38.レジスタンス、鬼人、悟、妖怪
火の手があがる。村の入り口につけたばかりの門戸が強く叩かれています。見に行かずともわかる。人間の強襲です。きっと鬼人を間引きに来たのでしょう。誰が声をかけたわけでもありませんが攻撃性のある術を覚えたものが門戸の前に、その術がないものは中央の村長宅へと集まります。
「戦ってはいけません」
私の声に多くの鬼人が不満の顔をしています。
「悟様はおっしゃいました。戦えば、術の存在が知れ渡ると神子が来ます。それは全滅を意味します」
目を瞑れば穏やかな悟様が浮かびます。多くの者達を守りたい。お優しい方です。
「ではこのまま焼き打たれろとおっしゃるのですか?何のために、何のために術を身に着けたと?」
「術を使うのは私が出ましょう。見た目からして人間ですから。戦うすべのない者達を囲み、妖怪の隠れ家へ逃げるのです。妖怪相手ならば一時撤退するでしょう。その後のことは悟様との相談になります」
「我らは妖怪を知らぬのです。信用しろとおっしゃられてもわからぬのです。人以上にわからぬ存在なのです」
皆、逃げなければならないことは伝わっています。頼る妖怪について疑心を持つのは何故でしょう。この術も技術も、全て私や又吉を通してあるものの妖怪からの贈り物なのに。
「何故わからぬのですか?この術も、未だに破られぬ門も、妖怪から伝わる技術。ただ生きるために必死なのです。それは妖怪も鬼人も同じことでしょう。悟様は鬼人が避難する事も考えてご用意してくださっています。何ゆえ、何ゆえわからぬのですか」
「わかりません。生きるのに必死であるからこそ他者への施しなど有り得ない。妖怪が我らにどのような見返りを期待しているのかわからぬから信用できないのです」
どうして彼らはすぐにでも妖怪を頼れぬのか。この事態で動かぬことにいらだちます。
「私を信ずるものは妖怪の隠れ家へお逃げなさい。瘴気の濃い場所ゆえ、最後までついてはこられまい。信じれぬものは戦えばいい」
私は事前に悟様から言われた道を術でなぎ払いながら作り、振り返らずに妖怪の隠れ家を目指しました。
***
「人間が里を囲い始めているだと?」
「はい、又吉様、完全に囲われる前に予定通り妖怪の隠れ家へ避難致しましょう」
「ああ、みなはそうしてくれ。俺は少しお光のいる里に近づく」
「危険です。又吉様は人の身なれども、こんな夜更けに瘴気漂う場所にいて不審に思われないはずがない。無事でいられるとは思えません」
「だからこそ。お光の村にも人間が来ていないのか確かめなければ。ここが空になればあちらも無事ではすまないはずだ」
***
「中山君、一応待機はしているけれども、迎えには行かなくていいのかね?」
どうも、中山です。今回の鬼人合流シナリオのため、現地隠れ家にはエバンスさんが待機してくれています。冥界で眺めている限り、お光も含めて7つの村が隠れ家に向けて移動を開始しています。徹夜明けに現地偵察は心が折れそうです。いや、冥界では寝る必要はないのですけれどもね。どうも疲労がたまっています。
「一応7つの村が向かっていますよ。彼らはたどり着く前にある程度合流しそうですし、へんに悟君が誘導するより待ち構えて『どうしましたか』という形で行きます」
「了解しました。要注意の村はありますか?」
「そうですね、向かっている中ではお光があやしいですね。いやはや成績だけでみたら問題なかったのですけれども。どうも土壇場になって鬼人より妖怪信奉が強すぎて全員ついてくる感じではないのですよね。ついてきている中でも不満があるみたいなので悟君スマイル営業でよろしくです」
今回、部長がやらかしてくれたおかげで、今まで綿密にすすんでいたシナリオがみっちり急展開の流れになっております。よって、早すぎる気もしますが、レジスタンス、鬼人、妖怪、全てを合流させて一気に戦力アップをさせるという無理のある台本となっております。どちらかといえば歴史に残るであろう流れのほうが重要なのでそのしわ寄せが今回詰まっているとでも言いましょうか。まあ、そんなわけでして、周囲の人間に「鬼人が堅牢な壁を作ろうとし始めている。戦を仕掛ける気かもしれない」なんて流布しまして今に至ります。
「しかし7つですか。予定より少ないですね」
「仕方ないといってもいいものか。やっぱり心理コントロールが足りなかったのでしょうね。応戦始めてますよ。しょぼい魔法で。鬼人避難はさせつつ別の村に偵察に行くレジスタンスも3名。これ、思ってた以上に母数減りますね」
本来ならばもっと時間をかけて多くの立派な英雄を育ててしまうシナリオでした。時間短縮のため、努力の末の力ではなく、妖怪から付与されるチートで戦うことにもなりそうですしもう滅茶苦茶ですよ。なんというか連載打ち切りの漫画みたいなシナリオに劣化しています。自然さを追求していたのに。しかし、何故部長は暴走したのでしょうか。
「そういえば、エバンスさん。部長から聞いていませんか?」
「何をです?」
「例のやっちゃったぜの真相ですよ。何故あんなことをしたのか。絶対ぽろっとじゃなく意思を持ってやってるでしょう。私が執筆にいったあと聞いていませんか?」
「いえ、私は何も」
私が退室したあと、彼ら悟君たちは何か話し合っていたはずなのです。どうして私が確信しているかといいますと、あの時ちょっと部長に軽蔑の視線を投げかけていたエバンスさんがちょっと部長擁護をしているのです。
「今は言えないととりますよ。何れ吐いてもらいます。でなければまた知らない理由で台本差し替えになるじゃないですか。今は、とりあえず彼らを迎え入れてください。デューイさんが帰ってきたら交代してもらいますから」
デューイさんは現在謹慎中の部長のかわりに、神子偵察任務です。味方ばかりだと思っていましたけど、なんだか私の周りもまたきな臭くなってきているようです。
ナンバリングするかまよったけれど繋ぎパートやっつけ仕事風味
次の内容に入るまでに何があったかだけでした




