第十一話 クラスメイト
国王から褒美を貰った。
小さいが小綺麗な箱で、中には綺麗な状態のプラチナ金貨が二十枚入っていた。
アッシリアを救った分が以前貰ったのとプラス今回十枚で、王妃を救った分が十枚
だそうだ。
王妃の分はもうちょっと欲しいけど、たちまち命にかかわる訳でもないし、そもそもプラチナ金貨二十枚って、一千万ギルなんだよね。物価からして一ギル一円弱って感じかな。まあ、物によって価値観違ったりするけど。
王妃はもっと出して欲しいと言ったらしいが、前例として基本料金みたくなるし、他のデーモンシックの人がお願いしづらいだろう、との配慮からこの金額になったらしい。
ちなみに悪魔の夢の中で死ねば、現実でも死ぬ。
今後、やるとも何とも言ってないんだが……
やるなら声を掛けて欲しいと、国王は言ってきたので、なんか順番的な事があるんだろう。
今後ここで生きていくのなら、お近づきの印にって感じでいいのかも。
王子たちの高感度は、全く上がらず。絶対跪かないと心に決めた。
アッシリアが異世界人に会わせるからと、訓練場まで行く途中、純黒聖堂会の枢機卿とかいうのが話し掛けてきた。
「純黒聖堂会の枢機卿を努めております、エギルと申します。この度は王妃陛下のエクソシズムを成功なさったとか、どのようになさったのでしょうか、参考までにお聞かせくださいませ」
「今、たった今、会った男に聞かせられる程、易い技術ではない」
「大変失礼いたしました」
全く悪びれる様子もないし、感じわる。
「ダーケス・ナイトだとか、本物でございますか」
「はい、本物でございます」
何故かアッシリアが答えちゃった。
「これは重ね重ね大変失礼しました」
「それではごきげんよう」
アッシリアちょっと怒ってる?
そのあと今度は光明神殿教会の枢機卿という奴が、似たようなことを訊いてきて、似たようなやり取りをした。
やっぱりアッシリアちょっとキレ気味だったんだよね。
難しいよね。自分たちが出来なかったのに、ぽっと出の生意気な小僧が出来ちゃたんだもんね。
で、訓練場に着いたら着いたで、アッシリアが異世界人を呼びに行っている間、僕たち三人になったのを見計らったように、盗賊退治の時、僕を睨んできた装備の違う兵士が近づいて来た。
「貴様が王妃陛下の悪魔を祓ったらしいな」
そいつは小声で訊いてきた。
「え? あ、うん」
面くらい、つい素で答える。
「俺は信じない、教会や聖堂会ですら出来なかった事を、貴様のような小僧に出来るはずもない」
「信じないって、王妃は元気になったじゃん」
「貴様が忍ばせたんだろう、悪魔を」
「はあ?」
つい大声を出した。
「どうかなさいましたか」
アッシリアが戻ってきたら、そいつはさっさと立ち去った。
「あいつは誰?」
「近衛隊長のクラースでございます。主にわたくしの護衛をしております。何か失礼でも?」
「いや、何でもないよ」
アッシリアの後ろを見ると、四人いた。
「琢磨大怪獣さんと入江シオンさん、台場功也さん、そして」
でたっ、運命的出会い。
「桜井百合亜さんです」
「藤之木じゃねえか」「藤之木くんか」「藤之木」
琢磨と入江と台場に続いて百合亜ちゃんは、確かに言った。
「うるかくんじゃないの」
苗字じゃなく名前で呼んでくれた。
三人は甲冑を身につけていた。
「お知り合いなのですか」
「うん、隠すつもりはなかったんだけど、僕も異世界から来たんだ」
アッシリアは今まで話さなかった事を、特に気にしている様子はなかった。
それよりも、何か別の問題を抱えているようだ。
「何かまずいことでも?」
「あ、いえ、何でもありません」
何か事情がありそうだな。
「何で三人は鎧を着てるの?」
それは、とアッシリアが言いかけたら琢磨がしゃしゃり出てきた。
「俺たちは第二王女殿下の近衛兵になる訓練をしてるんだぜ」
みんなにも補正が掛かっているのか?
入江が陽キャ特有のグイグイ来る感じで肩に手を回してきて、小声で訊いてきた。
「なんか、王女殿下と親しい感じだけど、特別な関係?」
「ああ、彼女が危ないところを助けたんだよ」
「マジで、どこまで行った感じ」
「どこにも行ってないよ」
入江を強引に離す。
すると、憎き台場がのたまった。
「二人ともアッシリア第二王女殿下の前で、失礼だぞ。それと藤之木、言葉遣いに気を付けろ、我々の品位まで問われるんだぞ」
間髪入れずアッシリアがカマしてくれました。
「うるか様は構わないのです。むしろそうして頂きたいのです」
胸の内でガッツポーズ取るしかないっしょ。
台場はしれっとしてるが悔しいに違いない。と言うか謝罪しろよ。品位が問われるだろうが。
「みんなは何か困ったことない?」
「君に訊かれることじゃない」
台場相当効いてる。
「百合亜ちゃんは?」
「え……ええ、今のところは。うるか君は……どうやって生活してるの、他にクラスの生徒とかに会った?」
「生徒って言うか手古希と根津くん。会ったって言うか向こうは気付いてない」
「根津は、根津牙命羅どこにいるんだ」
「奴隷市場で売られてる」
「奴隷? そんなのがあるのか」
台場がきれい事をぬかす。
「この二人も奴隷だったよ」
エヴェリナとベッテは会釈した。
「貴様、奴隷を買ったのか!」
「解放するためにね。今はこの国の国民だよ」
アッシリアは口に手を当てて、エヴェリナとベッテを見た。
「ではあの時お渡ししたお金は、ほとんどお使いになったのでは」
「おかげで助かったよ。それ以外の生徒とは会っていない。生活は今のところ褒美とかでなんとかなってるよ。」
百合亜ちゃんをみた。彼女はぎこちない笑顔を見せた。
彼女もやっぱり問題を抱えてる……
「アッシリア、二人」エヴェリナとベッテを見て、「四人で話せない?」
屋根の着いた丸いとこで、ザ・お茶会がが開かれた。お菓子がのった皿がなんか積み上がってて、メイドさんがお茶を入れてくれた。
エヴェリナとベッテがお菓子を見つめながら、太股の上で握り拳を作ってたから、お菓子を取ってあげた。
「あの四人は一度にお城へ?」
「いえ、突然人が現れたという報告を受け、兵士が保護に向かったのです」
「今から訓練して、どれくらいで近衛兵になれそう」
思いきって直球を投げてみた。百合亜ちゃんには、現実が見えているんだと思ったから。
「……数年、数十年。王城の兵士を目指すものは、物心ついた時から訓練を始めます。あの年齢からでは正直難しいかと。もちろんうるか様ほどお強かったり、特別な才能があれば、席を用意してでも迎え入れたいところなのですが」
「筋もあまりよくない」
「……」
アッシリアは無言で答えたあと続けた。
「百合亜さんなら、頭もよいですし話も出来ます。だから、わたくしの側近ということも考えておりますが、他の方々は訓練もあまり熱心ではございませんし、特に何かに秀でたものも見つかりません。国王陛下も兄弟、近衛隊長のクラースもあまり好印象を持っておりませんので、特別な職を与える事にも注力しておりません」
「経費対効果、あまり長く抱えていられない、と言うこと?」
「……そんな中、百合亜さんだけと言うのはいかがなものかと、皆」
「話してみようか?」
アッシリアは顔を上げた。
「お願いしても?」
王室内でも、かなり比重の高い問題のようだ。
その件が片付くまで、数日お世話になることにした。
エヴェリナとベッテはたいそう喜んでいて、見ているこっちまで嬉しくなる。
悪魔払いを何軒かこなして、手古希と根津を解放してやるかな。
あいつらのために命張るのって、なんかやだな。
いずれにしても、アッシリアの悩み、王室の考えをどう伝えればいいやら。




