第二十一話 断罪されるけど何か
僕の説教効いたね。
てきめんだよ
なぞの男たちは出て行って、残ったのはテレビの人たちと三人の黒ずくめの男たち。これ、黒ずくめがテレビ呼んだな。晒し者にしてなんか企んでるのか。
それにしても、運動音痴の僕、強すぎでしょ。慌てて癒やしちゃったよ。
黒ずくめは僕の前に来て偉そうに構えた。
「我々は純黒聖堂会のダーケス・ナイト」
え? ダーケス・ナイトってホントにいたの! そりゃ怒るわ。
「何ようだ」
「貴様はダーケス・ナイトを勝手に名乗っているそうだな」
「当然だ」立ち上がり掌を顔の前にかざした。「我こそが真のダーケス・ナイトだからだ」
当然だ、男たちの握り拳がプルプル震えるのは。だって、おまえらが真のダーケス・ナイトだもん。
「どっちが真のダーケス・ナイトかイズス様の断罪審判を受けてもらう」
イズスは僕が考えた女神だし。
まあ裁判的なことやるなら、こっちは設定練り込んでるし、悪魔祓いの実績あるし、余裕っしょ。偉い人に擦り寄って、君も僕も仲よくダーケス・ナイトって方向に持って行こう。
「構わない真実はイズスが見てる事だろう」
こいつら手錠を繋ごうしやがった。
「まだ審判は下っていない、場合によっては貴様ら全員がそれをはめる事にもなるんだぞ」
純黒大聖堂という所に着いた。黒を基調にしたカッコいい建物だ。ステンドグラスなんかもあしらってる。紫やエンジ色の中に黄色やブルーの入った綺麗なステンドグラス。
大聖堂の入り口には、儀式用なのか飾りの付いた黒服をまっとた美女が立っていた。
建物の前はテレビを見たのか、大勢の人が集まっている。
中央の絨毯が敷かれた広い通路を案内されて入って行くと、黒服をまとった美女が、お気をつけ下さい、と小声で声を掛けてくるんだよね。
こえー。
奥まで進むと前面には台座に乗った、これまた美しい石像があった。さてはこれがイズスだな。
気になったのは、内側に溝を掘られた青銅で出来たような柱が四本あった事だ。
ずーっと見上げてみると、溝に沿ってギラッギラに光る刃が十文字になっており、鎖で天井から吊されているじゃぁあーりませんか。
断罪審判って……こういうこと。
僕は慌ててフードを被るけど、邪獣ヘバリスの革で出来たという設定のコートでも、悪魔の一掻きでビリビリだし、素材違いのフードはもっと弱そうなんだよね。
「その中で跪いて祈れ」
「まずは疑う貴様から祈るべきじゃないか」
黒服の美女の言葉が気になる。
「おまえからやれ」
この声手古希だな。
「神聖なる儀式の邪魔をするな!」
「すいません、すいません、すいません」
だから、すみませんだ。
「わたしから祈ろう」
自信満々に柱の中に入るとヒザを付いて手を組み合わせた。
これっていつまで? と思ったら鐘が鳴り始めた。
鐘は十回で鳴り止んだ。
十回我慢すればいいのね。
「これでわたしが真のダーケス・ナイトだと判明した」
「貴様もな」
も、を強調しといた。どこで偉い人見てるか分からないから。
「さあ、祈ってもらおうか」
あの余裕、そして黒服の美女の言葉、気になるな。
まあいい。
柱の中央に立ち目を閉じると、二拝、二拍手、一拝。二回お辞儀をして、二回柏手をうって、一回お辞儀をした。
「貴様馬鹿にしてるのか、ヒザを付き手を組んで祈れ!」
「これが我が国での神に対する最大の礼だ。さっさと鐘を鳴らせ」
天照大神よ大国主命よ須佐之男命よえーと、あとはとにかく落ちてきませんように。
鐘が鳴り始めた。六つ? あれ?
シュルシュル金属音が近づいてるんですけど、悲鳴っぽいのが聞こえるんですが。
頭上で音が止まった。このフードいい仕事した?
背後が恐ろしいほどどよめいてるんだが。
恐る恐る目を開け見上げてみると、十文字の刃が、頭上四十センチくらいの所で止まっていた。ミザリアさん?
『いいえ、背後をご覧下さいませ』
珍しくミザリアさんが動揺している。背後を振り向くと、女性の形をした漆黒の影が片腕で刃を止めていた。
見覚えのあるシルエットに先程見たイズス浮かんだ。
「あんたもしかしてイズス」
影が指先に力を入れると、刃は粉々に砕け散った。
「はい、そうです。お久しぶり、とでも言っておいた方がよいでしょうか」
ん? ん、確かにイズスの設定はだいぶ前だから、微妙に久しぶり感はある。女神だけあって、どこか包容力のあるそれでいて力強く、優しさに包まれた懐かしさを覚える声だ。
「あなたは策略にはめられ、殺されるところだったのです。これからは慎重に動く事も考えた方がいいですよ。ゆっくりお話ししたいのですが、まずやらねばならない事があります」
影は歩いて群衆の元へ行った。漆黒と言ったが、まさにその形容がふさわしく、あらゆる光を飲み込んでしまいそうなのだ。
だから、黒、という色では表現出来ない。ただ言えるのは、シルエットだけでこの人絶対綺麗ってコト。
テレビの人以外みんな跪いてる。
「わたしを知らぬ者おらぬな」
喧噪とも言える返事が帰ってくる。
「ダーケス・ナイトを名乗る者どもよ、顔を上げよ」
黒ずくめが顔を上げる。
「虚偽につきイズスによる断罪」
指を伸ばした掌を横になぎ払った。
五、六人の黒ずくめの首が転がり落ちた。
黒ずくめは慌てて平伏し、首を落とされないよう地面に頭を擦り付けた。
「我こそは真のダーケス・ナイト、そうもうす者は顔を上げよ」
当然誰も上げ無い。
「貴様らは明日から白服を着て光明神殿に行くがよい。わたしを崇める資格なぞ無い」
次にイズスは手古希の前に行き、地面にへばり付いてる手古希の頭を踏んだ。
「貴様はウルカ・フジノキの師匠だそうだが」
「いえ、違うんですぅ、そう言った方が分かりやすいと思いましてぇ、なんて言うか教師って言う仕事をしてましてぇ、大変なんすよぉ教師てぇ……」
「もうよい、虫にも劣るクズが、十数える間にこの場から消え失せろ」
手古希一目散に逃げていったけど、逃亡奴隷の末路分かってんのか?
「大司教ここへ。漆黒の巫女ここへ」
「は、は、は、は、はい」
大司教って偉い人じゃん、メチャ動揺してんだけど、光栄な事じゃないの? 漆黒の巫女って言うのか黒服の美女。顔は伏せてるけど落ち着いてる。
「まず大司教、断罪の刃は仕掛けで落ちるようにしたてな」
「滅相もございません」
「では、共に見に行こう。案内役はあの者だ」
神官を指差すと彼は慌てて逃げ出した。イズスが掌を払うと、神官の首が落ち身体は数十センチ先で倒れた。
「しまったな、共犯者を断罪してしまったぞ」
「……どこに仕掛けがあるのかは存じませんが、決してそのような事は」
「巫女よ何か心当たりはないか」
「……大司教と先程の神官が断罪の刃の所で何やら話しをしておりました」
「それは、危険は無いかと話をしていたのです」
「その際、これでウルカ・フジノキは終わりだ、そう言った会話が聞こえました」
「そ、そ、そ、それは巫女様の聞き間違いでございます」
マジか! ちょい――マジか!
「聞き間違いでは無いわたしも聞いている。何しろ目の前で話しているのだからな」
大司教が真っ青な顔を上げると、イズスは手を横に払った。
首は転がり、身体はヒザから崩れ落ちた。
「ウルカ・フジノキこちらへ」
ドキドキしながらイズスの元へ向かった。
セーフなの? アウトなの?
イズスの横に並ぶと、カメラ目線を決めた。
「なんだイズスよ、我に用か」
早くイズス帰ってくれないかな。
「皆に伝えておこう。この世界で真のダーケス・ナイト語れるのはほんの僅か」
え? アウトの方向。神様相手に偉そうにしたのが間違い。だって助けてくれたじゃん。
「その中でも最も優れているのが、このウルカ・フジノキだ」
マジで、神様公認!
「そして純黒聖堂会、王都会でもっとも信仰心の厚い者、それが漆黒の巫女ギュードゥルである。よく心に留め置くように」
イズスが僕の耳元に多分口元を寄せた。
「この世界のために力を貸して欲しい。救ってくれこの世界を」
言い終わるとイズスはかき消すように、その姿を隠した。
どういう意味だこの世界を救うって……




