表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

4 傷跡

 ケイゴがウトウトとしていたとき、カケルが部屋から降りてくる。


「うるさくて寝てられないな」


 カケルはそう言って、冷蔵庫から水を取り出し、グラスに注いだ。


「お、起きたか! 俺にも!」


 ケイゴがカケルに向かってグラスを差し出しながら言う。


「たく……」


 カケルは面倒そうにケイゴの持っているグラスに水を注いだ。


「サンキュ」


 ケイゴは水をおいしそうに飲んだ。カケルはケイゴの向かいに座り、携帯を見る。


「せっかく二人なのに携帯見るのか? 寂しいじゃねえの」

「暇なら引っ越し手伝ってやれよ」

「やだよ。カケルと話したいんだよ」

「話すことなんかない」

「俺はある」


 カケルはため息をつく。


「何だ」

「レミちゃんは元気か?」

「え? あ、ああ」

「最近、見ねえなと思ってさ」

「学校が忙しいんだろ。こんなとこ来たって何もないしな」

「大好きなお兄ちゃんに会えるじゃねえか」

「もうそんな懐く年でもないだろ」

「そうか? だといいんだがな。何かあったのかと思ってな」


 カケルは少し黙り、そして口を開く。


「急にどうした。あいつに何か聞いたか?」


 今度はケイゴが黙った。カケルは話を続ける。


「聞いたんだな。黙ってろって言ったのに」

「ミツキを責めるなよ。俺がオーナー権力振りかざしたんだから」

「権力に負けやがって」

「それでレミちゃんはどうなんだ?」

「高校には普通に行ってる。でもここに来るのは怖いってさ」

「そうか、悪いことしたな。そんなやつだと見抜けなかった」

「男にも恐怖心を持ってる。俺以外が近づくと顔がこわばってるのがわかる。本人は大丈夫だって否定するけどな」

「そうとう怖かったんだろうな」


 配達員たちが降りてくる。カケルたちは階段の方を見る。


「では、失礼しまーす!」

「ありがとうございましたー。ご苦労さまー」


 サヤカがそう言いながらリビングの前を通る。それを見たカケルが驚いてケイゴを見る。


「女!?」

「ああ、ちょっと派手で不良風だけどいい子だぞ?」

「そういうことじゃないだろ」

「大丈夫だ。本人も了解済みだ。ミツキと同じこと言うんだな」

「誰だって思うだろ」

「俺ってそんなに信用ねえのか? 騙して家賃収入得ようとなんかしねえよ」

「そうじゃない。おまえが抜けてるからだ。今朝だってそうだろ。入居者のこと言い忘れてた」

「ああ、そうだったな。なんだ俺の心配してくれてんのか! かわいいやつだな!」


 ケイゴが満面の笑みでカケルの頭をクシャクシャっとなでる。


「やめろ」


 カケルはそう言いながらケイゴの手を払う。そこへサヤカが腰を伸ばしながら入ってくる。


「やっと終わったよー……」


 サヤカはカケルに気づき、指さして言う。


「あ! 203?」

「なんだその呼び名」


 カケルが眉をひそめて言った。


「ああ、ごめんごめん。何だったっけ?」

「カケルだ」


 ケイゴが横から口出す。


「ああ! そうそう! あたしサヤカ、よろしく」


 そう言って、カケルに手を差し出した。カケルは少し戸惑いながらもサヤカの手を取った。


「ああ」


 サヤカが微笑むとカケルは目を逸らし、手を離した。サヤカはカケルを見て言う。


「あたし、ビアンなの。外では隠してるけどね」

「え? そうか。わざわざ言わなくてもいいぞ?」

「うん、言ってみたかっただけ」

「そうか」

「そういえば、ここではカケルがいちばん年上で25だ。トムは20だ」


 ケイゴが言った。


「そっか、ありがとう。みんな同世代か。話し合いそうでほっとしたよ」


 サヤカはそう言ってソファに腰かけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ