これは契約。利益のために。
元気だい。
初めてこの星に降り立った日から約半年が経過した。
俺は、ニンゲンの集落で暮らしている。
あの日、ニンゲンたちは話し合いをしていた。
俺をどう扱うかについてだろう。
その結果、一つの契約を結ぶことになった。
ニンゲンは俺に知識を与える。
俺はニンゲンのために力を貸す。
我ながら、よくできた契約だと思う。
この契約を考案したニンゲンは、村長と呼ばれ、村人たちから親しまれていた。
どうやら、かなり頭が切れる男らしい。
あの日、俺が目撃した戦争。
あれは、本来ならば村が全滅してもおかしくないほどの戦いだったそうだ。
それを村長の策略と、村の男たちの抵抗によって、被害を最小限に抑えた。
しかし、予想外のことがおきた。
女子供が避難していた場所を守っていたニンゲンが、敵に寝返ったのだ。
その結果、敵の侵入を許し、村は略奪を受けることになった。
そして、戦いが終結したころに現れたのが俺だったと言う訳だ。
そこからは事が素早く進んだ。
俺と村長で契約を結んだ。
契約の方法は、紙に両者の指を赤い液体に浸して押印するというものだった。
ニンゲンにとっては、これで十分な契約らしい。
なんと簡素な契約だろうか。
そう思いながらも、まずは従うことにした。
最初に協力したことは村の復興だ。
崩壊した家屋を立て直すのに人間は、かなりの労力を必要とした。
だから、俺が立て直してやった。
以前よりも頑丈に、今までより早く。
ニンゲンたちは、あっけにとられたような表情をしていた。
やがて、俺に尋ねた。
「すごい! すごい! 本当に神様みたいだ!」
「他にもできることがあるのか? 何ができるんだ?!」
その言葉をきっかけに、俺は自分に何ができるのか、片っ端から試してみることになった。
すると、ニンゲンたちは俺の力について考え始めた。
彼らによれば、俺の力は大きく五つに分類できるらしい。
固定。
加速。
境界。
因果。
改変。
もちろん、俺自身はそんな分類を必要としていなかった。
どれも、ただ俺ができることにすぎない。
しかし、ニンゲンたちは違った。
彼らは俺の力を理解しようとし、名前を与え、法則を見つけようとしていた。
理解できないものを、理解できる形に変える。
それもニンゲンという生物の性質なのかもしれない。
そして誰かが言った。
「あなたの名前は?」
ニンゲンは名前を重要視するようだ。
名前がないなら名付けたいと言い出した。
「ない。そして、不要だ」
名前を付けられるなど、冗談ではない。
名前とは、対象を他と区別し、呼び表すためのものだ。
だが、俺という存在を一つの言葉で表せるはずがない。
だから、俺もニンゲンを名前で呼ばない。
それに、俺はニンゲンのことを知れれば、それで十分だった。
そうして、時間は過ぎていった。
そして、再び争いの気配が近づいていた。




