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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
3章 少年、家を買う

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13話 少年、蜥蜴に倣う

(´・ω・`)その昔、ロボットアニメで『自分の体を小さくして、敵の体に侵入して元の大きさに戻り、敵を破裂させる』という必殺技がありました。

 よく考えなくてもエグイ技ですよね。

 屑魔石が大樽20杯分、魔獣樹15本、ミスリルなどの魔法鉱石十数kgなど……無駄にした素材を頭で数え、ボヤキながら腰のポーチから二振りの魔剣を取り出した。

 鞘から抜くように鞄から取り出された剣たちは、表に出た瞬間に内包する魔力を強風と共に撒き散らした。

 ただ握っているだけで暴れ出しそうな作品(わがこ)を強引に押さえつけながら、ワクワクした笑顔を浮かべて勇樹は走り出した。


「作戦第二弾『ScrapBlade(屑刃の) Dance(乱舞)』!」


 技名の如く作戦名を叫ぶと同時に、両手に持った魔剣を厳山竜へと投擲した。

 それは日本にいた頃にやっていたゲームの主人公の姿を模して、ノームの里に居た頃に作った最高の失敗作(・・・)たちを弾として撃ち出すという、この世界の人間が目撃したら卒倒しそうな攻撃だった。


「持ち主まで焼く炎の魔剣に軽く振っただけで竜巻を量産する魔剣! 一振りで持ち主の全魔力を吸い取る魔剣に狂戦士の魔剣になり損ねた鉄板だ!!」


 ポーチから次々と禍々しいオーラを放つ魔剣を取り出しては、投げナイフのように投擲して行く。

 勇樹の豪腕によって投げられた剣は弾丸の如く一直線に飛んで行き、厳山竜に着弾――した衝撃で不安定だった魔力が暴発を起こし、器である剣が破裂して暴風や爆炎を撒き散らす。


 ――ギュオォォォ!? グオォォォン!?


 魔剣の魔力が暴発する度に厳山竜の魔力障壁に綻びが生まれ、爆発の衝撃が貫通して厳山竜に襲い掛かる。

 しかし、そんな金塊を次々と投げ捨てる様な攻撃を以てしても、厳山竜へのダメージはそこまで大きなものではなかった……が、そこで漸く厳山竜は勇樹を敵と認識した。

 すぐに回復できるダメージとは言え、何度も行動を妨害されても無視できるほど勇樹の存在は小さい物では無かった。


 ――グオォォォン!!


 小さな敵を見つけた厳山竜は威嚇するように口を大きく広げて勇樹に向かって咆えた。

 ただそれだけで突風が巻き起こり、周囲にあった草や石は容易に吹き飛ばされて、勇樹に叩き付けられる。

 勇樹は取り出していた槍を地面に突き刺して、飛ばされないように必死に耐える。

 だが、厳山竜の攻撃はまだ始まってすらいなかった。


「ゲホッ、息がくっさぁ~……って、まずっ!?」


 厳山竜が大きく息を吸い込んだのを見て、次の行動が容易に予測できた勇樹は蒼い顔をしながら走り出した。

 勇樹が走り出したのに少し遅れて、厳山竜は大きく開いた口から【息吹(ブレス)】を吐いた。

 【息吹(ブレス)】と言ってもドラゴンが行うような魔力を伴う物ではなく、純粋で圧倒的な肺活量と固形唾液を混ぜただけの偽物ではあったが、受ける側としてはそんな事は大した差ではなかった。


 暴風に混じった特大の雹の様な固形唾液が機関銃のように降り頻り地面を抉る。

 しかし、1秒でも立っているだけで蜂の巣になりそうな嵐の中に、勇樹の姿はなかった。

 咄嗟に【竜咆(ドラゴ・ブレス)】を地面に向けて、反動で高く跳び上がった勇樹は、1本の剣を構える。


「その大きく開けた口に~……シューット!」


 【息吹(ブレス)】を吐き終わって半開きになっていた厳山竜の口の中へ、魔剣を投げつける。

 そして当然、他の魔剣同様に内包した魔力が暴発して大爆発を起こす。

 硬い外装も何もない厳山竜の口内を、爆炎が容赦なく焼き付ける。


 ――グオォォォン!?


 口の中にダメージを受けた厳山竜は、口から黒煙を吐きながら足元に居る勇樹をギロリと睨み付けた。


「ハッ! 漸く目が合ったね。ほら、追加のプレゼントだ!」


 憎悪の篭った目と視線が交わり、睨まれた勇樹はニヤリと笑って魔剣を投げつけた。

 しかし、既に修復された障壁に当たって爆発し、反撃に出ようと厳山竜が口を開いた瞬間、爆炎の中から2本目の魔剣が飛び出して厳山竜の目を貫いて吹き飛ばした。


 予想外の奇襲と痛みに厳山竜は激しく首を振り回す。

 吹き飛ばされた傷口からは血が滝のように流れ出して、周囲に外装の破片と共に赤い血を撒き散らしている。


 ――グオォォォ!!?


 爆破によって吹き飛ばされた剣の切っ先が眼球に深く突き刺さり、爆炎が目の表面を焼き焦がす。

 片目を潰され、怒り狂った厳山竜は大きく咆え、咆哮は衝撃波となって遠方にいたモンスターたちを吹き飛ばした。

 咆哮の余波で勇樹は木の葉の様に吹き飛ばされた。


「ぬあ~、させるか~!」


 上下前後左右にグルグルと飛ばされながら何とか体勢を立て直して、思いっきり息を吸い込む。


「ちょこっと【竜咆(ドラゴ・ブレス)】!」


 スラスターの様に、細く長く吐いたブレスの反動を利用して飛ばされる勢いを打ち消し、その勢いで厳山竜の頭上まで飛んで行く。

 何とか頭の上に着地すると、勇樹はいつもの槍を取り出して逆手で振り上げると、頭に向かって思いっきり突き刺した。

 槍からは岩に突き刺したかのような感触が伝い、切っ先が埋まった辺りで止まってしまう。


 ――グオォォォ


 巨大怪獣の様な相手に、たった十数cmの槍の切っ先が突き刺さった所でダメージになる筈も無く、厳山竜は頭上の勇樹を振り落さんと激しく頭を振り回す。

 だが、槍は多少頭を振り回した程度では抜けないほどに突き刺さり、揺れる頭上でしっかりと勇樹を支えている。


「フッ、そう簡単に振り落せると思うなよ!」


 そう得意げに踏ん張りながら、時折ブレスで目に付いた場所を攻撃してみるが、大きさに人と蚊よりも差がある為、硬い岩盤の様な表皮がボロボロと崩れ落ちるだけで大したダメージにすらなっていなかった。

 そして、悪い事は突然にやってくる。


 槍という支えがあったので余裕を持っていた勇樹であったが、ピシリピシリという音が周囲から聞こえて来る事に気が付く。

 最初は攻撃を加えているお陰でダメージを受けているのだと思っていたが、違うと気付いた時には……槍が突き刺さった部分ごと頭上から滑り落ちていた。


「……へ?」


 重力に逆らわずに落ちて行くさまが、勇樹にはスロー再生の様にゆっくりと流れて行く。

 勇樹の乗った岩盤が目の脇を通り過ぎた頃、ゆっくりと厳山竜は勇樹に向かって徐に口を開けた。

 そして大口を開けた顔が迫って来るのを見て、咄嗟に足に力を入れて飛び退った。

 直後、巨大な顎がバキバキと勇樹の乗っていた岩盤を噛み砕いた。


「うわぁ、音が嫌になるくらいリアル……」


 一歩遅ければ自分も同じ様に噛み砕かれていたかも知れなかったと、磨り潰される想像した勇樹は顔を青くする。

 厳山竜の表皮は、硬い岩盤のような皮が層になっていて、直接攻撃を受ける時に一番上の表皮を剥がす事でダメージを軽減する役割を持っている。

 加えて、攻撃の届かない背中などに乗られた時には雪崩を起こして押し流す武器でもあった。


 頭から振り落とされた勇樹は、若干蒼い顔をしながら猫のように地上に着地すると決めての無さに頭を抱えた。


「本気でどうしよう、ここまでデカいとマジでやる事ない。剣も槍も通じないし、結構自信あった大砲だって微々たるダメージで、ブレスも通じてないみたいだし……」


 ただ巨大で硬いというのがここまで厄介なのかと、頭の中で頭を抱えた。

 その上、厳山竜が動くだけで勇樹には即死級の攻撃になり得るので効果がありそうな物は使う隙がない。

 それも出来るだけ効果が出るように防御の薄い所を狙って使うとなるとさらに難易度が上がる。


「本気でどうしよう……マジで決め手がないや……わっと!?」


 怒りに震える厳山竜が体を揺すって、岩盤のような表皮がボロボロと剥がれて飛ばしてくる。

 飛んできた顔よりも大きな破片を避けつつ、細かい破片は槍を振り回して叩き落とすと、マンガやゲームなどに出てくる銃弾を弾くような音が聞こえてきて勇樹は密かに感動を覚えた。

 が、次の瞬間……


「うがっ!?」


 破片に紛れて白い影が、大きな破片を避けた直後の勇樹の左腕を貫き地面に縫い止めた。

 畳み掛ける様に拳大の破片が勇樹の頭を直撃して、勇樹はその場に崩れ落ちた。


「っつ、一体何が……はぁ!?」


 痛む頭を抑えながら自分に左手を見て勇樹は目を見開いた。

 そこには3m程の長さの乳白色の槍のような物が、自分の一の腕を貫き地面まで深く突き刺さっている。

 そしてその乳白色を塗り潰す赤を見た瞬間、腕から熱さが襲い掛かってきた。


「あ……あぁ、ア゛ァァァーーー!!」


 熱さは次第に激痛に変わり、思わずその場にのた打ち回りたくなる。

 反射的に腕を動かそうとするが、槍の表面は細かい棘が生えていて、それが返しとなって動くたびに傷口がさらに傷つけられる。


「……っぐ!? 」


 ――グオォォォン


 勇樹を貫いている槍の正体は、厳山竜の固形唾液を固めて作った針であった。

 厳山竜は勝ち誇ったように咆えると、再び勇樹に向かって口を半開きにする。

 一方、勇樹は腕を貫かれた痛みで真面に動く事すらできず、空を見上げる事しかできない。

 勝利を確信した厳山竜は徐に口を開き、固形唾液を口の脇にある噴射口に溜めながら、自分の周りを跳び回っていた小虫を見据えて、固形唾液針を飛ばした。

 串刺しにするつもりで中心を狙って放たれた針は……空を切って地面に突き刺さった。


「はあぁぁぁ!!」


 針が迫った瞬間、立つ事すら出来ない筈の勇樹がその場にしゃがみ込むと足に一気に力を篭めて跳び上がった。

 爆発が起きたように地面を弾き飛ばしながら、勇樹は厳山竜の顔よりも高く跳んだ。

 何故、動けない筈の勇樹が動けたのか、それは残された固形唾液針にあった。

 腕を縫い止めている槍は返しがあり引き抜く事は出来ず、硬くて折る事も出来ない勇樹が取った方法は……肘から先を切断する事だった。

 幸い、刃物には困らず適当にポーチに手を突っ込んで、引き抜いた得物で自分の腕を斬ったのだ。


 どんな生物にも脆い部分がある、それは『体の中』。

 高く跳び上がった勇樹は深く深呼吸をすると、突き出した槍を軸に空中で回転し始め、徐々に回転スピードを上げて行く。

 ギュルンギュルンと風切音を出しながら、ゆっくりと厳山竜を目掛けて落下して行き……突然、ミサイルのように加速して厳山竜の顔、正確には口の中へと突撃した。


「『螺旋(スパイラル)突撃波(ドリルインパクト)』!!」


 後ろから魔力を噴射して推進力を得た勇樹は、物凄い速度で回転しながら厳山竜の体内を削岩機(ドリル)の様に進んで行く。

 口から侵入して、首を通って色々な物を巻き込みながら胴を通過し、最後の出口は……


「フィニィィィシュッ!!」


 高らかな宣言と共に、尾の付け根(・・・・・)から飛び出して、クルリと体を反転させると地面に着地した。

 一直線に穴が開き、体内の内臓などはボロボロなり普通なら死んでいてもおかしくないダメージでも尚、動こうとする厳山竜に対して勇樹は深く息を吸い込んだ。

 空気中の魔力を吸い込み、胸の心臓で取り込んで魔力を練ると大きく口を開けた。


「【竜咆(ドラゴ・ブレス)】!!」


 勇樹の顔の前に何重もの魔法陣が展開されて、渾身の力を篭めた竜の息吹が放たれた。

 ブレスは尾の付け根(・・・・・)に開いた穴に入り込み、先ほどとは逆方向から厳山竜の体内を焼き尽くす。

 そして、まるで厳山竜がブレスを吐いたかのように口から光線が飛び出した頃に、漸く厳山竜は沈黙した。


 厳山竜の沈黙を見届けると、その場で勇樹は意識を失った。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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