自由
僕、天野奏は幽玄荘と言う屋敷に昨日引っ越してきた。
荷解きも終わり部屋で音楽を聴いて過ごしていた。
部屋で過ごしているうち少し退屈してきた頃、障子がスパーンと開かれた。
障子の先には朝出会ったツギハギの女の人こと
フランさんがシャベルとスコップを持ちながら立っていた。
フランさんは笑顔を浮かべていたけどその目は笑っていなかった。
現在、僕はフランさんと一緒に休憩を挟みつつ桜の木下を掘っていた。
-桜の木を二人が掘ることになった数日前-
俺、桜木は居間で二人組と向かい合っていた。
片方は神主のような服装をした銀髪の男。
もう一人は長い黒髪でこれまた長い襟巻きを巻いた女性。
片方は一応ここの近くの神様 いろはと名乗っている
もう一人は
俺をこの幽霊のような体にした張本人だ。
神様が口を開く
「桜の妖よ」
桜の妖
この屋敷、枯れず桜に縛り付けられている俺のことだ
「そう固くならんでよい、今日は良い報告をしにきたのだから」
「良い報告でしたら、そちらこそ
その口調を改めたらいいのではないでしょうか。いろは様」
俺は神様のことを睨みつけた。
いろは この神様の名前だ
「それもそうだな…ゴホン、では桜木殿いい加減その体にも飽きてきたんじゃないかい?」
神様が左右で色が違う双眸でこちらをジロリと見る。
俺は自分自身の手を見る。
手の向こうから机が透けて見えた。
半透明の幽霊のような体、人には触れることしか出来ず、仮面以外ものには触れられない体
枯れず桜を核として、この土地に縛られて屋敷からも出られない体…不便な体
「飽きてきた?何年、何十年もこの様な体にしておいて今更そんなことを聞くのですか?こちらは既にこの体にすら嫌気すらさしているというのに…」
俺は少し声を張り上げ神様に訴えた
何十年ではない途中から数えなくなっただけでもう長いことこの体のような気がするいやもっと昔からかもしれない。
昔…昔…ある記憶がチラついた。
塀に囲まれ、花々しか見るものはなくそれ以外何もなく、薄暗い部屋…ぼうっと空を見続ける青年…
「出たい…出たい…この屋敷から出たい…外の世界をもっと見たい…出してくれ…出してくれ!!もうたくさんなんだ動けず…ただいるのは…嫌なんだ…お願いだ…早く出してくれ出せ!出してくれ!出せ出せ出せ出せ出せ…」
口から言葉が出て止まらない何だこれ…なんだ?
これは誰の言葉だ?俺の意思ではない?いや俺の意志か?違う違う違う違うチガウチガウチガウ…
俺は神様の肩を掴んでいた。
「落ち着いて、桜木殿…グッ…」
神様の肩からジュッという音がする
神様が動揺する俺の手を掴む、手からジュウという音がし、煙が上がる
なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ今までそんなことはなかったなんだこれは、
動揺する俺を見ていろはは口を開く
「なんてことないさ、少しやけどをしただけだ。すぐ治る」
彼は平気そうに笑うが、その笑顔と口調は弱々しかった。
そこから先の記憶はない。
すっぽり抜けたように憶えていなかった。
どうやら気を失っていたらしい。
気がつけば俺は何かに縛られていた
幽霊のようにものをすり抜ける体にも関わらず、俺はぐるぐる巻きに縛られていた。
「少しは落ち着いたかい桜木殿」
神様が心配そうにこちらを見る。
所々溶けたように焦げている装束、痛々しい手を見て俺の顔は青ざめた。
「まったく、今の身体が不便か聞いただけで暴走しおって、全く手のかかるガキだ」襟巻きの女が呆れた様子で話す。
どうやらあの後暴れたらしい。
襟巻きが俺に向かって伸びている。
どうやら俺は襟巻きでぐるぐる巻きにされているらし
い。
「おい、お前さん本当にこいつをここから出すのか?先ほどのように他者を傷つけるかもしれないぞ?」
「あぁ、彼を出すさ。
ただし、この街の外…僕の目から外れると万が一があった時対処できない。監視にだって限度はあるなので、君はこの街からは出られないようにする、酷いことかもしれないけど君のためでもあるんだ」
それでも屋敷の中しか移動できないよりはマシだ
「そうか、制限付きの自由か、お前さんがそこまで考えているなら私は何も言えんな…だが、自由ということはあれを桜の木から出すことになる、そこは大丈夫かえ?」
「ああ、大丈夫さ。
あれを埋めてから大分時間が経っている…桜の花びらだって無害なんだもう出して問題ない頃合いだろう」
二人が話し合っている
女は庭の方に目をやった。
あれ 恐らくそれは桜の下の封印の元であり、俺がこの身体でなくなるために必要なもの、恐らくそれは
俺の本体だ。
女は頭をボリボリとかきむしった後、俺の方を見る
「よかったなお前、この屋敷から出られるそうだ。神様の決断なら仕方ない。私はいなくても大丈夫そうだな…一反坊!」女は襟巻きに声をかける
一反坊と呼ばれた襟巻きは意志を持ったかのように俺の身体から離れ、また女の首に巻き付いた
「帰る。また何かあったら呼んでくれ」
女は神様を見て立ち去っていった
神様が両手を勢いよく合わせる
手からパァンという音がした
「さて、そういうわけで、君には桜の木の下にあるものを掘り返してほしいんだ。掘り返した暁には君はこの屋敷の外でも動ける ただし、この街からは出られないからその点だけ覚悟してくれ、それでは僕も帰るとするよ また会おう、桜木殿」
神様の姿が消える。
こうして俺は自由の身になることとなった。
ただし、物に触れられないため住民に協力してもらう形にはなってしまったけど。
そして現在
二人が頑張って桜の木を掘り起こしてくれたおかげで見つかった白骨もとい俺の本体のお陰で俺は身体を得てこの地に立っていた。
やっと2話につながりました…
ダラダラと長くなってしまい
本当に申し訳ありませんでした。




