表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/37

第十九話 五人で悪魔祓い

 鋼を鋼にぶつけるような音が響く。

 それは怒りを鎚に込めて叩いているような音でもあった。

 剣と剣がぶつかり合うとどんよりと曇った空を、剣は回転しながら飛んで行く。


 剣を手元から失った手古希打志多(てこきだした)は血まみれの両手を見て苦い顔をする。数え切れないマメが潰れて、皮が剥がれている。


 断罪の女神イズスを信仰する純黒聖堂会の訓練場だ。


「一体おまえは何が出来る」

 手古希の相手をしていた黒ずくめの男が苛立たしげに納剣する。


「ええ、剣だけは苦手なんですよぉ」

「剣だけは苦手、銃だけは苦手、魔法だけは苦手、体力だけは苦手、エクソシズムだけは苦手、ウルカ・フジノキの装備のことだけは知らない、頬のタトゥーをどうやって消したのだけは知らない。おまえの世界では、だけ、と言うのはいくつまで許されるんだ」

「ああ、そうなんですよ、こっちと違っていくつでも――」

「男は抜剣して早歩きで歩み寄り、剣を振り上げた」

 手古希は頭を抱えしゃがみ込む。

「すいません、すいません、すいません」

「すみませんだ!」

 剣は激しく地面を叩いた。

「貴様にいくら払ったと思ってる。最後にもう一度訊く、何が出来る」

「……えーと、えーと、えーと、藤之木に命令出来ます。何でも言うことを聞かせれます」

「本当だろうな」

「はいぃ、もちろんですぅ、わたしが言えば何でも言うこと聞きますから、あいつ殺せ、って命令すれば間違いなく殺しますよ、はい」

「今度偽りなら、断罪だ」

「断罪って言うのは」

「俗に言えば……死刑だ」


 手古希は腰を抜かして歯を鳴らした。



 ダンク・フォン・アルザーヌ辺境伯は腹心の部下に、小さな麻袋を渡した。


「使い捨ての駒にこれを渡して王都の門の前に撒かせろ。そして呪言を唱えさせるんだ。決してアルザーヌ家との繋がりは悟られてはならない」

「はっ」

 跪く兵士は短く返事をした。

「デーモンシックの方はどうだ」

「……」

 兵士は言いにくそうに口ごもり答えた。

「どうやら王家の方で大々的エクソシズムを行うそうで、全国規模の」

「出来る者がいるのか」

「すでにマリブリット王妃を始め王都内は全員」


 ダンクは握り拳で肘掛けを叩いた。

「魔族にどれほどの代償を支払ったと思っている。ゼギスムントめ」


 ダンク・フォン・アルザーヌは顔を歪めローゼンヴェリー国王を呼び捨てにした。



 国王から依頼があったデーモンシックの発症者は全部で十六名。

 うるかたちはプロテクターの仕事を受注する際、発症者のいる街に行く便に限定した。


 受注したのは片道五日のキャラバンで、他にも二チーム同行する。この仕事を受けたのは、行き先の街にに四人のデーモンシック発症者がいたからだ。


 食料を詰め込みピクニック気分だ。


 うるかたちは荷台がオープンになったトラックタイプのフロータに乗った。

 各チームがそれぞれのフロータに乗り、キャラバンを巡回しながら目的地を目指した。


「いやーやっぱりチキンはけケンタルキフライドチキンだよね」

 アプレーゼを呑みながらチキンをかじる。

「わたしは普通の方も好きだな、衣が薄くて鳥の味がする」

「分かってないな。この濃い味がいいんじゃないですか」

「ヌードル関係は食べたか?」

「いいえ、美味しいのがあるんですか」

「天下三品って言うラーメンみたいなのがあってだな、スープに麺の跡が付くくらいこってりしてるんだ」

 うるかと洋子は食べ物の話しに花を咲かせる。

「それって、ゆで卵食べ放題ですか」

 百合亜が加わってきた。

「もちろん。エヴェリナとベッテはどんな料理が好きだ?」

「わたしはいなり寿司やきつねうどんが好きです」

 エヴェリナは微笑んだ。

「あたしは豚のショウガ焼きやアサバア豆腐が好きです」

 ベッタはご飯に合う料理が好きなようだ。

「いやあ、食べたことのない料理がたくさんあるな」

 洋子はチキンにかじりついた。

「話変わるけど、次の街からしばらく行ったとこに、もう二人いるんだよね」

「片付けておきたいな」

「足をどうするか、で、フロータ買っちゃう?」

「あ、欲しい。免許とかいるのかな」

 百合亜は手を叩いた。

「買う時に操縦方法聞くだけでよかったと思います」

 エヴェリナは顎に人差し指を当てた。

「じゃあ買おう。どんなのがいい」

「馬車みたいなの」

 百合亜は頬に手をあてる。

「んー悪くないかな」

「わたしもお城で乗ったようなのがいいと思います」

「あたしも賛成です」

「決まりだな」


「あいつらまるで旅行か何かと勘違いしてるな」

「女とガキだけじゃねえか」

 楽しそうに盛り上がるうるかたちを横目に、他のチームはいい気がしない。


 しかし道中何度か出くわした害獣や邪獣は、そのほとんどを軽いノリでうるかたち五人が片付けた。


 街に着くとハンター組合でスケジュールを組んでもらい、エクソシズムを行う。

 どの発症者も、やはり美しかった。


 手順は基本的に同じだ。

 違うのは発症者の掌にミザリアのクロスを乗せ、皆の手をその上に重ねるというところ。


 眠りについたと思うと悪魔の夢だった。

 うるかと洋子はすぐに対処したが、エヴェリナたち三人はその異様な景色と悪魔の不気味さ、そして数の多さに圧倒された。

 しかしエヴェリナが突撃すると皆あとに続いた。

「解き放て雷撃の垓環、レイニーサンダー」

「解き放て太陽の垓環、レイニーサン」

「解き放て溶岩の垓環、レイニーラーヴァ」

 無数の走り寄る悪魔の頭上に、雷の、レイザーの、溶岩の、雨が降り注いだ。


 下級悪魔は一瞬にして消し飛んだ。

 あまりのあっさり片付くものだから、うるかも洋子も呆気にとられた。


 囚われていた女性解放すると、護衛しながら進み拷問しながら悪魔の名前を聞き出す。

 口を押さえ顔を背けていた百合亜が、何体目かで言いだした。

「ちょっとわたしにもやらせて」


 うるかが魔法陣を施した退魔の短剣で、無力化した悪魔の目をえぐり出す。

「右目で左目見たことある?」


 全員が背を向けると口を押さえると、逆流しそうな昼食を押し留めた。


「自分の目玉は美味しい?」

 眼球を不気味な口の中にねじ込んだ。


 皆木陰などに走る。


「さあ、次は新鮮なホルモンを食べさせてあげるわ」


 不気味な世界に百合亜の不気味な声が響く。


『我が主、あの名は本物でございましょう。あれで嘘をつけるなら、まさに悪魔です』

 ミザリアが話し掛けてきた。



 悪魔が五体向かってきた。

「わたしのやらせて下さい」

 エヴェリナが退魔の剣を抜くと駆け出していった。

「解き放てミスリルの垓環、覚醒ミスリルシールド!」


 盾で攻撃を受け、そのまま身体を回転させて胴体を二つに裂く。

 悪魔が飛んで背後に回れば、振り向きざまに首を落とした。

 盾と剣を見事に使いこなしている。

 十年間、研鑽(けんさん)を積んだと言うだけはある。

 一人で見事に五体の悪魔をさばききった。



 食事時はまさにピクニックだ。

 囚われの女性も含め、みんなでワイワイ楽しみながら食事をする。笑い声が絶えることは無く。まるで宴会だった。


 昼過ぎからはベッテも負けていなかった。

 八体の悪魔が一斉に現れ皆身構えたが、一人冷静に対処した。


「解き放て溶岩の垓環、ライジングラーヴァ!」

 ベッテの叫びに呼応して、悪魔の足下から無数の溶岩が吹きだした。

 悪魔は焼かれ岩の塊となる。

「よくやったベッテ」

 ベッテ口に小さな手を当てて笑った。

「拷問はよかったの?」

 百合亜は心配そうに短剣の柄に手を掛けた。



 ブライトネスゲートが見えた。

 いよいよボス戦と言うことだ。

「みんな気を付けて」

「ああ、ボスは手強いぞ」

うるかと洋子は刃を抜いて身構えた。


 空から左右六本の腕を生やし、それぞれに武器を装備している巨大な悪魔が、地響きを立てて下りて来た。

 悪魔は武器を振りかざし咆哮をあげた。


「解き放て――」

「アルティメットサン!」

「アルティメットサンダー!」

「アルティメットラーヴァ!」


 レイザーが、稲妻の束が、溶岩の塊が、悪魔の身体に穴を空けた。


 一瞬で決着した。

 うるかと洋子は俯いて刃を納めた。



 四人を救出したあとは、約束通り馬車のようなフロータを買った。


 操縦席には操縦者を入れて三人、後部座席は広くテーブルを挟んで合計六人が座れる。操縦席と後部座席は背もたれ以外仕切りが無く、シートを倒せば行き来出来る。窓は多くドアは観音開きで開口は広く作られていた。


 操縦は余分な機能が無く思っていた以上に簡単であった。

 フロータは、うるモービルと名付けられた。



 それで隣町まで行きさらに発症者を二人救出した。


 帰路は自分たちのフロータで代わる代わる操縦して、護衛に付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ