こんにちは、ニンゲン。
まだいけます
生物は星に降り立った。
初めて目に入った光景は、争いの景色だった。
粗末な衣服をまとったニンゲンたちが、木や石で作られた武器を手に、互いに殺し合っていた。
その傍らでは建物が燃え、逃げ惑うニンゲンたちの声が響いていた。
生物は、ただそれを眺めていた。
なぜ、争うのか。
なぜ、同じ生物同士で傷つけ合うのか。
理解できなかった。
しばらくすると、争いは終わった。
勝者は倒れた者たちから物を奪い、敗者は何も残さず、その場に取り残された。
それでも、生き残ったニンゲンたちは動き始めた。
動かなくなった者にすがりつき、傷ついた者を助けている。
生物は不思議に思った。
先ほどまで互いを殺そうとしていた者たちが、今度は互いに手を貸している。
なぜだろうか。
生物には、ニンゲンの行動が理解できなかった。
彼らが何を恐れ、何を求め、何のために生きているのか。
知りたいと思ったのかもしれない。
あるいは、ただの退屈しのぎだったのかもしれない。
すると、一人の幼いニンゲンが近づいてきた。
「t!b#m%n%、k@d!s!i」
生物は困惑した。
生まれて初めて、誰かから言葉を向けられたのだ。
しかも、それは理解できない言語だった。
生物は、そう考えることで、胸の内に生じた微かな恐怖を押し殺した。
「……お前はなんだ。」
当然、返答はなかった。
幼いニンゲンは生物の手をつかんだまま、何かを話し続けていた。
しばらくすると、成長したニンゲンの言葉に寄せられ行ってしまった。
生物には、言葉の意味がわからない。
しかし、声の抑揚や表情、身振りから、何かを伝えようとしていることだけは理解できた。
生物は考えた。
この星のニンゲンを知るには、言語を理解しなくてはいけない。
そうして、生物は幼いニンゲンの言葉を聞き続けた。
その後も人間たちの会話に耳を傾け、同じ音がどのような場面で使われるのかを観察した。
物を渡すとき。
誰かを呼ぶとき。
大声を出しているとき。
そして、動かなくなったニンゲンを焼いているとき。
生物は、最初、それが弔いだとは知らなかった。
ただ、何度も同じ光景を目にするうちに、死者を悼むという人間の習慣を理解していった。
同じ言葉でも、状況によって意味が変わることがあった。
生物は、それらを一つずつ覚えていった。
ニンゲンの言語を学ぶ中で、生物はあることに気づいた。
初めて聞く言葉ばかりのはずなのに、どこか聞き覚えのある音が混じっていたのだ。
生物が知っている言葉と、ニンゲンが使う言葉。
発音こそ異なるものの、同じ意味を持つ言葉がいくつか存在していた。
偶然なのか。
それとも、何か理由があるのか。
生物にはわからなかった。
しかし、それを確かめるよりも先に、生物はニンゲンの集団へと歩み寄った。
記念すべき、初めての言葉。
「初めまして。ニンゲン。」




