第三話 いよいよ定番の王都へ
「この度は危ないところをお助けくださり、感謝いたします」
金髪美少女? 美女? 十八歳位だろうか、の感謝の言葉を聞きながら、兵士たちが装備を剥ぎ取り遺体を埋める様を横目に見ていた。
死と隣り合わせ……
ミザリアさんの言っていた言葉を思い知らされる。
現代日本じゃないんだな。
「なんとお礼を申し上げてよいものやら、わたくしはアッシリア・ローゼンヴェリー。ローゼンヴェリー王国の第二王女でございます」
ダダダダダ、第二王女、公爵、侯爵、飛び越してまさかの王女。
「これは大変失礼した。我はウルカ・フジノキという。何も助けたわけではない。たまたま通りかかったら、不愉快な虫が湧いていたから焼き払ったまで」
ここはやはり敬語か、不敬罪で殺されたりしないか、一応フォローしとこう。
「我は異国からまいった。その国は作法を忘れて久しい。気を悪くしたなら謝罪する」
「気を悪くするなど滅相もございません。あなた様はダーケス・ナイトでございますよね」
「え、ダーケス・ナイト知ってるんですか」
「もちろんでございます。純黒聖堂会の剣、知らぬ者などおりません」
「はあ……」
この世界って邪慾のネクロノミコンの設定に寄せてる?
「王城にお越しになって褒美を受け取ってくださいませ」
いやいや、国王に謁見とか無理でしょ、キャラ造り持たないんですけど。
「先程も述べた通り、我は無作法者、国王陛下の気分を損ねかねない。気持ちだけありがたく受け取っておこう。では」
立ち去るに限る。
「お待ちください」
アッシリアは車みたいなヤツに戻ると、定番の麻袋に入ったコイン的なヤツを持ってきた。
「今はこれだけしかございません。ですので是非王城にお越し下さいませ」
「これで充分だ。ありがたく頂戴する」
麻袋は思っていたより軽くてがっかりだ。ズッシリ重い金貨が詰まってるものとばかり。
「異国から来られたと言うことは、まだ我が国の国民証をお持ちでないのでは? そうでしたらこちらをお持ちください。」
アッシリアは一枚の書状をくれた。
手書きの可愛い丸文字で『この者の素性は保証する。命の恩人なり』と書かれており、サインと印章が押してあった実に王女らしいな。
「うむ、これは助かる」ん、実に助かる。
「お顔を拝見できませんでしょうか」
アッシリアが言うのでフードをとると、他とは違う一人の兵士が睨むように見てきた。
「なんてお若いの」
「十六だ」
「わたくしより二つも下なのに、なんてお強いのでしょう」
ビンゴ、やっぱり十八だった。
全然圏内だし。
「歳は関係ない。大切なのは」拳で胸を叩く「心と気持ちそして魂だ」
意味分かんないんだけど。運動音痴のくせにね。
「さすがはダーケス・ナイト様。是非もう一度お目にかかれる日を楽しみにしております」
この夢見る少女感、リアルなんだけど。王家って貴族相手に、これくらい出来なきゃダメなんだよね、きっと。
「では失礼する。道中の無事を祈る」
立ち去ろうとすると、さっき睨んできた装備の違う兵士が、アッシリアに駆け寄り耳打ちをしていたのが気になる。
左右に森を見ながら歩いていると、アッシリアの言う通り道は開け、見事な城門と石造りの城壁が広がっていた。
ぱっと見、区の三つ、四つ分はありそうだ。
遠目に見るに煙突のような物があり、その先から煙が出てるのだが、ある程度な高さで消えているところを見ると、蒸気か何かだろうか。
中央の丘にそびえる大きな建築物が、アッシリアんちだな。
城門まで進むと意外に混み合っており、並んでようやく番が来た。
門番の兵士は多く、様々な手続きをしているようだ。
徒歩の者もいれば、車みたいなヤツに乗った者もいるし、トラックみたいなのもいた。行商人的な人たちかな。
兵士にアッシリアから貰った書状を渡すと、熱心に見入り敬礼をして通してくれた。
いよいよ王都だよ。
胸が高鳴るぜ。
文献やアニメで見聞きした通り、大通りの左右にはやっぱり屋台が並んでた。
美味しそうな匂いがするので覗いて見ると、文献に書いてある通り肉の串焼きが売っていた。
麻袋を覗いて見ると、銀貨が二十数枚程。しょぼっ。
しかも、硬貨はカジノのチップみたいなしっかりしたのを想像していたが、ヘナヘナに曲がった薄い硬貨だ。
通貨の単位も金銭価値も分からない。
この銀貨が一枚幾ら位の価値か知らないし、ここにある肉串一本百二十ギルって銀貨何枚かも分からないけど、とりあえず一枚取りだし串を焼いているおばちゃんに聞いてみた。
「これで買える?」
目を丸くして驚いたおばちゃんの顔を見て、恥ずかしくなった。
「一枚?」
「いや何枚かあるんだけど」
「むりむりむりっ。悪いけど無理だね」
耳を真っ赤にしながら、逃げるように立ち去った。
おいっ、アッシリア、今はこれだけしか、にも程があるだろう。
これは気を使って城に行っても、たかが知れるな。
まず通貨単位はギル。恥を掻いて分かったことはこれ、だけですよ。
このヘナヘナに曲がった銀貨が何ギルかだ。何枚あっても串すら買えないって。
そもそも、あの串焼きが、神戸牛的な高級肉だったのかも知れないし。
それにしてもさっきから気になっていた、屋台の上のネオンサインと下から出てる蒸気みたいのは、何なんだ。
さらに頭上に浮かぶ大きなホログラムのような映像は何。
わりとあちこちあるんだが。
なんか番組やってるけど、よく分からん。
僕の異世界が感壊れるんですけど。
まあいい。
で、左を向くと路地の奥に見付けました。
ネオンで輝く奴隷市場という看板。
そりゃあ、行くでしょう。奴隷? 可哀想だな、なんて言ってられないでしょう。好奇心旺盛な、桃園第二高校一年四組の生徒なら行くでしょう。冷やかしでも行くしかないでしょう。
ということで、僕はとうとう大人の階段を登るべく、路地へと進路変更したのでした。




