第二十二話 我が家を買う
大騒ぎだったよねそりゃあさ。
大司教の首飛ぶわ、ダーケス・ナイトだと思って人たち断罪されるは、それはそれは、純黒大聖堂、大騒動。最後はラップ風に。
で、女神顕現でしょ。
真のダーケス・ナイトはこの人です! のくだり、薄まる薄まる。
エヴェリナたちは号泣して抱きついた来て、温かい感じで幕を閉じたけどさ。
仕事は一旦休止して、家探ししようって事になった。
中心部に近くて自然もあるような場所がいいな。みたいな意見でまとまったんだけど、一見ニューヨークのセントラルパーク近くのような所か、って思えるけど、洋子先輩の歪んだ趣味が相当反映してる。
不動産屋に行ってみると、やはりお城の周辺だろうという事になった。
予算を伝えたところ充分だとの事。真のダーケス・ナイト様でしたらお安くしておきます。だってさ――ムフ。
「いいじゃないの、素敵だわ」
家、と言うよりはもはや屋敷を見た百合亜ちゃんは大興奮。
「大きすぎませんか?」
と言いつつ、エヴェリナは顔を輝かせる。
「早く中が見たいです」
小さな両拳を握り地団駄を踏むベッテ。
「これはスポットが多いな」
となぞの言葉を口にする洋子先輩。
屋敷は中央に位置する四階建ての建造物の左右に、硝子を多用した太い尖塔が対象に立っていて、表には手入れの行き届いた庭が広がっている。
高い格子で囲まれており、その向こうはちょっとした森になってる。
以前は伯爵が住んでいたのだとか。
中に入ると中央に大きな階段があり、突き当たりで左右に分かれている。
「あちらにダーケス・ナイト様の大きなお写真か絵を飾られてはいかがでしょうか」
「うむ、悪くない」
恥ずかしいっしょ。
しかし基本メイドさん雇って住む屋敷だよね。
みんなはキッチンやダイニング、それぞれの部屋を見てご満悦だった。
フロータの駐機場も広いし、どうしてもメイドさんが必要なら雇えばいいか。
うるケーブと名付けられた。
大喜びするみんなを連れて、外に出ると慌ただしく兵士が走ったり、軍用フロータが走行したりしていた。
甲冑を着たアッシリアと面倒くさい男クラースがいたので、大声でアッシリアの名前を呼んだ。
「どうされたのですか、このような場所で」
「この屋敷を買おうと思って、アッシリアこそ甲冑なんか身につけてどうしたの?」
「出たのです。ボイドが。王城外苑正門前に」
ボイド、第何集だったっけな。
「僕たちも行くよ」
「貴様に何が出来る――邪魔なだけだ――」
うざい男クラースが吐き捨てやがった。
「宣言する。そのボイド、我が全て倒してくれよう」
「十二体全部か――」
十二体? 一度も戦った事ないんですけど……
「十二体? たった十二体か、片手でひねり潰してくれるわ」
嫌みな男クラースの顔の前で拳を握った。
「アッシリアよ、もう安心しろ。残りの兵には晩餐の準備をさせるがいい。皆、うるモービルを用意せよ」
「了解したダーケス・ナイトよ、操縦はこの十六夜恋歌に任せろ」
さすが大田洋子分かってる。
「わたしは雷撃の垓環でダーケス・ナイト様を援護いたします」
いいぞエヴェリナ。
「あたしはミスリルの垓環でダーケス・ナイト様の盾となります」
うんうん。
さあ、一皮剥けろ、百合亜ちゃん。
「えー、はい、分かりました」
僕たちはうるモービルで正門前に来た。
テレビの人たちと、リポーターのエレオノールが来ていた。
フロータを降りると兵士をかき分け、カメラの前に来る。
薄まった人気を取り戻すチャンス。
片手を高らかと掲げ、宣言した。
「このダーケス・ナイトが全てのボイドを倒して見せよう」
カメラ目線でリポーターのエレオノールに言う。
「我よりうしろには、一体のボイドも進ませる事はない。エレオノールよ安心して付いてくるがよい」
僕たちは正門をくぐって鳥肌を立てた。
深紅のボディに黒く波打つ縞模様、カニとクモを足したような見た目に不気味な頭。口の中に付いたギザギザのリング、奥に向かって交互に回ってるし。血管? チューブ? 全身に張り巡らされてるし。
生き物なの? ロボットなの?
残った数は、一、二、三、四……十二体っと。一体もやっつけてないし。
単発式の大口径の銃、それ効いてる? あといました、魔法使い。
杖持って呪文唱えてやっとでたのが、人魂みたいな火。当たってボッと消える。
これって持久戦なんだ。
「みんな、心して掛かって」
「はい」
まずはドラゴンブレス。兵士に当たらないよう狙いを定め、気持ち悪い頭部を狙う。
バスッ、バスッ、バスッ――
当たった箇所は装甲が剥がれたみたいになって、砂っぽいのを吹きだしてる。
いけるんじゃね、これ。
兵士たちがこちらを振り向いた。
「よく持ちこたえてくれた、あとは任せて後方からの援護に集中してくれ」
その方が戦いやすいんだよね。
兵士たちは頭を下げ、単発銃で応戦しながらゆっくり後退していった。
背後で、何故逃げる、とむかつく男クラースが怒鳴ってるが、おまえが出て来い。
先程顔面を撃ったボイドの身体に、ありったけの銃弾を浴びせた。
全身から砂を吹きだしたボイドは、その場に倒れた。
洋子先輩は伝説の銃、悦楽歓喜でボイドを撃つ、三発頭にぶち込んだら頭が無くなった。火力半端ねえ、
頭をなくしたボイドはそのまま地面に伏せる。
「アルティメットサン!」
百合亜ちゃんの指から放たれたレイザーはボイドを貫通した。
「アルティメットサンダー!」
エヴェリナの放った稲妻はボイドを包みこみ、走行をバチバチと剥がしていった。
僕、一番弱いんですけど……
ボイドの口が光り僕に向かってレイザーが発射された。
「覚醒ミスリルシールド!」
ベッテが駆け込みシールドでレイザーを受けた。レイザーははじかれ別のボイドを貫いた。
「ありがとうベッテ」
頭を撫でた。これよくあるけど、実は女子って髪触れるのいやだったりするんだよね。ベッテは喜んでたけど。それにしても度胸あるな。僕には出来ないわ。
リロードすると再び撃ちまくった。
チラッとうしろを見ると、バッチリカメラは撮っていたし、エレオノールは何やら真剣な表情で解説っぽいコトしてたので、見せ場だと思いケイオスブレードに持ち替えた。
洋子先輩も刀に持ち替えたのだが、薄まるのでやめて欲しかったと思います。
剣を展開して炎をまとわせると、ボイドの首を落とした。続けざまに三体。
炎を延長すれば一時的に刃が伸びたようになる。それで胴体を真っ二つ。
全てを倒した。いけるねこれは。
改めてゆっくりと周りを見回す。
あ、負傷した兵士がいた。
彼らを治すと改めてゆっくり周りを見回した。
ボイドの死体は粒子になって消えていった。
あとに残ったのは水晶玉のような物だ。
これがヨーラン商会のイエオリさんが言ってた純核か。
エレオノールのとこまで悠々と歩き、カメラ目線でエレオノールに話し掛けた。
「王都の脅威は去った。何かあれば、このダーケス・ナイトがすぐさま駆けつけよう」
「驚異的な強さですね」
エレオノールは唖然としていたから、僕たちはほんとに驚異的なんだろう。
アッシリアが駆けつけた。厄介な男クラースは遠くでふてくされてる。
「王都を、国民を救って下さりありがとうございます」
「ダーケス・ナイトとして、当然の事をしたまでだ」
「陛下からの褒美を受け取ってくださいませ」
今は確かにお金が欲しいとこだが……
「義務をはたしたまで、どうしてもと言ってくれるなら、次の機会にしよう」
気になる事をアッシリアに訊いてみた。
「なぜアッシリアが前線に出てるの? お兄ちゃんたちは?」
「急ぎの公務が入ったとか、兵に任せておけばよいだとか」
「お父さんは?」
「この件に関して、陛下のお考えは分かりません」
なんか事情がありそうだな……
とは言え部外者が立ち入っていい話でもなさそうだ。
その後、屋敷の購入手続きを済ませ、いよいよ屋敷生活の始まりだ。
僕たちの活躍にいたく感動した不動産屋はさらに負けてくれ、純核は想像以上の値が付いた。
おかげで財布の中が潤った。
みんなで必要な物を買い揃えていった。
食事の準備はほとんど百合亜ちゃんと洋子先輩がした。
エヴェリナとベッテはほぼ調理の経験が無いからだ。
我が家でみんなと囲む食卓は格別な物だった。




