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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
2章 少年、拾われる

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08話 少年、誘拐事件を解決する

(´・ω・`)今回はちょっと短いです……

 攫って来た商品(・・)を乗せた盗賊バンゴの馬車は、堂々と表の大通りを進んで街の外へ出る門を目指していた。

 攫われた人たちは手足を縛られ猿轡をしている上に、馬車には防音の魔法道具を設置して、万が一騒がれても外には一切気付かれない様に徹底している。


「よーし、そろそろ外門だ。テメエら静かにしてるんだぞ?」


 バンゴは荷台の方を振り向いて、捕まっている人たちをグルリと睨みつけてニヤリと笑う。

 門に着くと数台の馬車が列を成していて、バンゴ達の幌馬車もその後ろへ付いた。

 すると、1人の衛兵が馬車へ駆け寄ってきた。


「そこの馬車、止まれ! 外に出るのか?」


「はい、質の良い素材が手に入ったので隣国へ売りに行くんですよ」


「商人か、では通行証と積み荷の確認を」


 衛兵に言われてバンゴは後ろの垂れ幕を捲ると、下男らしき数名の男と積み上がった木箱が見えた。

 道中は舗装されていない道なども多い為、積み荷が崩れない様に見張りを入れているのは珍しい事ではないので、衛兵も気にした様子もなく作業を終わらせた。

 次に通行証を確認すると、衛兵は頷いて道を開けた。


「通って良し!」


「へへへ、どうも~」


 裏ルートで手に入れた仮の身分証を懐にしまうと、バンゴはニヤリと笑いながら衛兵に会釈して馬車を出発させた。

 そして、そのまま街の外へ……とはいかなかった。



「馬車の車輪に槍をシューッ! 超! エキサイティング!」


 奇天烈な叫び声と共に、バンゴの馬車目掛けて一本の槍が飛んできた。

 飛んできた槍は馬車の左後輪を貫いて地面に縫い止め、馬車が急停車してバンゴは思わずつんのめった。


「な、なんだ!? 何事だ!」


 突然響いた破砕音に驚いて衛兵たちが詰所から飛び出すと同時に、背の高い建物の屋根から人影が空へ躍り出る。

 人影は頭までスッポリと覆ったローブを羽の様にはためかせながら、バンゴの馬車へと舞い降りた。

 そして手に持ったナイフで馬車の幌を斬り裂くと、裂け目から中へ飛び込んだ。


『な、何だお前は!?』


『問答無用! ヒャッハー!』


 暫く馬車の中でドタバタと物音がしたかと思うと、馬車の側面を突き破って下男らしき男たちが吹き飛ばされてきた。

 バンゴは思わず御者台から下りて、剣を抜くと穴の向こうの人影に向かって怒鳴り上げた。


「な、何者だ! 街中でこのような事をしてただで済むと思うのか!」


「煩いなぁ! こっちは門の所で止められれば、衛兵が気付いて終わりかと思ったのに中途半端な仕事しやがって! お陰でテンパって槍投げちゃったよ!」


「訳の分からん事を言うなぁ! テメェら何してる! さっさと奴を引きずり降ろせ!」


 馬など滅多に通らない道だったので、道端に落ちている馬糞を辿って割と簡単にバンゴ達の拠点を見つけた勇樹は、拠点に捨て置かれた魔道具を見つけ、そこに残った魔力を頼りに全速力で一直線に馬車を目指した。

 そして、息を切らせながら見つけた馬車は衛兵が止めていて、積み荷を検査する様子だったのでホッとしていると、チラッと中を覗いただけで終わらせて馬車を行かせようとしたので、慌てて足を止めさせる為にポーチから適当に掴んだ物を馬車に向かって投げたのだった。


 バンゴの怒号と共に、固まっていた部下たちが我に帰って剣を引き抜き、馬車へ乗り込んだ。

 薄暗い馬車の中で、部下の一人が勇樹目掛けて剣を振り下す。

 それに対して勇樹は狭い馬車の中を気にした様子もなく槍を振り回し、一突き目で剣を弾き、二突き目で男を石突で突き飛ばした。

 後方に続いていた男たちは、吹き飛ばされた男に押し出され馬車から次々と落された。


「なぁ!?」


「たとえお天道様が見逃しても、僕は見逃さないぜ! さぁ、アンタの所業を衛兵の皆さんにも見て貰いな!」


 勇樹が槍に魔力を注ぐと、槍に光の線が走り風を纏い始めた。


「吹き飛ばせ、『烈風槍(トルネーダー)』!」


 勇樹の言葉が(キー)となり、槍に纏っていた風が解放されて暴れ出し、逆巻いた風は刃となって幌をズタズタに斬り裂き、周囲にいた人間は強い風と轟音に思わずその場に伏せた。

 そして、幌が吹き飛ばされた馬車は屋根が骨組みだけとなり、馬車の中を白日の下に晒した。

 それを見た衛兵の一人が思わず声を上げた。


「な、なんだ! なんで女や子供が縛られているんだ!?」


 奥に積み上がっていると思われた木箱は、実は木の板でそれっぽく作った書き割りで、その薄い板の向こうには10人近い女子供が縛られて、(ひしめ)く様に座らされていた。

 勇樹はその中から修道服の女性を素早く見つけると、女性を縛っているロープを切って猿轡を外し、俯いている女性と同じ目線になる様にしゃがんだ。


「助けに来ました! もう大丈夫ですよ。アリサ……さん?」


 シスターの顔を見た勇樹は思わず固まった。

 何故なら、そのシスターは……


「す、すまない……普段ならば油断はしないのだが、偶々非番で武器も持っていない所に獣人の子供が攫われそうになっていたので割って入ったが……このざまだ」


 シスターというより女騎士という言葉の方が似合いそうな、凛々しい顔をした女性だった。

 人間違いだった事に気付き、彼女を見た勇樹は思わず力が抜け、その場に座り込んでしまった。


「んー! んー!」


「ああ、君は本当に誘拐されてたんだね」


 こちらを呼ぶ声の方へ顔を向けると、そこには若干ボロボロになったジャックが縛られて転がされていた

 但し何故か頭はシスターの膝の上に乗っていて、所謂『膝枕』状態であった。


「なんでこの子、君の膝に頭を乗せてるの?」


「ん? ああ、この子は先ほどアイツらに殴られてね。手も縛られていたし、苦しそうだったから、せめて楽な体勢をと思ってね」


 つまり、ジャックは勇樹が助けに入るまでの間ずっと、このシスターに膝枕されている状態だったという事になる。

 それを聞いた勇樹は深く溜息を吐いた。


「はぁ……てっきりアリサさんが好きなのかと思えば、ただのシスター好きかよ」


「んん! んーっ、んー!」


 勇樹の呟きにジャックが否定の意を込めて激しく首を横に振った。

 すると、シスターがビクッと肩を震わせた。


「あんっ……き、君、膝の上であまり激しく動かないでくれ。髪の毛がくすぐったいじゃないか」


「ハイハイ、君はこっちに来てねー」


 シスターの反応に勇樹は慌ててジャックを縛られたまま肩に担ぐと、呆然としているシスターにポーチからナイフを取り出して渡した。

 ナイフを渡されたシスターは、渡されたナイフの意味が分からず首を傾げる。


「問題起こした僕がいつまでもここにいる訳には行かないから、後は任せた!」


「お、おい、君!」


 シスターの制止も聞かずに勇樹は高く飛び上がり、近くの建物の屋根に飛び移った。

 突然の浮遊感と眼前に広がった高所の景色に思わずジャックが暴れ出す。


「んー!? んー!」


「ハイハイ暴れないでねー。うっかり落としちゃいそうになるから~」


「んーーー!!」


 勇樹は誰にもハッキリと顔を見られることなく、ジャックの救出に成功したのであった。


 その後、自棄を起こしたバンゴは捕まっていた者たちを人質に取ろうと馬車に乗り込み、女性たちに剣を向けた。

 それに対していち早く解放されていたシスターが勇樹に貰った鋼のナイフ(inエンチャントでガチガチの一品)で応戦しようとバンゴの前に立ちはだかり、バンゴが振り回す剣を受けようとして……まるで豆腐でも切るかのようにバンゴの剣はあっさりと斬り裂かれた。

 そして、武器を失ったバンゴは衛兵に捕まり、誘拐された人たちは無事に解放されたが、あの場を引っ掻き回した人物を見ていた者は居らず、『暴風を操る精霊(テンペスト・ボーイ)』という噂が、暫く王都の話題となった。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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