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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
3章 少年、家を買う

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06話 少年、家を掃除する

(´・ω・`)何故だろう……

ヒロインを登場させない場面の方が捗る気がする……

 一先ず、勇樹の部屋の事は後回しにして、フィーアの処遇について話す事にした。


「仕事は大体朝の8時から夜9時まで、内容は『屋敷内の掃除と炊事と洗濯』。お給金は銀貨3枚くらいでいいかな? ああ、身の回りの物や必要な物は別途で出すから気にしないで。それと僕は大体工房に引き篭もってるから何かあったらそっちに来てもいいけど、危ないから用が無い時は近寄らない様に、場所は後で案内するよ。部屋はとりあえずここだけど気に入らなかったら別の部屋を用意するから言ってね。業務時間内は基本仕事をして貰うけど、手が空いたら屋敷内なら自由に好きな事していて良いよ。ただトイレは今のところ一つしかないから共有なのは我慢してね。お風呂は基本夜だけど、僕も実験とか冒険者業で汚れる事が多いからほぼ毎日入れておいてね。一応、水回りにタイルは汚れに付きにくい物にしてあるから軽く流すだけで綺麗になるけど、今度自浄効果のある物と変えて置くよ。それから僕は不規則な生活をしてるから僕に合わせて起きて無くて良いよ。というか君が規則正しい生活をしていてくれた方が、僕が分かり易いからキチンと夜は寝る事。注意事項としては僕の作った物には基本的に危険だから許可するまでは触らないでね。触って死んじゃうような物はないけど、腕が斬り落ちたり変な所に飛ばされたりする場合があるから不用意に触ると危ないからね。それから……」


「あ、あのう、もうその辺で……」


 先ほどの経験から話が長くなると感じたフィーアは、勇樹が言いよどんだ隙を狙って話を中断させた。

 加えて勇樹が話の中に、いくつかフィーアには聞き捨てならない事柄があった。


「ユーキ様? 仕事は朝8時から夜9時までとおっしゃられていましたが、それは一体どういう意味ですか?」


「うん? だから、朝ご飯作って夕飯を片付けるまでの時間って意味で言ったんだけど……やっぱり長すぎる? でも、5時までじゃあ御夕飯にはちょっと早いかなぁって」


「そうじゃなくて、なんで奴隷の仕事に時間が出て来るんですか? それにお給金ってどういう意味でしょうか?」


「どういう意味ってそのままの意味で……あれ?」


 言いたい事が伝わっていない事に気付き、勇樹は首を傾げた。

 そもそも、勇樹はフィーアの事を住み込みのお手伝いさん程度にしか思っていなかった。

 勇樹の家ではなかったが、子供の頃に両親が共働きの友人の家では現地のお手伝いさんを雇っていた家があったので珍しくはあったが全くない事でもなく、勇樹は奴隷をその程度の物だと考えていた。


「だって雇用したんだから、お給金払うのは当然じゃない?」


「奴隷は主の所有物ですから、そのような物は払う必要はありませんよ。一応、奴隷の権利も最低限は保証されていますが、それ以外の一切は主が権利を持っています。家畜に給金を払う飼い主はいないですから」


「……マジですか」


 人を雇う程度で考えていたら、人がペット扱いだった。

 奴隷の予想以上の扱いに、勇樹は思わず頭を抱えた。


「あ~うん、じゃあ労働時間については後で考えよう。あとお給金の代わりにお小遣いは良いよね?」


「そんなわたしは……」


「良いから良いから、とりあえず金貨1枚で良い?」


「さっきよりも上がってます! そんなに要りません!」


「じゃあ、さっき通りに銀貨3枚で良いね。とりあえず、これ今月分ね」


「あ……」


 会話の流れから強引に、お金の入った小袋を押し付けるようにフィーアに渡した。

 そして、話はこれまでと言わんばかりに勇樹は席を立って部屋の隅にある物を取りに行った。

 フィーアも返すタイミングを失って、渋々受け取った小袋をしまった。


「じゃあ、とりあえず掃除するからこっちの服に着替えて来て。脱衣所はさっき案内したから分かるよね?」


「はい。でもこれ、わたしには少し大きいと思うんですけど」


 勇樹がフィーアに渡したのはメイド服だった。

 それも秋葉原で見る様な丈が短くフリルで過剰に装飾した物ではなく、シンプルで上品な丈の長い紺色の、所謂ヴィクトリアンメイドと呼ばれるタイプのメイド服だった。

 しかし、それはフィーアの身体のサイズには明らかに大きく、広げると首の部分がフィーアの目線の高さに来ていた。


「ああ、それには【サイズ調整】が掛かってるから、着た後に『フィッティング』って言えば服が体のサイズに合わせてくれるよ」


「え、こんな服に魔法効果が? しかも、そんな魔法なんて聞いた事が……」


「いいからいいから、早く着替えて来てね!」


 ちなみに何故、勇樹がメイド服を用意していたかというと、行き倒れてアリサに拾われる直前に疲労と空腹と寝不足でテンションのおかしくなりながら作成した、見た目はアレだが勇樹の持てる技術をふんだんに盛り込んだネタ装備の一つであった。

 そうとは知らずメイド服を渡されたフィーアは、聞いた事も無い魔法効果が掛かった服におっかなびっくりしながらもメイド服に着替えた。



 着替え終わったフィーアが戻ってきた所で、2人は一先ず応接間の掃除を開始した。


「とりあえず衣類は洗濯するからこの籠に、金属屑は再利用するからこっちの箱に、食器の類はこっちの桶、生ごみはこっちの箱、武器や道具の類はこっちでやるからまずはその辺の物を集めて置いて」


「は、はい」


 引っ張り出してきた籠と箱を並べて、フィーアに幾つかの指示を出すと勇樹は鞄を持って立て掛けてあった武器や床に散らかしてあった道具を拾っては鞄に詰め始めた。

 フィーアはとりあえず服を拾い籠に集めながら横目で盗み見ると、明らかに容量と合っていない量をポンポンと鞄の放り込んで行く勇樹に、持っている鞄が旅人の鞄だという事に気付いた。


「(こんなお屋敷にお一人でお住まいになっていて奴隷を即金で購入し、マジックアイテムである旅人の鞄をあのような使い方をするなんて……ひょっとしなくても、わたしは物凄い方に買われたのではないでしょうか……)」


「ん? なんか言った?」


「い、いえ、何でもありません! そうだ、箒はどこですか? 床が乾いた土で汚れているので掃除をしたいんですが……」


「ああ、それなら任せて!」


 勇樹はそう言うと腰に付けたポーチから鞄にホースを取り付けたような道具を取り出した。

 それは現代人にはとても馴染み深い掃除道具『掃除機』だった。


「ジャジャーン、今回のマジックアイテムはこちら! これは掃除機を模した『魔動クリーナー』といって、手元のスイッチを押すとホースの先からゴミを吸い取れるようになってます! 更にヘッドを変える事で細かい所に入り込んだ物や溝に詰まった埃なども綺麗に吸い取る事が出来ます! さらに吸ったゴミはこっちの本体の中で圧縮されるので、捨てる時も簡単に捨てられるんです!」


「す、凄いですね。それは……」


 まるでテレビの通販のような語り口で『魔動クリーナー』を説明する。

 それを聞いたフィーアは何とか言葉を絞り出すので精一杯だった。

 何故なら、ハーフとはいえフィーアはエルフの中で生活していてマジックアイテムについて人並み以上の知識がある。

 その知識の中でも、このような完全に家事向けのマジックアイテムなどフィーアは見た事も聞いた事も無かった。


「操作は手元のスイッチで簡単にできるから使ってみて! なま物でも液体でも何でも吸い込んで掃除出来ちゃうから、その辺はあまり気にせずやっちゃっていいよ。ただ、ゴミじゃない物とか吸い込んじゃうと、後で面倒臭いから気を付けてね」


「は、はぁ」


 勇樹の説明を聞きながら、こんな便利な物がありながら何で掃除ができないのだろうとか考えつつ、教わった手順で魔動クリーナーを動かして軽くクリーナーヘッドを床に前後させた。

 だが、たったそれだけで乾いた土がこびり付いていた床が綺麗になり、フィーアはさらに驚いた。


「ユーキ様、このマジックアイテムは凄いです! 一瞬で床が綺麗になりましたよ!」


「ああ、うん。ヘッドの中のモンスターの毛で作ったブラシローラーが細かいゴミも逃さず掻き出してくれるからね。ちなみに吸引は組み込んだ風属性の魔法石で本体の中に旋風を起こす事でほぼ永久に変わらない吸引力を実現してます!」


「良く分からないですけど、凄いんですね」


 「こんな凄いマジックアイテムがあるのに何で掃除できないんだろう?」とは思ってもフィーアは口に出さない。

 勇樹の馬鹿力とフィーアの手際の良さもあって、応接間と玄関にあった荷物はあっという間に片付き、獣の巣だった屋敷は漸く元の人の住処へと戻ったのであった。


 その後、フィーアもいきなりではシステムキッチンの使い方が分からず、夕食を外で食べる事となった。

 しかし、そこでフィーアは「奴隷は主人と同じ食卓に着けない」と主張し出して一悶着あり、勇樹も「席に着かなければ問題ない」と屁理屈を捏ね繰り回して買い食いで夕飯を済ませた。

 そして、屋敷に帰ってからはキッチンにある物の使い方と一つ一つ丁寧に教えてから就寝した。



 ――翌日。

 Fランクの依頼ノルマを熟す為、朝一で冒険者協会にやって来ていた。

 しかし、いつもは早朝だと殆ど誰もいない筈の協会が、何故か今朝は冒険者で溢れかえっていた。


「へ? なんだこれ、なんで朝から冒険者がこんなにいるの?」


 冒険者なんて物は犯罪者の一歩手前、そうでなくともならず者同然の者たちが殆どで、大抵はまだ夜が明けて間もない早朝は酒に潰れて寝ているような者共である。

 故に勇樹も貸し工房をいつも同じ部屋で取っていたし、定期的に張り出される奉仕同然の依頼は協会が開くと同時には出ている為、ランク維持のノルマを熟すのには丁度良かった。


「なのに、今日に限って何でこんなに人が多いんだよ……」


 冒険者に知り合いもいない勇樹は原因を調べる為に、入り口付近まで冒険者が押しかけていても、誰一人として並んでいない受付に向かった。


「オッチャン! 何なのさ、この冒険者の山は!?」


「何だよ藪から棒に……何なのさって知らねぇのか? 最近、外の魔物の活動が活発化したおかげで流通が止まりがちになってるから、一定ランクの冒険者にはモンスターの討伐ノルマが課されたんだよ。で、これはその討伐依頼を取る為の行列だ」


「? ノルマが課されてるなら、何で依頼書が関係あるの?」


「何せ一度に大量のモンスター素材が出るかも知れねぇからな。こっちの買い取れるにも限りがあるから、こういう時は依頼書を持ってる奴だけ買い取る事になってんだよ。だから、捕ったモンスターを無駄にしねぇようにこうして大勢が押しかけてるって訳だ」


「ふーん……あれ? それって僕みたいなFランクにも適用されてるの?」


「はっ、Fランク(ザコ)に出来る事なんかあるかよ。今回もCランク以上が対象だから安心しな」


 勇樹は知らなかったが、冒険者カードには緊急時に呼び出しが掛けられる機能が付いている。

 但しこれはその街にある冒険者協会が、その付近にいる冒険者に対して呼び出しが掛けられる程度なのだが、これを止められるのは協会の建物内のみで無視すると後日色々な罰が下されるという、冒険者にとっては面倒臭いシステムである。


「じゃあ、いつもみたいに今週のノルマ分の依頼宜しく」


「あー、それなんだが、今日は殆どの職員があっちに動員されてるから、通常業務はほぼストップしてるんだわ。悪いが明日以降に出直して来い」


「え~、オッチャンは~?」


「悪いが俺も今回ばかりはマジで忙しいんだよ」


「そんな事言ったって、オッチャンの受付はいつもの如く誰も並んでないじゃないか~」


「それはなぁ「そこのお前! さっきから聞いていれば、Fランク風情がその方になんて口を利いている! お前は一体何様のつもりだ!」


 2人はいつもの調子でグダグダしながら話していると、一人の冒険者が会話に割り込んできた。

 突然、声を掛けられて思わず声の方を振り向くと、丁度勇樹の真後ろで明らかに不機嫌な顔をした冒険者の青年が立っていた。

 年は勇樹と同じくらい、くすんだ金髪に切れ長で蒼い瞳と彫が深い顔、若干汚れたままの皮鎧を纏い腰には2本の剣を佩いている。

 勇樹の元居た世界ならばアイドルで持て囃されてもおかしくないような容姿の青年が、まるでゲームの主人公の様な出で立ちで、ジッと勇樹を睨んでいた。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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