第十三話 僕、いい人だよね
男子一人に女子三人って、めちゃハーレムじゃん。
百合亜ちゃんの国民証は発行してくれて、ある程度まとまったお金もくれて、王家のみんなから気兼ねなくいつでも来いなんて、特にアッシリアはガチめで言ってたから訪ねて行ってもいい感じだよね。自分から巣立って正解だわ。
残り三人もさっさと出ないと特典なくすよ。
百合亜ちゃんには服と財布をプレゼントということで、エヴェリナの壊滅的なセンスは買い物を遅らせると判断し、ホテルで留守番してもらった。理由はもちろん話してない。
百合亜ちゃんの選んだ服は、水色のブラウス風のシャツに革のベスト、スカートは白のフレア、それに厚底のブーツ。
そんな感じのを何着か買った。
宿の部屋はさすがに四人部屋は無い、と言うか相部屋として全て使われていた。
どうしようか迷っていると、ベッテがエヴェリナと一緒に寝ると言い出した。エヴェリナもベッテと、って。
僕が寝てる間に実はベッテ、エヴェリナのベッドに潜り込んでたらしい。
寂しかったのかな。
まあいい。
これで部屋問題は片付いた。
部屋で衣類を整理していると、
「これさ、僕のもあるし百合亜ちゃんの制服も入れて、みんなの着替え入れると荷物パンパンだよね」
「背負うの邪魔ならわたしが背負いましょうか」
エヴェリナが心配してくれる。
「……いや、それはなんか駄目な気がする」
とか話してるとミザリアさんが突然話し掛けてきて、
『わたくしめがお持ち致しましょうか?』
『いや、その格好で街中歩くのはちょっと……』
『いえ、あ、もちろんお申し付け下さればそれも喜んでやらせて頂きますが、クロスをかざして頂ければ次元の裏に収納いたします』
『どれくらい入るんですか』
『この世界と同じ広さがございます』
『え! 何でも入れていいんでしょうか』
『命あるもの以外であれば。あと次元の裏は時間が止まった状態です。新鮮な物は新鮮なまま、熱い物は熱いまま、冷たい物は冷たいままで運搬する事が可能でございます』
メチャ便利。何で早く教えない。
『凄いんですねミザリアさんって』
『わたくしめなど、この程度の魔法しか扱うことの出来ない、出来損ないのゴミクズでございます』
これは謙虚を通り越してるな。ミザリアさんって物知り博士の設定なんだけど、魔法も勉強で覚えたのかなぁ。
早速リュックにクロスをかざしてみた。
「ミザリアさんお願いします」
大きなリュックがクロスに吸い込まれた。
一同拍手。
「どうやったの?」
百合亜ちゃん食い付く食い付く。
クロスを見せた。
「この人が博覧強記のミザリアさんって言うんだけど、彼女が魔法で次元の裏に収納してくれたの」
「へー、すごく綺麗」
「ん、確かに綺麗なんだ。だけど実物は痛々しいんだよ」
「モデルがいるの」
「モデルあったの。まあ、そのうち目にする機会もあるよ」
そのあと、宝石加工が得意なネコムスを呼んで食堂で食事会をした。
ウエイトレスのマタタビは料理や飲み物を持ってくるたびに、ネコムスに絡みネコムスもいちいちそれに噛みついていた。
百合亜ちゃんも初めてのお酒、アプレーゼにとても満足していた。
宴もたけなわ、僕は本題に入った。
「はいこれ」
褒美でもらったお金から一千万を麻袋に入れてネコムスに差し出した。
「なんだよこれ」
ネコムスは中を見た。
「これで国の借金返せよ」
「もらえるかこんなもん」
「じゃあ貸す。何年、何十年掛かってもいいから返せ」
ネコムスは中を覗きながら瞳を潤ませた。
「金利は」
「耳と尻尾の充電を忘れないこと、語尾にニャンを付けること」
「借りな」
マタタビがネコムスの肩に手を置いた。
「いいのか、本当に」
「ああ、どうせあぶく銭なんだ」
「本当に何十年も掛かるぞ」
「いいよ」
「何十年掛かっても返せないかも知れないぞ」
「いいよ」
ネコムスの目尻から涙がこぼれる。やっぱり帰りたかったんだな、国に。
ネコムスは何度もありがとうと言いながら、お金を手にした。マタタビも何度もありがとうと言いながら、涙を流した。
それから僕の過酷な日々が始まった。
一週間をかけて五人のエクソシズムを休みながら行った。
二つの教会の枢機卿はしつこいくらい立ち会いを要求してきた。当然断ったがな。
国王が決めた順番は、侯爵令嬢、公爵夫人、公爵令嬢が二人、伯爵夫人、だった。
不思議と王妃もそうだったが、歳に関係なくみなさん美しかった。悪魔の戦略か?
戦いは凄絶を極めるものだった。三度死にかけた。
嬉しかったのは、アッシリアや王妃はもちろん、救出したみなさんがその都度応援に来てくれた事と、夢の中に持って行く食料を用意してくれた事だ。
もちろんエヴェリナとベッテも頑張ってくれた。
百合亜ちゃんは初めて見た時その壮絶さに、ドン引きしたらしい。
こうして約二千五百万ギルが貯まった。
売れ残ってればいいなあと、奴隷市場に四人で向かった。
主人に声を掛けると、残念ながら売れ残っていた。
倉庫に入ると随分躾けられたのか静かになっていた。
二人買おうと思う。
「おい、中二病じゃねえか。俺を自由にしろ」
不覚にもフードを被るのを忘れていた。
「二人ですと四千万でございますね」
「え、一人一千万じゃないんですか」
「このうるさい男が、あなた様と同じ異世界人だと」
「ああ」
「今、あなた様は悪魔を祓える真のダーケス・ナイトとして名をはせております。そうしますと、この男があなた様に出来る事は自分にも出来ると言い出しまして、それで値がどんどん吊り上がった次第でございます」
馬鹿かこいつは。いや知ってたけど。
どうすんだよ足んねえよ。一人だけだと面倒みなきゃなんないじゃん。
「こいつに、そんな能力は無い」
「ある。もっとスゲー事が出来る。何しろこのガキの師匠みたいなもんだ」
馬鹿がのたまう。
どういう戦略なんだ?
「そんな値段で売れるの?」
「今も値が上がっております」
無理だ諦めよう。
「僕は降りた」
「おい薄情もん。一生恨んでやるからな」
「好きにしろ。自分で自分の首絞めてるのが分からないのか。あと根津くん、琢磨くんが城にいるよ」
「呼んできてくれよ」
「ここにいる事は伝えてあるから、来たければ来るんじゃない。じゃあ行くよ」
「おい待て、自由にしろ」手古希マジむかつく。
「お金がないんだよ」
「それくらい稼いで来いや」
百合亜ちゃんが奴隷商の棒を奪い取って、手古希の檻をこっぴどく叩いた。
「あなたたちを自由にしようと思って、うるかくんがどれだけの思いをしたと思ってるの。一生檻の中にいなさいよ」
ガンガン鉄格子を叩く。
「あ、いや、ただ俺は自由になりたいだけなんだ」
「なら言い方があるでしょう」
「いや、ずっと檻にいたらこうなるんだよ」
「誰か他の人に買って貰ったら、行きましょう」
奴隷市場を出た。
「さっきは怒ってくれてありがとう」
神妙な顔してっぽい事言ったりしてね。いかにも苦労してる感出したりして。
「うんう、檻に閉じ込められて大変なのは分かるけど、うるかくん命がけなのに……」
「ああ……まあ……」
とか言って、美女と二人旅はそれなりに楽しい事もあるんだよね。
「でも、ほっとけないよね。このままでは」
いい人アピールで追い打ち。
「いいわよ放っておいて――」
あれ?
「誰かいい人が買って行って、いい暮らしさせて貰えるんじゃない」
「ん……でも稼がなきゃならないのは事実だし、エヴェリナとベッテは何かいい仕事知らない?」
「わたしたちはどうか分かりませんが、ご主人様はお強いので、プロテクターかハンターはいかがでしょうか」
「プロテクターかハンター?」
エヴェリナに訊き返した。
「はい、護衛か狩りです。動物の解体は出来ますか」
「いや」
「じゃあ、プロテクター。護衛の仕事ですね。商人などを目的地まで害獣や邪獣、盗賊から守る仕事です」
面白そう。
「やってみる? みんなでパーティー的なの組んで――旅行みたいで楽しそうじゃん。やってみようよ――」




