11話 少年、生まれ変わる
(´・ω・`)この物語は当初はチートスキルに覚醒して無双させるだけの話にするつもりでした
でも修行って言ったら、とりあえず死なないと始まりませんよね(笑顔)
勇樹の行動を理解した瞬間、ドラグニールは目を見開き大きく驚いた。
武器が無かった勇樹は転送される直前に柄を握り締めて剣と共に転送された、それだけであった。
言葉にすれば簡単だが、その為に勇樹は態と剣を腹に刺さるように仕向け、さらに自分で剣を押し込んで深く刺す事で体に固定して、驚いているゴブリンリッターの手から強引に柄を取り、自分が奪い取ったと思い込む事でそれを成功させたのだ。
「なんというか……恐ろしい奴じゃのう。普通は思い付いても実行なんぞせんぞ」
剣を手にしてからの勇樹は、驚くほど順調に強くなっていった。
ゴブリンリッターの剣は魔鉱鉄と呼ばれる金属からできており、ちょっとした名剣クラスの物が多い。
まず劇的に変わったのは、角ウサギなどの比較的弱いモンスターから一方的にやられなくなった事、攻撃が通るようになったおかげでレベルが上がるようになった。
次に、レベルが上がった事で感覚が研ぎ澄まされ、不意打ちがされにくくなった事と、いくつかのスキルを覚えられるようになった。
これらの変化によって、相変わらず上級モンスターには瞬殺されるが、確実に転送される回数は減っていった。
サバイバル生活27日目……
勇樹はゴブリンリッターの3体と対峙していた。
約1週間で勇樹のレベルは格段に上がり、ゴブリンリッターも自然と武器を構えて警戒する様に囲い込む。
「やっとだ、やっとここまで来たんだ……よし、始めようか!!」
現在、勇樹はゴブリンリッターの剣とブラックパンサーの毛皮で作った胸当て、手足にゴブリンリッターの手甲と脛当てを付けている。
剣と手甲と脛当ては、分断したゴブリンリッターを1体ずつ倒した時の戦備品である。
最初は全身を鎧で固めてしまおうかと考えたが体のサイズが合わず、臭かったので最小限で留めた。
勇樹は剣を肩に担ぐように構え、ゴブリンリッターの1体に躍り掛かった。
力は劣るが体格で勝る勇樹は、剣の重さを利用して斧のように振り下ろす。
決まれば、ゴブリンリッターの鎧でも叩き割れる一撃であるが……当然、警戒していたゴブリンリッターには簡単に受け止められてしまう。
力が拮抗した所でゴブリンリッターがニヤリと笑みを浮かべて押し返してくる。
だが勇樹はそれに答えず、不意に肘の力を抜くと相手の剣を上へ滑らせるように剣を引き、潜る様にして相手の懐へ入り込む。
勇樹は秘密兵器である左手に隠し持っていた小袋の中身を、思いっきりゴブリンリッターの顔にぶちまける。
中から粉が撒き散らされ、ゴブリンリッターは顔を押さえて倒れる。
背後から2体が剣を振り上げて近づいて来る気配を感じる。
そこで勇樹は素早く目の前のゴブリンリッターの胸倉を掴み、立ち位置を入れ替えるように引っ張り込み、向かってくるゴブリンリッターたちに向かって放り投げる。
勇樹の思惑通り、突然引っ張られたゴブリンリッターはバランスを崩したまま、掛かってきた片方を掴んで共に倒れる。
仲間が倒れた事で咄嗟に反応できず、困惑しているゴブリンリッターを尻目に捕え、勇樹は体を回転させた勢いをそのままに剣を薙ぎ、ゴブリンリッターの胴を捕えた。
しかし、思いの外浅く、鎧を斬り裂くだけに留まった。
勇樹は剣を振り回した勢いをそのままに、更に踏み込んで肩で当て身を喰らわせ、ゴブリンリッターのバランスを崩す。
そのまま目の前の相手を押し倒し、倒れた所を首に剣を突き立て絶命させる。
「よし、まずは1体目!」
すると、動けなくなっている仲間を押し退けて剣を振り上げるゴブリンリッターを後目に捕え、振り下される剣を受け止める。
受け手に回ってしまった所為で、剣の重さとゴブリンリッターの腕力でどんどん押されていく。
そこで勇樹は人差し指をゴブリンリッターの顔へ向けて伸ばし、2つ目の隠し玉を披露する。
「【花火】!」
呪文と共に、勇樹の人差し指から勢いよく火花が飛び散った。
いきなり顔に光と熱を浴びたゴブリンリッターは、堪らず勇樹から距離を取り、顔を何とも擦る。
完全に隙を見せているゴブリンリッターの鎧の隙間に剣を突き刺した。
それと同時にゴブリンリッターは呻くような声を上げて倒れ込む。
「2体目!」
完全に刺さったままの剣を回収しないまま、体勢を立て直しつつある最後の1体に向かう。
先ほどゴブリンリッターに向かって撒いた粉は、カプサンの実の種を乾かして粉末にした物である。
うっかり食べてしまった後、これをどうにかして使えないかと考えて思い出したのが催涙スプレーであった。
辛味とは刺激であり、地球でも唐辛子が防犯用スプレーなどに使われているように、特に粘膜に触れると猛烈に痛い。
そんな物を顔面に受け、目と鼻と口に入り込んでしまったゴブリンリッターは勇樹を気にして居られるような余裕は皆無だった。
「これでラストだ」
目の前のゴブリンリッターが落とした剣を拾い上げ、悶えて倒れている所を音もなく近づき、首に剣を突き立てた。
頭の中でピロリン♪という気の抜けた音が聞こえた事を確認して、周囲を警戒しつつステータス魔法を展開する。
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ユーキ・イトー
AGE:16 SEX:M
Lv63 HP:5370/5370
MP:3370/3370 SP:3210/3370
筋力:957
耐久:955
敏捷:963
知力:951
精神:960
運 :4
属性:なし
スキル:『異世界言語』Lv2 『■■■■(未覚醒)』
『剣術』Lv1 『気配遮断』Lv3 『気配察知』Lv2
『道具作成』Lv1 『素材加工』Lv1
称号:『巻き込まれた一般人』『毛玉に負けた男』『野生児』『石器の職人』『死にたがり』『覚醒者』『愚か者』
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レベルが上がっている事を確認して、次に相変わらずの運の無さに肩を落とす。
20レベルを過ぎた頃から『覚醒者』という称号が付いて、ステータスの伸びがグンと上がったのだが、未だに運の数値だけは1つも上がらず、ドラグニールに運の低さを相談した時の話では、どんな人間も10レベルごとに1つくらいは上がるらしい。
自分の運の無さに項垂れていると、前回見た時にはなかった称号を見つける。
称号には様々な隠れた効果があり、例えば『剣の達人』と付けば剣で戦う時に僅かに戦闘力が上がる程度の効果がある。
とは言っても、そんな効果があるのはほんの一握りで、殆どは文字通りの意味で称号として付くだけである。
しかし、『愚か者』とはあまり良い言葉ではないが、一応確認の為、恐る恐る詳細を確認してみる。
[『愚か者』:子供でもしでかさない様な失敗を幾重にも重ねる愚者。]
魔法に罵倒された。
一瞬は頭に来たが、冷静に考えるとムクムクやらカプサンの実やら、その他にも結構大ポカをやらかしている事を思い出し、何とも言えない感情を胸に抱きつつステータス画面を切った。
そんな風にモヤモヤしていると、頭の中に聞き慣れた老人の声が話しかけてきた。
『ふぉっふぉっふぉっ、どうやら修行は順調の様じゃの』
「ええ、お陰様で。もう数えきれないくらい死にましたけど」
『儂にそんな口が利ければ上等じゃわい。という訳でそんなお主に朗報じゃ』
ドラグニールは勿体付けるようにそこで言葉を切る。
朗報という言葉に、この1週間ほど頼んでいた工具をくれるのかと期待した。
割とここに馴染んできた勇樹であったが、石斧や剣では加工が追い付かず、既にテントも10回は作り直している為、真面な道具が欲しかったのである。
しかし、ドラグニールの言葉は勇樹の予想を大きく外れていた。
『お主の代わりの心臓が見つかったぞ。そして、ここでの修行も終了じゃ』
「へ?」
ここの生活が必死過ぎて、ほぼ忘れかけていた勇樹は、思わず間抜けた声を上げてしまった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




