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十六話 新たなる生徒

 頬を優しく撫でる風、よく冷えたアプレーゼ、そして熱々のケンタルキフライドチキン。

 最高じゃん。


 食堂にはたいていフライドチキンとケンタルキフライドチキンの二種類があってさ、僕は味が濃いめで衣が厚いケンタルキフライドチキンの方が好きなんだよね。地元の人はケンタって呼んでるよ。


 イエオリは貴族押しでグイグイくるかと思ってたけど、どちらかというと、地球のことの方が興味あったみたいで、それも純粋に個人的な興味みたいだった。


 女子三人組もこのドライブ仕事を絶賛楽しみ中。


「エネルギーが粒子の分裂や融合ですか、面白いですね」

「それ自体じゃなくて、そのエネルギーを電気に変えるんだよね。あとは化石燃料かな」

「化石燃料、ガイアにもありますが環境によくないとか」

「うん、空気が汚れる」

「こっちはもっぱら、燃石ですね。あとはめったに取れませんが、ボイドの持っている純核です」

「ボイド? 純核?」

「たまに発生するんですよ、ボイド。そいつの中にあるのが純核です。燃石の上位互換で純度が高く反応効率がいいので高く売れるんです」


 ボイド……聞いたことがある。と言うか描いたことがある。設定も色々悩んだような気がする。第何集だったけな、今度全部読み返しとこ。


 このフロータ、音も静かで道のデコボコも拾わないから快適なんだけど、時速二、三十キロしかでないらしい。これは大きいから特にスピードが出ないんだとか。


 トラックの上に乗っている見張りから声が掛かった。

「五十メートル程先邪獣三体」

「我が行こう」

 颯爽(さっそう)と立ち上がり、横のステップから降りる。

 トラックが惰性で進むため小走りでトラックの前に出る、トラック止まらない、小走りで逃げる。

 邪獣いた。

 デカい。サイくらいありそうなのが三体。なんか綺麗な宝石みたいな角が付いてる。


 ドラゴンブレスで頭部に狙いを定め、引き金を絞る。

 バスッ!

 サイの脳天を打ち抜いて、はい、一匹。

 後二匹も、こっちに向かってきたけど冷静に射殺。

「お見事」

 イエオリが立ち上がって手を叩いた。


 ミザリアさんに収納しようとしたら、話し掛けてきた。

『リペアして解体されてはいかがでしょうか』

『僕そういうサバイバル的なの出来ないんです』

『わたくしめがやらせて頂きます』

『他の人も見てるし……』

『クロスをかざしてリペアを掛けて、収納して頂きましたら、わたくしめの方でやらせて頂きますが』

『いいんですか、そこまで甘えてしまって』

『何故そのようなことをおっしゃるのですか、馬車馬の如くもっとこき使ってくださいませ』

「……ではお願いします。リペア」

 邪獣の頭部の弾痕が消え、綺麗な状態になった。

 三匹とも次元の裏に入れるとバルコニーに戻った。


「いやーさすがでございます」

「たかが三匹」

「三頭」

 百合亜ちゃんがきつめに指摘してきた。

「まあ、僕には匹と数える程度の大きさだ」

 邪獣と害獣の違いってどう見分けるんだろう。

 エヴェリナの話しだと害獣も結構大きいらしいし。

「あの大きさだと何頭くらい入るんですか、そのストレージロングネックレス」

「うんーまあ、そこそこ」

「こっちにも似た魔法があるんですか」

 百合亜ちゃんナイスフォロー。

「どれくらい入るんですか」

「特殊な金属と燃石で作ったものがあります。容量は価格によりますが、今のサイズの獣なら五体前後ですね。あとその銃は何発も弾が入るんですね」

 何発もって、三発しか撃ってないんだが……

「こっちは何発?」

「一発です。害獣はどうにかなるんですが、邪獣は大口径の銃じゃないと倒せないんですよ。ましてやボイドなんて。大口径の銃で撃つと肉や皮に傷が付くので、今みたいにいい状態で納品すれば結構な値が付きますよ」

「肉?」

 百合亜ちゃんは驚いた。いやいやいや、僕はこっちに来て食べた肉、全部吐きそうだった。

 そういう見た目なんだよ。

「そういう肉の専門店がありまして好きな人が通うんです。一般の店にはまあ出ませんね」


 僕たちはそんな話をしながら目的地トリントの町に着実に近づいていた。


 最終日、小型だが動きの速い邪獣が複数体出た。


 ドラゴンブレスで応戦したが、なかなか当たらず苦戦した。

 すると一頭がバルコニーに向かった。

 慌てて連射してなんとか倒せたが、中はプチパニックになっていた。

 どうにか全て倒し収納して戻ると、全員緊張してた。なんとか護身だけでも出来るようにしなきゃ。


 トリントの町に着くと正門前で兵士たちが十数体の邪獣と戦っていた。

 その中には一人の学生服を着た女子もいた。

 異世界人だ。


「ここで待ってて」


 僕は駆け出し参戦した。


 ある程度近づくと一頭に付きドラゴンブレスを三発ずつお見舞いした。

 女子は日本刀で戦っていた。動きは素晴らしい。

 肩より少し長い髪をなびかせて、刀を振る様は見とれるほどだ。

 兵士たちの前に出て、眉間を一発で撃ち抜く。

 女子の背後から迫って来たので、そいつには五発お見舞いした。


 ほどなく邪獣は全て倒れた。


 兵士たちは女子と僕に丁寧に頭を下げると、早々に去った。


 倒した邪獣は全てあげようという暗黙の配慮だろう。


 女子は歩み寄ると声を掛けてきた。

「危ないところ助けてくれて感謝する」

 手を差しだしたので握手した。そんな剣道的な事をやってる手とは思えない、柔らかい感触だった。

「わたしの名は十六夜恋歌(いざよいかれん)だ」

 ん?

「最近ホライズンディストーションが起きているらしく、森が騒がしい。イクリプスが動き出したのではと森を探索していた」

 もしかして同業者?

「すると邪獣の巣とエンカウントしていまい、この名刀」

 腰に刺してる刀今抜くな。でも、刃紋綺麗。鞘もかなり上質感あるし。

「長竿反り返り丸ならいける、そう思ったのだが無理だった。それで戦略的撤退をしてここまでおびき出したんだ」

 おまえが呼んだのか――

「一頭でも侵入をゆるせば……この町は終わっていた」

 いや、兵士がなんとかしてくれてたと思う。

「君は強いな、ガンナーか」

「あ、その前に同じ学校ですよね」

 僕は自分の胸のブレザーに付いているエンブレムの位置を指した。

「桃園第二高校。僕は一年です」

「桃園第二高校か、日本から転位して来たんだな。わたしは三年だ」

 僕が言うのもなんだけど、高三で中二病って……

「他に転位した人はいるんですか」

「確か二、三人いたと思う。興奮のあまりこの名刀、長竿反り返り丸と伝説の銃、悦楽歓喜を取りに行くので精一杯だったからな。席が窓側の一番前なんだ」

「何で銃使わなかったんですか」

「使わなかったんじゃなくて、使えないんだ」

「見せてもらっていいですか」


 フリント銃のようなデザインだ。刀といい趣味がいい。

 森に向かって引き金を絞ってみたが、ロックされていた。安全装置だ。

 見てみると、人差し指の辺りにボディに埋まる形でスイッチがあった。

 森に向かってもう一度引き金を絞る、


 ズドンッ!


 銃口が火を噴いた。

 数秒後、メキメキと音を立ててちょっとした太さの木が倒れた。

 僕は、十六夜さんカッコ仮名と顔を見合わせた。

「それ、五発入りなんだ。元は百均の水鉄砲なんだが、竜狩りの弾丸が無くなったら水を入れればいいのか」

「いいえ、僕のと一緒なら」

 親指を探るとレバーがあったので、押してみると銃口の下から筒が出て来た。

「これで、二、三秒待てばリロード出来るはずです」

「おー、わたしのイラスト通りだ」

 やっぱりか、中二病は何らか補正が掛かり、他はそのまま。十六夜さんカッコ仮名とは、じっくり話さないといけないな。

「変わったマガジンですね」

「いやらしいだろう。棒が穴に入るのって」


 ただの中二病じゃない!


「この邪獣、組合に持って行きますよね」

「わたしは安物を買ってしまったから、一度に二、三頭しか運べず、結局新しいのが買えない、という悪循環だ」

「じゃあ全部運びますよ」

「運ぶって半分くらいは君が倒したろ」

「いや、ここに来る途中でたくさん狩ったので、大丈夫です」


 組合に納品して、正門前の邪獣の代金は全て十六夜さんカッコ仮名にあげた。

 解体は組合が驚くほどの出来栄えらしく、イエオリさんが言う通りかなりの値が付いた。

 獲物を譲ったお礼にと夕食は、十六夜さんカッコ仮名がご馳走してくれる事になった。


 課題はエヴェリナとベッテそして百合亜ちゃんの自衛手段の確立だ。


 あとは十六夜さんカッコ仮名と、情報交換。

 そして何よりスカートが短すぎる事の指摘。

 何しろ、戦ってる間中ずっとパンツ見えてたし……


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