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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
2章 少年、拾われる

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09話 少年、連れ帰る

(´・ω・`)冷静になって読み返してみると、話が駆け足になっていて色々と話が歯抜けていると感じたので書き直しました。

 その為、9・10・11話は少し短めです。

 アリサを探しに出た途中で遭遇した盗賊バンゴの計画を成り行きで潰した勇樹であったが、そこに捕らわれていたシスターはアリサではなかった。

 だが代りに教会を飛び出していなくなっていたジャックを、誘拐されていた人たちの中から発見して、見事救出した勇樹は騒ぎに巻き込まれるのを嫌って屋根から逃走した。

 追っ手を撒く為に、態と屋根伝いに大回りのルートで簀巻きのジャックを担いで教会へ帰ってきたのだった。



 既に日も暮れ始め辺りが薄暗くなっている頃、屋根の上を駆け抜ける黒い人影がいた。

 それは協会の正面にある建物の上で立ち止まると、屋根の上から飛び降りて軽やかに着地した。


「よし、とーちゃく!」


 能天気な声で立ち上がったのは、アリサを探しに出てジャックを連れ帰ってきた男、勇樹であった。

 その肩にはロープで縛られたジャックが、巨大な芋虫の様に垂れ下がっている。


「うー……」


 ジャックは騒ぎ過ぎてぐったりしていた。

 何せ、絶叫マシンなどない異世界で、安全ベルトもなく乗用車並みのスピードで上下する視界に終始叫びっぱなしだった為、疲れて眠ってしまっていた。

 そんなジャックなど気にした様子もなく、勇樹は教会の門を潜った。


「たっだいまー」


「あ、ユーキ君! それにジャックも!」


 どうやらアリサは既に教会に帰っていた様で、帰ってきた勇樹を出迎えた。

 余程心配していたのか跳ぶように勇樹へと駆け寄って来て、縛られ担がれているジャックを見て泡を食った。


「え!? 何でジャックが縛られてるの? っていうか、ユーキ君が何で……一体、何があったの!?」


 状況が呑み込めず混乱したアリサは勇樹の肩を掴み、鼻先が付きそうな距離まで顔を迫らせて詰め寄った。

 彼女との距離の近さに、彼女いない歴=年齢である勇樹は思わず顔を逸らした。


「えーっと、アリサさん? まずは彼を下す方が先決じゃないかなーって思うんですけど……」


「あっ! ジャック、今すぐ外してしてあげるからね!」


 動揺しているアリサは思い出したようにジャックを勇樹の肩から降ろして、固く結ばれた縄を必死に解こうとする。

 しかし、固く結ばれた荒い縄は容易に解く事が出来ず、アリサの白い指を赤く傷だらけにしてゆく。


「アリサさん。これ使ってください」


 気が動転しているアリサを制止して、勇樹はナイフを手渡した。

 一瞬、勇樹が何を言いたいのかわからないほど慌てているアリサだったが、すぐにナイフを手に取って縄を切り始める。

 良く研がれたナイフは、まるで熱したナイフでバターを切るが如く沈むように縄を切断した。

 切った縄を奪い取る様に取り除くと、赤くなった手首を見て、アリサは涙目になりながらジャックを抱きしめた。


「ゴメンね……助けてあげられなくて、ゴメンね……」


「ふぇ、えへふぁん……ええはぁあんー!!」


 アリサに抱き締められて安心したのか、ジャックは堰を切ったように泣き出した。

 生き別れの姉弟が再会したかのような号泣だったが、猿轡をしたままというのが少し滑稽であった。


「いや、せめて猿轡は外してあげなよ」


「あっ、ゴメンね! 私、うっかりしてたわ」


「い、いいよ。自分でも外せるし」


 と口では言っていても、アリサに成すがままされているジャックを勇樹がジト目で見ていた。

 猿轡を外した後、アリサはジャックの身体をベタベタ触って怪我が無いか調べた。


「でも、一体どうしてこんな事に……」


 何気なく呟いたアリサの言葉に、ジャックはアリサに抱きつきながら勇樹を睨み付けて指を差した。

 ジャックがそうしたのはただ悔しかったからだった。

 突然、思い人であるアリサが連れて来て我が物顔で教会に入り浸り、いい歳をしてアリサに面倒を掛けている男にジャックは敗北感を感じていた。

 追い出そうと殴りかかれば軽くあしらわれ、無様に逃げだせば人攫いに捕まった挙句、ヘラヘラしたこの男に助け出されてしまった事が、幼いとはいえジャックの男としてのプライドが深く傷つけられたからだった。


 そんな複雑な思いに気付いていない勇樹は縛られたまま担いできた事を根に持っているのかと溜息を吐いたのだが、そこまで思われていると思っていないアリサは全く別の解釈をした。

 そして、それは過去の悪い記憶を呼び覚まし、アリサの思考を悪い方へと傾け転がしてゆく。


「そんな……まさか、幾ら自分に懐かないからって……いえ、そもそも初めからそのつもりで?」


「あ~、アリサさん? なんか物凄い勢いで誤解してませんか? ねぇ、ちょっと……」


「っ!?」


 急にジャックを抱きしめたアリサがブツブツと呟き始めた事に、嫌な予感がした勇樹が肩を叩こうと手を伸ばした瞬間、反射的にアリサは勇樹の顔を叩いた。

 しかし叩かれた勇樹はビクともせず、まるで大樹でも殴ったかのような硬い感触と叩いた衝撃が、諸にアリサの手に跳ね返ってきた。

 思いがけない手の痛みにアリサは、思わず叩いた手を握りしめて蹲ってしまった。


「い、痛い……」


「ああ、ごめんなさい。僕って防御の数値が高いみたいで、この前も森で躓いたら頭突きで木を圧し折っちゃったんですよ。あはは~」


 少しでも空気を明るくしようと自分の頭を軽く小突きながら笑って見せた勇樹だったが、逆にそれがアリサの癇に障った。

 アリサは親の仇を見るような目で睨み付けた。


「ふ、ふざけないで……貴方みたいな獣人を物としか思ってない様な人の所為で、この子みたいな孤児が増えるんじゃない!! どうせ貴方もウチの子を奴隷商にでも売り払おうって考えてたんでしょ!!」


 今までにも、孤児院にいる子供たちを狙った者がいない訳ではなかった。

 そもそも、ここにいるのはシスターたちが街で見かけ保護した親から捨てられた子供や、両親が病気や冒険者稼業で亡くなり天涯孤独になった子供たちである。


 身寄りがなければ当然、それを狙う不心得者も現われる。

 只でさえここには女性2人と子供たちしかおらず、防犯という観点から見れば不用心極まりない、過去は何度か不良冒険者が孤児院にいる子供たちも狙って来た事があったが、その度にアリサが近所の人たちの力も借りて何とか追い返してきた。

 そういう苦労をしてきたアリサの眼には、勇樹が怯えたジャック誘拐しようとした薄汚い冒険者たちと重なって見えた。


「いや、僕は別に……」


「出て行って!」


「アリサさん……」


「出て行って言ってるでしょ!!」


 取り付く島もないと判断した勇樹は、説得する事を諦め何も言わずに孤児院を去って行った。

 アリサは勇樹が出て行くのを見届けるまで、ジャックを庇うように抱きしめ睨み付けていた。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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