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幽玄荘の枯れず桜  作者: 竹野 ぼん
始まり
3/23

新天地

ガタンガタンと列車の音が大きくなり、

少しずつ速度が落ちていく

やがて列車はとある駅で止まった。

駅名を伝える列車のアナウンスで僕は目を覚ました。

扉の前の電光掲示には降りる駅の名前が表示されていた。

僕は慌ててスーツケースを持ち、イヤホンを耳から外しスマホをパーカーのポケットに乱暴に放り込み、電車を降りた。

改札を通り外に出る。

暖かい日差しに、少し肌寒い風が吹く。

駅の花壇には緑が芽吹き始めていた。

僕はカバンから住所が書かれた紙を取り出した。

行き先は幽玄荘《ゆうげんそう》名前からして怪しい。

敷金礼金なし、格安の家賃にも関わらず、家電付き

どう考えても怪しい。

今日から僕は家を出てここに住む予定だ。

スマホをポケットか取り出し、地図アプリを起動し、

紙に書かれいる住所を打ち込む。

地図には枯れず桜とだけ出てくる『幽玄荘』という名前の建物はない。

本当に合っているのか不安になる。

少し立ち止まる。

(今更悩んでどうする、荷物だってちゃんと送れただろ)

僕はスーツケースを握りしめ、前を向いて枯れず桜もとい幽玄荘を目指して歩き始めた。

駅の繁華街を進み、住宅街を進んでいく

時々すれ違う人が驚いた顔で僕のことを見る時がある

通りがかった店の窓に映った自分自身をふと見た。

淡い薄紫の髪、左右で色の違う瞳 アンテナのように頭頂部から出ているくせっ毛。

染めたわけでもカラーコンタクトでもない生まれつきの色。 奇妙な姿。

僕はスマホに目をやりまた歩き始めた。

歩いてどのくらいたっただろうか?

住宅街の長い坂道を登っていくうち大きな桜の木と古い屋敷が見えてきた。

多分あの桜と建物が枯れず桜と幽玄荘なのだろう。

僕はそこを目指して更に歩いた。

屋敷の前に着いた、立派な門と桜がある古い屋敷

屋敷の表札には何も書かれていない。

地図アプリをみる、確かに場所は枯れず桜である。

ここが幽玄荘で合っているはず…多分。

門は空いている 人の気配はない。

大きく息を吸って、吐いて 僕は声を出した。

「すみませーん!誰かいませんかぁ!!」

桜の花が舞う 急に風が吹いてきて思わず僕は目を瞑ってしまった。

風が収まり目を開くと目の前に人がいた

人と呼んでいいのだろうか?

青みががった黒髪に黒い着物を着た男の人、その顔には狐の面を被っていた。

そして足は透けて見えず身体も半透明で透けている

お化けだ

驚いている僕を見ても気にしていない様子でその人から声が出た。

「ようこそ、幽玄荘へ!君が今日から住む予定の天野奏《あまのかなで》君だね!君のことは俺の知り合いから聞いているよ」

知り合い…僕は同級生の親の知り合いの紹介でここに住むことになった。

「俺はここの管理人で桜木《さくらぎ》というんだ。よろしくね奏くん」

彼が手を差し出す。

僕は恐る恐る手を握る。

「ほ、本日からこちらに住まわせていただきます。あ、天野奏です。よ、よろしくお願いします。」

桜木と名乗った人の手に触れた感触はあった

ただその手は冷たかった。

「さて、挨拶は済んだしまずは君が今日から住む部屋まで案内するよ」

彼は僕の手を離し前へと歩きはじめた。

いや…浮きはじめた。

その姿はやはり幽霊のようだった。

僕は怪しみながら彼について行った。

今日からこのお屋敷で僕の新生活が始まる。

この時、僕は知らなかった

ここはただの胡散臭い屋敷ではないこと、奇妙な住民たちのこと、そしてこの町と桜木さんのことを

この時の僕はただこれからの生活への期待とこの屋敷で生活していけるのかという不安でいっぱいだった。




初めましての方は初めまして。

ご無沙汰ぶりの方は申し訳ありません。

だいぶ年数が空いてしまいました久方ぶりの投稿となります。


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