32.お光、再会す
小さな鬼里は、貧弱ではありましたが木造の囲いが設置され、見張りまでもが立っておりました。私がいる村はまだそこまで防備は至っておりませんが、話を聞いている限りたった数ヶ月でこの村の何かが変わっている。連れの鬼人たちは少し戸惑いつつも「きっとお光様のお仲間がいるに違いない」と、私に言葉をかけながら足を急かしてくれました。その見張りが目視できる距離にまで近寄ったとき、村の中から見張り以外の鬼人が幾人も出てきている様子がわかり、一度そこで歩みを止めることとなりました。
「お光様、失礼ですがお光様は人間のお姿であらしゃる。鬼人は人間が怖い。ちょいとわしが先にいって事情を話してきますわ。呼びにくるまでここで皆と待っててくださらんか」
一人の鬼人が代表して村まで行くことになり、私たちはただ村の外で彼らの様子を見ているしかでききません。警戒されているのはわかるのです。
「あげな警戒せんでもよかろうに」
「いんや、わしらだってお光様以外の人間がきたら怖かろう。どんなお人か知らんのだ。これくらいでなければなるまい」
「そんなん一人でくる人間が何ばできると。何人もできたら焼き討ちかと思うがね。一人、しかも鬼人がついとるのに何があるがか」
「おーい。中に入ってもええらしいぞぉー」
鬼人の話は過去に裏打ちされたものです。鬼人が生まれれば3人程度で子を捨てに来る。10人以上であれば人数が増えたであろう鬼里を「間引き」にくるのです。貧しい鬼人たちの里に乾いたおがくずを撒き、火をつけてまわる。それが鬼人たちから見る人間なのです。私は口にしませんでしたが、恐らく彼らの警戒は鬼人を人質に取っている可能性や、逆に人間の子を人質にとった厄介ごとを持ち込むものの疑いがさせたものなのでしょう。悟様と人間の仲間を勧誘に行くときに何度かあった光景でした。
「入ってもええらしい。お光様参りましょう」
「はい」
再び村に近づくと警戒を解いたらしい鬼人たちがこちらを眺めていました。入り口にはずっと消さぬように燈された術式でできた炎、錆びてはいるけれども音はするであろう金属の鐘のようなもの、そして鬼火との手にもたれている木の棒、恐らく武器なのでしょう。様々なものが目に映ります。まるで私達と妖怪が住まっていた住処のようなものたちです。
「お光様、これはお光様たちのお仲間が使われていたものではありゃしませんか?」
「ええ、目的地だった住処はこんな形でした」
期待で心が逸ります。そしてこの村の鬼人と会話ができる距離まで近づいたときでした。
「お光!!お光生きていたのか!!」
ついに懐かしい仲間の声を聞くことができたのです。
「又吉!又吉ですか!!」
村から出てきた又吉は最後に見たときより少し痩せていました。髭も生え、眼光が鋭くなっていましたがこの声は私の知る又吉のものに違いありません。
「ああっ!!生きていたとは!!あれから60年も経ったと聞いたのだ。もう、もう二度と誰にも会えぬと!会えぬと思っていたのに!お前とまた会えるとは、これは悟様のお導きなのか!!」
「私もです。私も皆に伝書鳩を送ったのですが誰にも届くことは無く諦めていたのですよ。まさか、こんな近くに又吉がいるだなんて、ついぞ思いもしませんでした」
「又吉様、そちらは」
「お、お光様?」
「これは仲間のお光だ!誰よりも火を扱える。火を使えばその横に並び出るものはいなかったお光だよ」
「彼は又吉と言います。私の仲間です。多くの物を作り、私達の防具や住処の守りを強固なものにしてくれた術具師の又吉です」
****
お光と又吉は無事合流できたようです。拠点が比較的近かったため当然なのですがパート2開始の一番のりですね。私はあがってきた報告書を確認してほっとため息をつきました。魔法成績はいまいちですが、警戒心が強く協調性が強い又吉はきっと火力主義なお光のいいストッパーになることでしょう。次の報告が楽しみです。
「中山参謀、パート2に入る前にパート4に入る村が出てきたのですけども」
「またですか。今度はどこの誰ですか」
「一番瘴気から遠い伝衛門なのですけどね。伝衛門が悪いわけではないのですよ。今回は人間側からの攻撃です。いつもの焼き討ちじゃなくて帝勅令で都の常備軍がやってきました。どうやら前回守護巫女隊だしたのがバレたっぽいですよ」
えらく早いお出ましです。元部長は案外フットワークが軽いのですかね。シナリオに介入されるのは現段階では時期尚早です。軽い接触で帰っていただかねばなりません。
「ってことは鬼人じゃなくて巫女退治?」
「帝が守護巫女隊を妖怪認定してますからね。でたった聞いたら出さずにはいられなかったぽいですよ」
「それって元部長食いついちゃったってわけではないってことですかね?」
鬼人に食いつかれたらちょっと拙いなぁと思っていたので意外とマシな状況です。なんのために鬼人に魔法を教えず弱いアピールしていたのかって話になってしまいます。現段階ではレジスタントと強化された鬼人の存在はまだ秘匿すべき案件です。これは守護巫女をぶつけるべきです。
「逆ですね。ビビッてますよ、完全に。軍にはついてこずに魔法付与だけして出したらしいですから」
「どうでしょうね。なかなか肝が据わってますから。一応、元部長の動向は最大警戒レベルで見張っててください。それで守護巫女隊でお茶を濁しましょう。撹乱して鬼里から離れたところに注目させて目を離させて下さい。伝衛門のほうは魔法付与された相手と戦うのは無理でしょうから役者を何名か送って、パート2に合わせて合流予定の稲次郎でしたっけ、そこまで鬼人連れて後退させてください。それでパート2のフラグ回収に軌道修正させてください。無理ならばパート2と3同時進行でかまいませんから4に入る前には両方及第点になるように修正入れていきましょう。大事なのは元部長と完全接触までは絶対に母数を減らさないことです。お願いします」
まだまだパート2に入り始めたばかりなのに。パート2はできる限り多様性を増やして強化させて分業を実現化させます。一番今後の戦局を決める土台のパートです。全属性、全役割を目標数値より高いスコアを出してもらわねば鬼人たちが連合を組むパート3に入るときに混乱します。少々守護巫女隊を働かせすぎですが、戦えるまでは彼らがどこまで時間を稼げるのか。これは祈ると言うより全部署総出で力押ししてでも稼がねばなりません。
「ああ、必要そうなら悟君のスタンバイもはじめて貰っててもいいですよ。早い気もしますけど不測の事態につかえそうです」
今回、お光視点と中山視点の2部構成です。
完全分割であるべきという意見があれば改稿前に言っていただけると幸いです。




