白蛇と転移者は月夜の下語り合う。
私は列車に乗り、しばらくの間揺れる。
後ろで結んでいる長く毛先が赤い白髪が揺れる。
周りの人が時々私のことを見ますが、その視線もとうの昔に慣れました。
列車を降り、帰宅ラッシュが始まり混雑する駅中を歩き、また列車を乗り換え。
私はある駅で降りる。
そこは賑やかな都市部ではなく少し離れた郊外。
居酒屋や惣菜店などが並ぶ賑やかな駅前の通りを過ぎ、少し外れた静かな場所をしばらく歩いていると目的の店が見えてきた。
時雨堂と書かれた古びた木製の看板。怪しげな雰囲気。店のシャッターは閉まっていた。
骨董品店 時雨堂。零さんと同じ幽玄荘の住民ブランさんが用心棒として働いている店。
店の前には、身長が高い白髪の白い修道服服を着た顔に横一文字の傷がある骨隆々の男性が立っていた。
ブランさんだ。その隣には奏さんと同じ年ほどの青い作務衣姿の小柄な人物。時雨堂店主の時雨だ。
時雨が手を振る。まるで狐の尻尾のような毛先が白い朽葉色の髪が揺れる。
「お久しぶり、酸漿君。」
「お久しぶりです。時雨サン私はブランさんに用があると言ったつもりですが…どうして貴方も一緒にいるのでしょうか?」
「酸漿君、ここは私の家も兼ねているのを知っている上で言っているのかい?」
「えぇ、存じております。改めて、ブランさんに用があると言ったにもかかわらず家の中ではなく、なぜ御老人が外に出ているのでしょうか?」
「御老人とは相変わらず、ひどいもんだ。白蛇が」
「白蛇とはひどいですねぇ、人間なのに。」
「十数年経っても容姿が変わらないのに?」
「そちらこそ、何年経っても幼いままで、若作りとは見苦しいですね」
「ははは、酸漿君は相変わらずひどいなぁ」
「そちらこそ」
私と時雨がお互い睨み合っているとガアンという音がした。
見上げれば、細身のハンマーを地面に叩きつけている
ブランさんの姿があった。緑色に輝く双眸がこちらを睨みつける。
「なぁ、蛇野郎俺に用があってきたんだろ?ジジイと争うためにきたわけじゃないよな?」
「おや、ブランさんお久しぶりですね。これは失敬。」
「ジジイもコイツと言い争うな」
「………ケッ、それじゃあ失礼するとするさ。あとはお二人さんでどうぞ」
時雨がそのまま店の裏へと行く。ピシャリという音を立てて引き戸が閉まった。
「全く…困った老人ですね。カガチ様もあまりウチの老人をいじめないでください」
ブランさんは仕事向きの調子に戻り、女性のような柔らかい声が口から出てくる。
「はいはい、ブランさんも仕事ではなく、普段の話し方で構いませんよ」
「分かりました。カガチさん、そんで俺になんのようですか。わざわざここまで来て…幽玄荘でも良かったんじゃないですか?」彼の口からは男性の低い声が出る。
「そうですね…幽玄荘では、桜木さんやフランさんなどに聞かれる可能性がありますからねぇ、万が一零さんにも漏れるかもしれない」
「零に漏れるとまずい…もしかして、零についてですか?」
「えぇ…そうです。立ち話もなんですし、公園で話をしましょうか」
私はニコリと笑った。
私とブランさんは近くの小さな公園へと移動しました。私はベンチに腰をかけ、ブランさんも隣に座る。
「で、俺に零の何を聞きたいんですか?カガチさん」
「そうですねぇ、最近零さん変な行動とかしてませんか、例えばあそこの猫みたいに」
目の前の猫を私は指差す、猫同士が戯れ、毛づくろいをしている。
「あー…そっちか…毛繕いなんかはしてないですよ、
最近はほぼ人間の姿でいるんで」
「やはり人間の姿でいましたか…天野奏という少年がきてから人間の姿でいることが増えましたか?」
「なんで知っているんですか?」
「今日、彼ウチの店に来たんです。少し揶揄ったら逃げてしまいましたが」私はくすくす笑った。
ブランさんは空を仰ぎ深いため息をついた。
「なんでそんなことしたんですか…」
「可愛らしい少年でしたのでつい」
「カガチさんしばらく幽玄荘に来ないでください。今頃変態扱いされていると思うんで」
「ははは、それは困りましたねぇ。近いうち行く必要があるのに。まぁ、そんな話は置いておきまして、
最近零さん、人間ではなく獣としての面が出る頻度が増えてまして、困っているんですよね」
「あぁ…それですか、たしかに最近零酒に酔って俺に甘えてきましたねしつこいくらい、あとはシラフでもスキンシップが増えてきてますね…」
「懐いてますねぇ…(少し羨ましい)、その際耳や尻尾は出ていませんでしたか?」
「出てないですね。」
ブランさんが何かを思い出した様子で黙り込む
「ブランさん…?黙り込んでどうかしましたか?」
「あぁ、先月フランさん用の部品運んでいるときですかね…零にばったり会ったんですよ夜中に、そしたらあいつ住宅街の中にも関わらず獣化しかけたんですよね…アイツ自身も爪を立てて抵抗してなんとか治りましたがそん時俺も殴られていたようで気がついたら、幽玄荘にアイツと一緒に帰ってきていたみたいで」
フランさんはゾンビのような人、死体を継ぎ足しても所詮は死体いつかは腐るので定期的にブランさんが補充をしているんですよね…(出どころは考えたくありませんが)
「そうですか、それがこの前休んだ日の真相でしたか…思っていた以上に限界でしたね。零さん」
私は顔を上げて空を見た。上弦の月が浮いていた。
「あぁ、そうだな…」
「満月の夜は彼は虎になって自我を失う、貴方も満月の夜は動けない身体になる…さて、今回彼は帰ってこれますかね。」
「さぁな…俺としてもアイツに帰ってもらわないと困る、飲み仲間が減るのは寂しいかなら」
空を見上げてブランさんは寂しそうに言った。
「私もそれには同感です。」
「カガチさん場合は、零の労働力目的ですよね?」
「そうではありませんよ。彼がしっかりと人間…虎原 零として帰ってこないと私も鬼灯さんに怒られてしまいますからね。もちろん私も怒りますよ。」私はベンチから立ち上がった
「鬼灯…あぁ、カガチさんとそっくりなあの人ですか?」
「はい、その鬼灯さんです。」私はニコリと笑った
「さてと…私は帰ります。時間をとらせてしまってすみませんね。」
「いえ、構いませんよ。俺も零にガス抜きするように伝えておきます」
「えぇ、そうしていただくと助かります。」
私はそのまま行動を立ち去って、駅へと向かって歩き出した。
ブランさんは公園のベンチに座ったまま月を見ていた。
カガチが立ち去ったあと俺は家路につかず、公園のベンチに座って月を見ていた。
今は半月だ。この月が丸くなったら俺は一晩苦痛に苛まれる。
零も自我を失い暴れる。
俺は桜木さんとフランさん
零は巴さんの世話になる。
お互いにまわりに迷惑をかけている。
俺はいい日が上れば身体も精神も元に戻る
零は巴がなんとか連れて帰ってくる
その時毎回苦い顔をして帰ってくる、俺はその顔を見るのが辛い。(自我を失ったまま暴れて帰ってくる月もある)
俺の顔を見ると力なくへにゃりと笑うアイツの態度も見ているとつらい、胸が痛くなる。
俺は月を見て、またため息をついた。
しばらく月を見た後俺はベンチから立ち上がり帰るために歩き出した。
今日は酒とツマミを買ってから帰ろう、そして桜を見ながら一緒に飲もう、アイツと戯れてもいい。
だから…
「今月もしっかりと帰ってこいよ…零」
俺は夜空に向かって呟き駅へと向かって歩き続けた。




