第十八話 戦士育成講座
初仕事を終え洋子先輩と共に王都に帰還した。
もう王都がそして宿が我が家のような気がする。
僕はリュックの奥から取り出した邪慾のネクロノミコン第四集、第八集、第九集を開いた。
攻撃用の指輪と防御用の指輪を作成するためだ。第九集のイラストを見てネコムスのところへ急いだ。
相変わらずゴザの上に宝石を並べ、だるそうに片ヒザを立てて座っていた。
「指輪を見せてもらいたいんだ」
「いらっしゃいませだニャ」
「まだリハビリ中か」
「そう簡単には治らないニャ。どんなのが欲しいニャ」
「まず、黄色い石、白っぽいオレンジの石、赤い石、小さくていいんだ。土台は……」
「これなんかどうだニャ」
ネコムスは数ある宝石の中から、パッと三つ選び出した。手に取るとリングのデザインはまさにイラスト通りだった。
「これだよこれ、いい仕事するなぁ」
「褒めるなよ、照れるニャン」
思わず顔を上げてしまった。
「今ニャンて」
「言ってないニャ」
これは確信犯だ。
「あとねプラチナっぽい艶のある銀色で、円盤状の飾りが付いたものが三つ欲しいんだよね。えーと」
「これはどうだニャ」
ネコムスはすぐさま指輪を一つつまみ上げた。
指輪の中央に小さな円盤が付いており、渦状に蔦や葉っぱがが浮き彫りになっていた。まさにイラスト通りだ。
「凄いぞ、マジ凄い、おまえ天才だろ」
「やめるニャン、恥ずかしいニャン、褒められるの苦手だニャン」
突っ込むのはやめとこう。リハビリだ。
「三つある?」
「待つニャン」ごそごそと後ろの段ボールをあさった。「あったニャン三つあったニャン」
ネコムスはすごく嬉しそうだった。
宿に戻ると四人はショッピングから帰っていた。
「これから集中するから」
邪慾のネクロノミコンを広げ、僕は極細マジックを使い指輪の内側に古代パブリス文字で、一文字ずつ丁寧に書き込んでいった。
指輪は全ての文字を書き終わると、輝き内側のインクの部分は刻み込まれたようになり、石もリングの部分も質感が変わっていた。
全ての指輪を終えると、みんなに説明していった。
「まずこれはミスリルシールドの垓環、三人に」
エヴェリナとベッテそして百合亜ちゃんに渡した。
「わたしの分は?」
洋子先輩が不服そうにした。
「いらないでしょう。刀は両手で使うと思いますし、僕の分もないんですよ。それに食事のあとでやってみたい事があるんですよね」
「そうか、期待しておこう」
「この指輪あたしには大きすぎると思います」
「左の中指にはめて、みんなも」
ベッテが指輪に小さな中指を通すとキュッと縮まって、ジャストサイズになった。
「凄いです。綺麗」
ベッテは掌をかざして笑顔を湛えた。
他の二人もはめるとぴったりのサイズになった。
「よし、練習だ。拳を握って左手を突き出し、覚醒ミスリルシールド! って言ってみて」
「え、言うの!」
百合亜ちゃんは少し引いた。
「覚醒ミスリルシールド!」
エヴェリナとベッテは抵抗無く叫んだ。
するとリングの円盤が見る見る大きくなり、直径一メートルくらいになった。
みんな感動していた。
「凄いな、重くないのか」
洋子先輩は興味津々だった。
「全然重くありません」
エヴェリナが答えると感心していた。
「さすがはミスリルだな」
さすがは中二病だな。
流石に百合亜ちゃんも黙っていられない。
「覚醒ミスリルシールド!」
盾が展開し大興奮だ。
そんな三人に攻撃用の指輪を渡す。
「百合亜ちゃんはイメージ的これなんだ。太陽の垓環」
黄色い石の入った指輪を渡すと、綺麗ぇと喜んだ。
「エヴェリナはこれ、雷撃の垓環」
受け取る前から目を輝かせていたエヴェリナに、白っぽいオレンジの石が入った指輪を渡した。
ベッタには赤い石の入った指輪を渡す。
「溶岩の垓環。三人とも右の人差し指にはめて、ここではちょっと試せないから今度外で試してみよう」
「わたしのは」
不服そうに洋子先輩が訊いてきた。
「食事の後です」
食後、洋子先輩の刀に魔法陣と古代パブリス文字を書き込んだ。
刀身は輝いたが、文字や魔法陣は刻まれて無かった。
「何か変わったのか」
「そのはずです。みんな離れて。洋子先輩、燃え盛れ炎、で炎のエンチャント、猛り狂え稲妻で雷のエンチャントが付与されるはずなんです」
「燃え盛れ」既に言い方が違う、本物だ。「炎!」
刀身が炎に包まれた。
みんなどよめく。
「凄いぞ、猛り狂え稲妻!」
刀身が激しくスパークする。
「ここでやっちゃあダメですけど、強く振ると炎や稲妻が伸びてリーチが長くなり、思い切り振り切ると、数メートル先まで属性のエネルギーが、飛んで行きます。ここでやらないで下さいよ」
「それは振りか?」
「……違います」
「エヴェリナは剣が扱えるんだっけ」
「十年前にご主人様に言われたので、我流で」
「じゃあ明日は武器を買いに行こう」
翌日ベッテと百合亜ちゃんには短剣、エヴェリナにはショートソードを買った。
そのまま郊外に行き、邪獣や害獣の出るという森に来た。
洋子先輩はエンチャントとして思いきり振って、炎や稲妻を飛ばして興奮していた。
エヴェリナとベッテ、百合亜ちゃんには垓環の使い方を教えた。
「解き放て太陽の垓環、解き放て雷撃の垓環、解き放て溶岩の垓環、で起動するんだ。そして、アルティメットサン、アルティメットサンダー、アルティメットラーヴァで指輪から、直線的な攻撃魔法が撃てるはず」
三人は人のいない方に向かって、右手を伸ばし真言を唱えた。
百合亜ちゃんの指輪からはレイザーが、エヴェリナの指輪からは稲妻が、ベッテの指輪からは溶岩の弾丸がそれぞれ発射された。
「あたまの真言をライジングに変えると地面から、レイニーに変えると上から降り注いでくる」
三人とも上手くいき大喜びだった。
剣や短剣の扱い、指輪や盾の扱い、戦い方など教える自信が無かったので、かなり悩んだが、ミザリアさんに出て来てもらい指導してもらうことにした。
洋子先輩がクッションになったのか、三人とも意外と普通にミザリアさんを受け入れてくれた。
僕が意識しすぎなのかなぁ。
実践編としてミザリアさん同行の元そのまま森に入り、害獣や邪獣を狩った。
ミザリアさんの指導がよかったのか、みんな見る見る成長していった。
それを見た僕はある決心をした。
「ミザリアさん、刹那のリストレーションをいっぱい持って行って、悪魔の夢の中に、全員で入る事って出来る?」
「今の皆様でしたら大丈夫だと信じております。手の握り方を変える必要はありますが、もちろん可能でございます」
お城を訪ね国王と会った。
「ローゼンヴェリー、国中のデーモンシックを治したい、全ての場所と人数を教えてもらえないだろうか」
と言うのも、定番のあれをしたいからなんだ。
そうだ城を出る前に会っとこう。
「何の用だ」
相変わらず台場功也はむかつくぜ。
「百合亜ちゃん元気?」
「うん、すごく元気、生き生きしてるよ。毎日が楽しいって」
入江シオンに答えた。
「ふん、騙して連れて行っといて、楽しむ努力でもしないとやってられないだろう」
ほんと台場、性格悪いな。
「琢磨くん、今きっと手古希や根津くんかなりの値が付いてると思うんだ」
琢磨大怪獣が悲しそうに俯いてる。ほんとに親友なんだな。
「それで、思いきって荒稼ぎしようと思ってるんだ。もちろん命がけだよ」
琢磨が僕を見る。
「自慢か」
「おまえは黙れ」
マジむかつく。
「そのお金で買おうと思ってる。根津くん。そして自由にしてあげるつもりなんだ。その時一緒に生活手段考える人、いた方がイイと思うんだよね。僕も一人だったらここまでやってこれなかったと思う。自由になったら声かけるからさ、もう一度考えてみてよ。お金が貯まるまで、一、二ヶ月かかると思うけど」
琢磨は僕を見つめたままだった。




