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凪の瓶を携えて  作者:
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11/17

11話 島

「これが小豆島か」


 街並みは案外地元の滋賀と似てる。

 落ち着く程よい田舎感だ。


 けどやっぱり海が近いせいか空気感がぜんぜん違う。

 それにここは山がとても身近だ。

 滋賀にも山はたくさんあるけど、大抵はもっと遥か遠くに見える。


 あと島って勝手に人や車が少ないイメージを持っていた。

 けど小豆島は普通に車も普通に走っていて、道路も綺麗だ。

 それに信号もある。


 淡路島もそうだったけど、こういう島もあるんだなって何だか自分の常識に新しいページが追加されたような不思議な気分だ。


(とりあえず無事島に着いたことだし、まずはお弁当を食べるか)


 お酒を届けるのはその後でもいいだろう。


 最悪、届けてから昨日みたいにまたどこかに食べに行くパターンも考えられるけど、その時はその時だ。


 それくらい問題にならないくらい、今はお腹が減っている。


 港近くのベンチに座り、海に浮かぶフェリーを眺めながら今朝高松駅で買った弁当を開ける。


(中々いい感じのお弁当だ)


 買ったのは鶏がメインの物。

 野菜も入っていて見た目でも楽しめる彩り豊かなお弁当だ。


 他にもキャラのお弁当や定番の幕の内弁当などもあった。

 だけどキャラ弁は値段はともかくキャラが描かれた袋が、成人男性一人にはハードルが高すぎて断念した。


(食べる前に写真を撮って……じゃあいただきます)


 まずはメインの鶏から一口かじる。


 うん、おいしい。

 焼き加減もちょうどいいし、冷めているのに肉がとても柔らかくて食べやすい。

 タレの具合もいい感じで、ご飯と合わせると最高だ。


 野菜の方も出汁が効いていて、ちょっと苦手意識のあるニンジンまでパクパクいける。


 島から旅立っていくフェリーを眺めつつ無心になって食べ続けていたら、ものの五分程度で食べ終わってしまった。


 これだけ美味しいんだったら、もう一つ買っても良かったな。

 それも含めて母さんに感想を送っておこう。

 

 トークアプリで、写真と簡潔に感想を書く。


(もう一つ買いたくなるくらいの美味しさだった。と)


 これでよし。

 まあ母さんは忙しいから、しばらく返信どころか既読すらつかないはずだ。


 じゃあ弁当も食べ終わったことだし、そろそろ届け先に向かうとしよう。


 場所はここつち――土庄町とのしょうちょう内で港からも割と近い。途中少し迷っても十分くらいで着くはずだ。


 リュックを背負い直し、町中へ向かって一歩踏み出した。




――――



「ここ……かな?」


 目の前にあるのは、ごく普通の二階建ての一軒家。

 周囲の家に比べるとかなり新し目の家だけど、新築かと言われるとそうでもない微妙な感じ。


 地図アプリと貰ったデータの住所を何度も照らし合わせて確認する。


 よし、間違いなくここだ。

 表札によるとここに住んでるのは笠井かさいさんというらしい。


 どうか誰かいますように。

 願いを込めてインターホンを押す。


 そのまま五秒、十秒と経過するが何も反応がない。


(留守だろうか?)


 時間は九時をちょっと過ぎている。

 一般的な日勤の仕事をやっているとしたら、いない可能性も十分ありそうだ。


 そう考えるともう少し早めに来た方が良かったのかもしれない。

 けど仕事だったら僕に構っている余裕なんてないだろうし、結局待つことには変わりないか。


 念のため、もう一度インターホンを押す。

 意味があるかどうかわからないが、気持ち長めにインターホンを押してみる。


『はい、どちら様ですか?』

「あ、どうも。朝早くにすみません。滋賀に住んでる桂田源蔵の孫の叶都かなとと言います」

『あらあら源蔵さんの! ちょっと待ってね。すぐ開けるから』


 大体一、二分くらい経ってからようやく玄関が開く。

 そして家の中から、人の良さそうな中高年くらいの女性がニコニコ微笑みながら現れた。


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