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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
幕間

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26/130

 14.2話 少年、成人になる(前編)

(´・ω・`)後編はまだ出来上がっていません。

 書き上がり次第、割り込み投稿したいと思います。

 勇樹が竜の里へやって来てから1週間が経過した。

 最初は慣れなかった竜の里の習慣にも、何とか乗り越える(すべ)を見つけて過ごしていた。

 その間にさらに2回ほど重りが追加され、生傷が絶えない日々を繰り返していたある日、ドラグニールがある提案をしてきた。



「成人の儀……?」


「うむ、お主もそこに参加するんじゃ」


 午前中の修行が終わって休憩をしていた時、ドラグニールから竜人の成人になる儀式に参加するように言い渡された。

 勇樹は嫌な予感を覚えながらドラグニールの提案に首を傾げる。


「えーっと、それって僕が参加してもいいの?」


「大丈夫、儂がここの(おさ)に言って参加を取り付けて置いた」


「あ~、だから今朝から村の人たちからの視線が凄かった訳ね……」


 ドラグニールが無理矢理勇樹の参加を捻じ込んだ所為で竜人たちの反感を買ってしまったのだろうと想像して、勇樹は溜息を吐いた。

 そこで勇樹は気になった事を聞いてみた。


「それで、成人の儀って何をするの?」


「何、ちょっと竜人の若者たちと儀式場にある大昔に天竜様が落として行った鱗に傷を付ければいいだけじゃよ」


「だけって……そんな簡単な物なの?」


 ドラグニールの胡散臭い物の良い様に不安になった勇樹は、少し離れた所で『憧れの人と遭遇して完全に舞い上がっちゃっている人』のようにガチガチに固まっているニゲルに水を向けた。

 すると注目されている事に気が付いたニゲルは思わずしどろもどろになる


「なな、なんか言ったか!?」


「えーっと、竜人の成人の儀って何をするのかなぁって」


「ああ、成人の儀な。今回は俺も参加するんだが、里の中心に大きな岩の柱みたいな物があるだろ? アレはその昔に天竜様がこの地へ降り立った際に残してくださった鱗なんだよ。成人の儀は天竜様に自分の技量を見せる為に、次の日の朝までにその鱗を武器で傷を付けるんだ」


 そこまではドラグニールと同じだったので相槌を打つように勇樹はうなずく。

 しかし、ニゲルは溜息を吐きながらその後を続けた。


「だが、天竜様の鱗は恐ろしく固い。歴代の竜の里の戦士ですら刃を突き立てた者は一人もいない。みんな小さく傷を付けるのが精一杯で、今までも日が高い間に終えた奴は誰も居ないって話だ」


「ちなみに、終わらなかったらどうなるの?」


「そん時は技量を磨いて来年に再チャレンジだ。成人の儀を終えていない限り、一人前とは認めて貰えず狩りにも参加できないから、参加する奴らはみんな必死なのさ」


「へー……」


 ニゲルの説明に勇樹は半目になりながらドラグニールの方を見た。

 勇樹から疑念の視線を向けられたドラグニールは涼風でも受けたかのように、涼しげな顔で好々爺然とした笑顔を浮かべてその視線を受け流す。


「ねぇ? もし、そこへ普人の子供が無理矢理参加しようものなら、どうなると思う?」


「はぁ? まずそんな事はあり得ねぇとは思うが、そんな事をして通過できなきゃ恐らくソイツは一生この里では未熟者の烙印を押されるな。それを理由に再挑戦すらやらせて貰えない可能性もある」


「通過出来ちゃったら?」


「竜人の戦士ですら難しい儀式を早々普人の子供が出来るとは思わねぇが……通過しちまったら若い奴からは歓迎して貰えるかもな。異種族とは言え伝統ある儀式を通過した奴を無下にするような奴はいねぇよ。だた上がなぁ……」


「あぁ、そこはどの世界のどの種族も同じなんですね……」


 俯いて肩を竦ませるニゲルの言わんとしている事を理解した勇樹は、何と言っていいか分からなくなって肩を落とした。


 何時の時代でも閉鎖的なコミュニティというのは、大きな改革や余所からの介入を嫌う物である。

 ましてや文化どころか身体の作りから違う種族なんてものがいれば、その嫌悪感は計り知れない。

 どっち道、村八分にされる未来しか見えない現状に勇樹は、どちらの方がマシなのかに頭を悩ませるしかなかった。



 翌日、勇樹はドラグニールとニゲルに連れられて、天竜の鱗がある里の中央へとやってきた。

 円形の広場の中心には五階建てビル相当の大きさもある一枚の鱗が地面の突き立つように立っている。

 天竜の鱗を見上げながら勇樹は不安そうに呟いた。


「コレが天竜の鱗か……できれば、もっと別の形でじっくりと観察したかった」


「ふぉっふぉっふぉっ、それならばこれから儀式の間にじっくりと見れば良かろう」


「そんな余裕なんて一切ないよ!?」


 勇樹たちがギャーギャーと騒ぎながら広場へと入って来ると、その場にいた竜人族の殺気立った視線が一斉に勇樹に向いた。

 隠れようのない恨み辛みの篭った視線を一身に浴びる勇樹は、居辛そうに身をよじりながらドラグニールに話し掛ける。


「ねぇ、帰っていいですか?」


「ふぉっふぉっふぉっ、ダメじゃ」


 勇樹の言葉を笑顔で却下して、首根っこを掴みながらしかめっ面を浮かべる竜人の里の(おさ)の元へと向かう。

 長は勇樹の方を一切見ずにドラグニールに頭を下げた。


「これはこれは赤賢竜様。この度は成人の儀に立ち会って頂き光栄の至りにございます」


「よいよい、儂もお前たちに無理を言ったのでな。一方的に言いつけて野放しには出来んかっただけの話よ」


「はぁ、そうでしたか」


 ドラグニールの言葉ににこやかに頷いた長は、射殺さんばかりの視線を隣にいた勇樹へとぶつける。

 しかし、その前の歓待で辟易していた勇樹は、並みの戦士でも竦み上がりそうな視線を受けでも全く気が付く事はなかった。

 そんな殺伐とした空気と漂わせていると、竜人の戦士ダクディルが近づいて来て長とドラグニールの前で直立不動の体勢を取る。


「長、儀式の準備が出来ました」


「うむ、では早速始めるとしよう。それ、そこのお前も行くが良い」


「は、はい! ほら、ユーキも行くぞ!」


「ぽんぽんいたい……」


 蒼い顔をする勇樹の腕を掴んでニゲルは立ち去るようにその場を離れる。

 そんな勇樹の後姿を、長は鋭い目つきで見送っていた。



 今回、成人の儀を受ける竜人はニゲルを含めた5人で、その内の2人は前回の儀式で通過できず今年が2度目の挑戦だった。

 勇樹とニゲルが鱗の前に並ぶと、他の3人から舌打ちと嘲笑の歓迎を受ける。


 儀式はまず、長が天竜の鱗の前で祝詞を読み上げて挑戦者の報告を行い、次に目の閉じた竜の置物が若者たちの後ろに置かれる。

 この竜の置物は賢竜の一人が成人の儀式の為に特注したマジックアイテムで、この置物の内部に魔力を記録する機関があり、記録された魔力の持ち主が儀式を通過したかを判断する事が出来る。


 そして、この置物は儀式を開始すると竜の眼が開いて参加者を監視し、時間が経過するごとに目が徐々に閉じて行って1日経つと目が閉じる仕掛けとなっている。

 つまり竜の置物の眼が開いて再び目が閉じるまでに鱗を傷つける事が出来れば、成人の儀を通過できるのである。


 そして、自分の魔力を登録する為に参加者が竜の置物に手を翳して行き、ニゲルの番が回って来た所で勇樹が憂鬱そうに呟いた。


「やだなぁ、僕って昔からこういう人前で注目されるのって苦手なんだよね」


「それは諦めろ。普人がこの儀式に参加している時点で、否が応でもお前は注目の的だ」


「うう、変な汗が出てきた……」


 元々が外駆け回る系引き篭もりでコミュ障の勇樹は、自分に視線が集まっている事を意識すると、ガタガタと震えだして目が泳ぎ額に脂汗を浮かせ始める。

 緊張が最高潮に達しそうな勇樹も無事に魔力の登録を終えると、次に新品の訓練用ではない刃が付いた槍が配られた……が、ニゲルが受取った所で配っていた竜人が離れて行ってしまった。


「おい! まだユーキに槍が渡ってねぇぞ!」


「異な事を。槍は竜人族の戦士の証、異種族の者に与える物ではない」


「じゃあ、コイツは素手で試練に挑めってのか!?」


 突き放すような言い方をする年配の竜人に、ニゲルが掴みかからん勢いで詰め寄る。

 すると、横から腕が伸びてニゲルの肩を掴んだ。


「ふぉっふぉっふぉっ、その辺にしておくが良い若人よ。ユーキの武器ならばちゃんとここにあるわい。ほれユーキ、お前さんが向こうで使っておった剣じゃよ」


「せ、センキュー……赤爺」


 笑いながら割って入ってきたドラグニールはいきり立つニゲルを諌めると、ボロボロな皮の包みを勇樹へと放り投げた。

 中身は勇樹が竜の砦で串刺しにされながらもゴブリンリッターから分捕った剣である。

 それを受け取った瞬間、それまでガチガチに緊張していた勇樹の肩の力が抜け、不敵な笑みを浮かべた。


「ありがとう赤爺! 正直使え慣れない武器とか渡されたらどうしようかと思ってた!」


「何だよ。ちゃんとあるなら先に持ってろよなぁ」


「いやぁ、こっちに来てからは必要ないからって赤爺に没収されてたんだよねぇ」


 暢気に話す勇樹たちに、他の参加者たちが声を上げた。


「待ってもらおう! まさかお前、赤賢竜様に頼んでこの試練に簡単に通過できるような剣を用意して頂いたのではあるまいな!」


「そんな剣を使われては不公平だ!」


「そもそも、この成人の儀は生涯使うこの槍でやる事に意味があるのだ! 武器の性能のみでこの儀式を通過しようなど言語道断だ!」


「はぁ、そんなに言うなら見て確かめてみればいいじゃん。何なら使ってみても構わないよ?」


 勇樹はそういうと近づいてきた年配の竜人に剣を渡した。

 渡された剣を鑑定した竜人は困惑したような声を漏らして、何かを確認するようにドラグニールの方を見た。

 その反応に長が声を掛ける。


「どうしたのだ。その剣はどういうものだ?」


「いえ、それが……どこにでもあるただの魔鉱鉄製の剣です。寧ろあまり手入れがされていないので、この剣で天竜様の鱗に傷を付けるのは厳しいかと……」


「そうか、ならばそれはその普人に返してやりなさい。それで試練が通過できる物ならばな」


「うっす! がんばります!」


 異を唱えていた他の参加者も、その剣が竜の鱗を簡単に傷つけるような名剣でない事が判るとあっさりと異見を引っ込めた。

 剣が勇樹に返されると、参加者は天竜の鱗の前で横並びになる。

 そして、それを確認すると長が自分の槍を掲げて声を張り上げた。


「それでは! これより竜の里の成人の儀を開始する!」


 ――ゴォォォン!!


 長の宣言と共に開始の鐘が鳴り、若者たちは一斉に鱗へと駆け出した。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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