猫と神と愛し子と ②
陰の力を使うとどうなるのか。
『そうだな、例えばどこかに調子にのった悪い王様がいたとする。家臣は下僕と考えられ、民は餓死寸前まで追い込まれ、神に対する信仰心すら薄れ、果てには自らが神だと名乗る、万が一にもそんな王に対する信仰心というものが生まれ奉られでもすればどうなると思う?』
「それは恐ろしいです。始めは恐怖政治のようなものでも時と共に正当化され善悪の判断すら麻痺してしまったら、犯罪が肯定化してしまいます。それに、欲が溢れ信仰心をも独占しようとするでしょう。他は悪として排除するべしと」
『そっか。ルナは人の考えが身に付いているね、良いことだ。確かにそうなりかねないね。地球では私が知る限り、日本の神ほど社交的で温厚な神はなかなか居ないよ。クリスマスにはキリストの神に話を聞いて社でパーティーしたとか言ってたな、はははっ。神々はけっこう嫉妬深いところもあるからさ、私たちは日本の神と気質は似ているから心配ないけれど……あ、ごめんよ。話を戻そう。
人から神へとなるのは生半可なことではない。だけど、余りに多い信仰心は神を生むこともある。位はしたの方だけど、それでも万が一、浄化されない魂のままに神へとなったら……?』
「それは……邪神ではないのですか?」
『うん。そう、真っ黒いまま生まれたのならばもはや神ではない。いや、神で生まれようと執着心や妬みが怨みへと、理不尽な祟りは神威を落とす。そうなれば、神気は穢れを纏い邪気へと変わり、やがて妖怪へと変貌する』
「なんか、天使と悪魔の話みたいですね」
『似ているね。もしかしたら、そうだったかもしれないけど。でも、この世界では悪魔が悪の存在だという時代は過ぎたこと。それこそ陰の気をもつ神により見守られ、魔王が正当な統治をしているよ。今度アレクに聞いてみなさい』
「へぇ、悪魔が恐怖の対象ではないのは驚きです!」
『地球とは異なり、この世界は神との距離がとても近い。だから、邪神が生まれないように我々が調節しているのだ。そこでも活躍するのが、陰の力と言うわけです!』
「?」
『ほら、よくある話でヤクザさん、警察、チンピラがいるとして、ある日チンピラの行動に困り果てた民が本当に困った果てに頼りとすると……ヤクザさんになる。警察内部もヤクザさんと繋がっていて、社会的に困ってしまう部分の片付けをヤクザさんに頼んだりとかあるだろう? 恐い存在だけど悪と思われていても実際には、そこはひとつの社会になっている。今時のヤクザさんはわからないけど、古い極道とかやっていた家は仁義を重んじていたからこそ深すぎる闇の対処には闇の管理人である方に動いてもらう。
これ、日本の神がドラマとか言うもので学んだんだって』
…………そうですか。
反社会的組織は裏側がどうであれ交際厳禁ですよ。仁義がどうこうの時代は、IT社会やらグローバル化と共に薄らいでしまったのでは……。はたしてどうなのでしょう。未知の世界です。
「ヤ、ヤクザさんがどうあれ、つまり邪神関連は禍津神の方が専門科ということでしょうか?」
『はい! ひとことでざっくりですが、そうですね!』
『ちなみに、こちらの神は戦神も陰の力をもつ神だよ。あとは、雷神と縁を切らせる神とかもね、詳しくは追々ということにしよう』
「はい」
陰の力がどんなものかははっきりわからなかったけれど、縁がなさそうなので追求しないことに。説明が難しくて……私にはキャパオーバーでした。
『もう、こんな時間なのか……ではここまでにしようか』
「はい。ありがとうございました」
16:30 講義終了
廊下に出るとフィーさんが復活したようで待っていてくれました。
「フィーさんお迎えありがとうございます」
『ミィー』
グルグルと喉を鳴らし“どういたしまして”と言ってくれている気がして少し疲れた気持ちが和らぐ。
「今日は疲れました。庭園のお花に水をあげたらお部屋に戻りましょうか」
近くにエリーさんやアレクが居たら迷わず抱き上げてくれるだろうけど、今日はフィーさんと歩いて戻りましょう。
18:00 フィー×ルナ 庭園にて収穫作業
「フィーさん! それでは、このお豆の入った袋がぷっくり大きくなっているものを収穫します。そして、こちらの袋を広げた上に網を引き、更にくしゅくしゅを乗せます。はい、ここから! フィーさんはこの上をふみふみしてもらえますか? それで網をすり抜け豆が下に落ちるようになります!」
『にゃ』
ふみふみにゃんにゃん
19:00 フィー×ルナ+アレク お迎えごはん
『ルナ、そろそろ切り上げておいで』
「アレク、お帰りなさい。お疲れ様でした」
『ルナもお疲れ。今日は忙しかったと聞いたが大丈夫か?』
「はい。さっき少し休憩したのでこのピントスの実を間引いて終わりにしますね」
『間引く?』
「はい。大きく実を成長させるためにひとつの蔓に沢山の実を持っているのは間引いてあげるんです。取ってあげればその分、栄養が残りへと行くので」
『なるほどな』
「あ、でも、こっちの間引いた方もしっかり活用します」
『ほう。無駄にはならないのか。』
「さて、終わりました! お待たせしてすむせん。戻りましょうか!
フィーさんもお手伝いありがとうございました」
『ああ、おいで。抱いて戻ろう』
『みゃー』




