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幽玄荘の枯れず桜  作者: 竹野 ぼん
始まり
7/23

桜咲く木の下で蘇る

この話にはグロテスクな表現がございます。

春 それば出会いの季節、桜それは春の代表的な花だ

桜が舞う木の下で一人の細身の男が穴を埋めていた。深い夜のような澱んだ青くも見える黒髪が揺れる。

男の名前は桜木。自称ここ幽玄荘の管理人だ。

「せっかく肉体を得たばっかりなのに、この仕打ちは酷くないかいフランちゃん」

男が不満そうにこちらを見る、顔には翁の面をつけている。

「酷くない。アタシら二人に散々穴を掘らせておいた挙句にグロテスクショーまで見せつけただろ?

見な、奏の姿をお前を見て気絶しちまったじゃないか」

アタシは縁側に座りながら隣でうなされている薄紫髪の少年を見る。

少年の名前は天野奏(あまのかなで)、昨日引っ越してきたらしい幽玄荘(ここ)の新しい住民だ。

アタシは朝の件の後、部屋にこもってエナドリを飲んでいたところ桜木にウザ絡…引き摺り出され、手伝いとして引っ越してきたばかりの奏を巻き込んだのである

大家は急用ができたと実家に帰り、他の住民も何故か昨日から姿が見当たらない。

ただ飯の準備はあったため、誰かしらは帰ってきているはずだ。

おそらく、理由をつけて逃げたのだろう。

消去法でアタシと引っ越してきたばかりの奏で休憩を挟みつつ穴を掘ることになった。

結果として骨には動じなかった奏がこいつのグロテスクな復活を観ていくうちに顔を青くし、気を失ったのだ。



気を失っても仕方ない、桜の木の下から人骨が出てきた。

その人骨に桜木が触れたら、吸い込まれるように桜木の姿が消えてしまい、その白骨が意志を持ち穴から這い出てくる次に内蔵、血管、神経、筋肉などが生えてくる

ゆっくりと人間が伸びてあくびをするかのように。

奏少年は表情ひとつ変えず観ていたが顔色は徐々に青くなり倒れてしまった。

アタシはとりあえず倒れた少年を抱えて縁側に寝かせた。

その間桜木は着る服を取りに屋敷の中へ戻っていった

あいつに着る服なんてものは残っているのだろうか?

しばらくして、桜木が戻ってきた。

「おまたせ」

桜木は作務衣姿で走ってきた。

アタシは立ち上がり、桜木に近づく。

シャベルを持って

「あーら、動きやすそうな格好だねぇ」

「そうでしょ、(ともえ)が用意してくれたみたいなんだ」

巴 この屋敷幽玄荘大家にして桜木の保護者だ。

「じゃ、穴埋めよろしく。散々アタシらに掘らせておいて自分だけ作業せず追われると思うなヨ」

アタシは力強く桜木の手を握りしめシャベルを無理やり押し付けた。

「は…はい」 桜木は頷いた。

こうして、やつは今でも穴を埋めている。

休憩を挟みつつ2時間以上も二人がかりで掘った穴だ簡単には埋まらないだろう。

桜木はブツブツ言いながら穴を埋めていった。

穴がほとんど埋まり桜木が息切れを起こして座り込む

「少し休んでいいかい?」

「いいわけ…ッないだろ!!」

アタシは咄嗟にスコップを掴んで桜木に向かって投げつけた見事に桜木の頭に命中する

「君たちだって…休んでいたじゃ…ない…か…」

スコップが命中し桜木が倒れる

後ろからドサっという何かが落ちる音が聞こえた。

振り向けば、毛先に向かって暗い緑色から青色へとグラデーションというまるでトカゲの尻尾のような髪色の男が手に持っていたエコバッグを落として立ち尽くしていた。

幽玄荘大家にして急用で実家に帰省していたはずの巴だ。

「は…は〜い 巴」

「………なんだこの状況は」

「思ったよりはやかったわね〜」

「…なんだこの状況はと聞いている」

まるで蛇のような鋭い目つきでこちらを睨んでいる

いや蛇の目つきだ。

それもそうか、用が済んで戻ってきたらスコップを投げつけている女、スコップをぶつけられ倒れる男、縁側には気を失ってうなされている少年、その脇に地面に刺さったシャベルと土、枯れず桜…

事件現場だ

(おれ)が…己が…本家の奴らから呼び出されている間に何をしているんだおまえはぁぁぁぁぁぁぁぁ

」巴の口が裂ける 胸ぐらを掴まれる

「あー、ほら、3日前に言われてた桜木(ここの管理人)本体の掘り起こし作業だよ、作業」

「なら、なぜ!桜木(あの馬鹿妖怪)と新入りが倒れている!なぜお前はアイツにスコップを投げつけているんだ!!答えろ!!フラン!!」

「…………アイツの態度にムカついたからよ…」

アタシは目を逸らしボソッと呟く

「そうか…そうか…ムカついたからか…それでもスコップを投げつけて言い訳ないだろうがぁぁぁぁァァァァァァァァ」

力がさらに強まる、巴の口がパカっと開き鋭い牙が見える 頭に血が上っているようだ

その時 奏が目を開いた。無表情で左右で虹彩の色が違う瞳をギョロリと動かし辺りを見回した後むくりと起き上がった。

「あの、騒がしいのですがこの状況はなんですか」

戸惑った声

「今取り込み中だ!!」キレる巴

「あー、ちょっと…ね」目を逸らすアタシ

「ひ…ひどいじゃないかフランちゃん…スコップを投げつけるなんて」

むくりと起き上がる桜木。

滅茶苦茶だ…アタシの行動が発端ではあるが。

空の向こうではカラスが嘲笑うかのように鳴いていた。

「ちょっと!!フランちゃん無視しないで!!」

桜木がずんずんこちらに向かって歩いてくる

「ちょっと、桜木今こっちにくるんじゃないよ!!」

「フランもだが桜木ィ!!お前もなんだ!!己が帰ってくるまで掘り返すなと言ったよなぁ?」

メキメキという音が巴から聞こえる

雑に投げ出されるアタシの身体

唖然とした様子で固まっている奏

ギョロリとした瞳、鋭い牙、裂けた舌、ヌルりとした

身体。

桜木の身体は大蛇に締め付けられていた。

「あー、もうバカ!!変化を解くな!!人間の前だよ!!落ち着け!!」

「巴…ギブ…死ぬ…死んじゃう…」

大蛇となった巴はシャーっという鳴き声しか発さない

「え、へ、蛇!人間が蛇に?」

混乱する奏 目の前で繰り広げられる妖怪同士の喧嘩

アタシは呆れて 二人の方へと歩き叫んだ

アタシはシャベルを担ぎ二人に近づき、シャベルを振り上げた。

「お前ら!!いい加減にシロォォォォォォォォォ

特に巴!!自分の体を見な!!桜木もとりあえず座りな!!」

大蛇の体をシャベルで思いっきり叩いた。

蛇は怯み、姿形を変える。

それは裸の人間の姿ではあった。

ただ頭に血が上った影響か

尾てい骨あたりに蛇の尾が生え、肌も所々蛇の鱗が生えていた。

「巴!アタシが悪かったのは認める、だけどアンタはキレて変化を解くんじゃないよ!!見てみなッ新入りの姿をびっくりしてるだろ!?」

驚いた様子でこちらを見ている奏のことをアタシは指差した

「桜木!スコップをぶつけて悪かったね、ただお前もお前で勝手に掘り返すようなことをするんじゃないよ」

「そ、それはい早く実体を得たくて…」

「だぁぁぁまらっしゃい!!言い訳は後で聞くよ、とりあえず二人は奏に謝りな!!」

二人はお互いに顔を見合わせる

見合わせた後奏の方を向く

『騒がしくして、ごめんなさい』

夕暮れの空に大人達の声がこだました。












これにて、2話目を取り巻く話は一旦終わりになる…と思います。

長くなってしまって本当に申し訳ありません。

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