17.戦隊合流 後編
「お光、これは神の御意思だ」
こんにちは、ただ今お光ちゃんの説得をしております。あの後、試験部隊は妖怪殲滅を果たして本契約を果たしました。冥界からの指示があるまで待機ってことになり、各々家で待機してくれています。こちらはお光の説得に3日の期限をいただきまして、その結果次第でお光を脱退させて部隊を優先するか、試験を延期にしてお光にさせるかを決めるそうです。しかしながら、お光のポジションは『つなぎ』でありまして、このマッチポンプな世界運用に有害であるとなればすぐに首を切られるポジションだったりするのです。中身がおっさんの役者と違い真に子供なのです。使い勝手の悪さは火力主義なあたりでも深刻です。自分が特別である子供が思うように行かずに癇癪を起こすのは当たり前といえばそうなのですが冥界人は出身がばらばらな分、早く大人になれないものに対してとても厳しいのです。故郷を踏襲した世界で子供がこうなるのをみていると私自身は胸が痛いのですが切るのも仕方がないとも思っています。ここまで費やした時間というものがあるのですから。
「君が幾ら我儘を言ったとしても彼女達は巫女になったのだ。君が認めなくとも力は渡された」
「認めないわよ!今まで一人で頑張ってきたのよ!いきなり出てきてえらそうにされても許せない!」
「お光、いつ、彼女達が偉そうにした?神の御意思を組めないのであれば巫女ではあれない。契約しただろう?神の力と引き換えに。君は巫女としての存在意義まで捨てるのか?」
「巫女は私だけよ!」
「いや、神は彼女たちも巫女と認めた。神がしたものを認められないのであれば君は巫女ではない」
「私は巫女よ!」
「…神が君の契約を破棄しようと言っている」
「御使い様、ずっと一緒にいたじゃない!御使い様は私の味方でしょう?」
「いいや、私は神の御使いだよ。私も君も神の僕だ」
「裏切るの!?許さないっ許さないんだからっ!!」
「今しているのは最終勧告だ。彼女達と共に戦わないのであれば君は全ての力や望みを失うだろう」
「ひどいっだましたっ私をだましたっ!裏切られた!神なんて神なんて滅びればいいのよ!」
これは完璧にだめですね…。彼女とはここに来てからずっと一緒に過ごしてきました。情もあれば期待もした。神様である私たちからしたら彼女のことは騙したようなものであるのは確かである。餌をつるしたのも自覚している。
けどね、だからこそお光には魔法少女として正当であって欲しかった。世界や冥界に踊らされた魂であっても、現実と想像産物の違いがあるとはわかっていたけれど、いままでの巫女にはチームなんてものはなかったけどね。幼子であるってわかってはいたけど信頼していたんだ。彼女が癇癪に任せて言葉を吐くたびに"俺"はどんどん冷めていく。『神なんて滅びればいい』とは"俺"たちが、冥界が滅びればいいといっている。
随分と"俺"も現から離れたんだなぁ。冥界で時間を過ごすうちに現の激情というものを理解しがたくなっているらしい。彼女達の魂のために俺達はずっと働いている。休みもなければ給料もない。ただただ何もなく消え行く魂たちのために世界を創って守って沢山の幸せをお土産に渡しているのだ。現にいたころは「どんな神話の神様も身勝手極まりない」って思っていたよ。お光の心情もそうなんだろう。思い通りにならない怒りだとわかっている分同情しにくいけれども。君のために君達のために。この世界が幸せな世界になるように、幸せな未来を描けるように創っているのに。人ではない悪を倒すだけのぬるゲーな世界じゃないか。他の世界を想像もできないのはわかっている。人と人が殺しあう世界じゃないんだからそれに満足してもいいって言ってもきっと理解できないよね。でもね、こんな状況でも更に欲をもつのかい?俺は君に全て白紙にすると脅しているんだよ?それでも我を通すのかい?君は俺らの気持ちもわからないんだろう?
ただ怒りが湧く。子供相手に大人気ない。でも認めていたんだよ。君はパートナーだってね。そんなにこの世界が許せないか。この神が許せないのか。苦労して苦労して君達を慈しんだ俺らが憎いのか。
「お光、君にもう話すことはない。失望したよ」
「うるさいっ裏切り者っ極悪人!」
聞くに堪えない。俺は静かな怒りのままにお光に<静寂>をかける。急に口から声がでなくなりお光は更に口をパクパクさせる。癇癪から絶望に顔色が変わり、涙がぽろぽろと流れている。
俺にはわからない。何を言っているのかなんて知る必要性を感じない。俺は良く知っている。脆弱な人間は自分本位であり、思い通りにならないだけで腹が立ち、自分より大きなものを知れば恐怖して媚びる。媚びただけでは理解しないのだ。きっと脅しに屈したらいいと思っているだけなのだ。心の底の気持ちは改心しない。喉元を過ぎればまた騒ぐのだ。
「神罰を受ける覚悟をもつんだな。巫女が発する神への冒涜は罪深い。君に巫女の自覚がないというのはそういうことだ」
自分を神だと思う。この世界を構想して台本も書いた。創世記からずっとデバックをしているし愛着もある。ここまで育てた。この世界で生きる魂をどの世界よりも愛していた。彼女には神の御使いなんてポジションがえらそうに言ってるだけに聴こえるだろう。ついでに俺だって元は輪廻を辿る魂だった。何も特別なんかじゃない。神なんかではない。でもここでは神の気持ちなのだ。俺自身が傲慢なのか、この世界が、お光が傲慢なのか。何が許せないのかわからなくなってきた。頭の中が整理できない。みんな終わればいい。滅びてしまえばいいとすら考える。
声を出せないお光を置いて、どことも決めずにふらふらと歩く。何が悪いのかもわからないし、頭を冷やさなきゃという理性もいる。一人にならなきゃだめだし、一人で何が出来るという。
お光が追いかけてくる。口をパクパクさせて。うざったいたらありゃしない。ここで死にたいのか?だめだよな、イライラする。
怒りで何をするかわからない俺はなけなしの理性でテレポートを発動したのだった。




