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報酬は世界の半分  作者: 麦ちよこ
中山の本気編(改稿前)
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31.お光と炎

 村長の許可を得た私はこの村にて理想のための再出発をはじめました。捨様の御宅に衝立を置かせてもらい、そこで寝起きをする。日の高い内は田畑でしたこともない仕事を手伝い、日が暮れると村長の家に集まって術の指導と悟様や仲間達の話をする。日々に大きな変化はありませんでしたが、少しずつ少しずつ力を蓄えていたのです。

 村の鬼人たちはまず火属性の術を習いたがりました。彼らは人だけではなく夜に畑を荒らす獣にも怯えていたのです。武器を持つこともできず、火を燈す油も無い。それが何の役にも立たなかった魔力や瘴気が炎を生み出し、村の畑を守ることができる。彼らはまず生活を守ることからはじめなければならなかったのです。

 初期の炎を生み出した彼らは次に水を求めました。その次は光と闇。私は火属性の術は得意だったのですが他の術は中級程度の腕前です。火以外の属性を得意な鬼人が出始め、こんなとき仲間がいてくれたらと思い出してしまいます。このまま彼らが中級術を覚えた後に誰に師事を受けたらいいのか。それに4属性2極を極めなければ、きっとあの時のように神々の加護者には勝つことはできないのです。

 術を少しずつ覚えた鬼人たちは徐々に私を受け入れてくれるようになりました。そして術以外の話にも耳を傾けてくれ、悟様や仲間達の思い出話も聞いてくれるようになりました。


「お光様、本当にお光様以外のお仲間は生きてはおられないのでしょうか?」


「んだな。お光様は60年も先にいたんだ。それは術じゃありゃしませんか?」


「妖怪が使う術でお光様を先へ飛ばしたんだとしたら、きっと他のお仲間も飛ばされてるんじゃないですかね」


 鬼人たちは優しく、私の仲間達がまだ生きていることを祈ってくれました。ただ、私はその祈りが通じないことを知っているのです。初級の術で伝書鳩を呼び、仲間の下に文を送れども返事がなかったのです。



「ありがとう。皆さんのその気持ちだけで幸せです。仲間とは連絡手段があったのだけれども通じないのです」


「手段はひとつでいらっしゃるので?」


「決めていたのはひとつだけでした」


「決めていない方法で探してみるのはだめなのですかい?」



 決めていない方法。私たちは神の関係者に感づかれぬよう魔力を瘴気に似せて作りあげた鳩を飛ばしました。決めていない方法で連絡をとっても彼らはちゃんと受け取ってくれるのでしょうか。60年、もしかしたら彼らはこの時の経過をしらぬやも知れません。いつものように警戒して、いつものように見過ごしてしまう。これは私の妄想なのでしょうか。もしかしたら私のように何処かにとけこんで生きているものには迷惑ではないのか。60年経った先でも我々は同じ志をもてているのでしょうか。


 鬼人たちにすすめられ、私は仲間と共に過ごした村へ置手紙をしにいくことにしました。時間の経過で捨て置かれているであろう私達の隠れ家はこの鬼里から4里先。大した距離ではないこともこのとき初めて知りました。

 中級術まで覚えた鬼人3人と私で隠れ家へ向かいます。歩くうちに、この辺り一帯の濃い瘴気は私達のかつての隠れ家から湧きだしていることがわかりました。同時に鬼人の村々もこの瘴気の濃い一帯にあることも知りました。人間が立ち寄れない、ただそれだけの理由でした。


「鬼里があるとのことでしたが何処か寄れる里はありますか?」


「他所の鬼里に何の用があるんだ?」


「私達の鬼里は術を覚えました。他の鬼人たちも術を覚えれば便利なことも増えましょう。覚えたいと言う者たちがいれば教えにいきたいのです。この近辺でなら互いに通うこともできましょう」


「お光様はお優しい。その優しさにつけこまれることがないか私は心配ですよ」


 私は自分が優しいのかはわかりません。しかしつけこまれたことは苦い思い出として残っています。神に御使いにだまされたことは。妖怪に、鬼人に優しくすることでまたあんな思いをするわけがありません。彼らはこうして私のかつての仲間を探すべきだと親切を返してくれるものたちなのだから。きっと。きっとその心配は杞憂なのです。

 私の提案を快く受け入れてくれた鬼人の案内で、隠れ家へ行く道の丁度間の村に寄ることになりました。私が滞在する村よりも幾分か小さな村。しかしながらその里には驚くことに魔力で灯る消えぬ炎があったのです。


「お光様!あれは術ではございませんか?」


「ええ。間違いなく術で作った炎だわ。鬼人にも術を伝える人がいたのね!


「いや、お光様が来る前に来たときにはなかったぞ」


「俺も前に来た時にはなかった」


 これは希望の炎です。私以外にも鬼人に術を伝える人がいる。それは妖怪かもしれません。そして仲間かもしれません。はやる気持ちで私達一行は村の中へと入るのでした。

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