?」


 ノックに返事を返すと、ドアの向こうから聞こえたのはフィーアではなくアリサの声だった。

 驚いた勇樹はベッドから飛び降りて、ドアを開けるとそこには目を赤く腫らしたアリサが立っていた。


「えーっと、アリサさんどうしたの? とりあえず談話室にでも……」


「ユーキ君!」


「は、はい!」


 切羽詰まった様なアリサの声に、思わず姿勢を正す勇樹。

 アリサは顔を俯かせてしまい、表情を覗く事は出来なかったが方が小刻みに震え小さな嗚咽が聞こえてきた。

 そしてアリサは小さく呟いた。


「今日、ここに泊めて」


「……はい?」


 アリサの突然の申し出に、勇樹は意味が分からず首を傾げたのだった。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。


(´・ω・`)ここで3章は終了させていただきます。

 また幕間に数話を挿んでから、次章はストックが溜まり次第、投稿するつもりなので開始日は未定です。


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