猫と神と愛し子と
6:30 ルナ起床 部屋の植物のお世話と観察
ルナの1日は大抵そこから始まる
そして、相棒となるのは猫のフィーさん。以前はいつのまにか側に控えてくれていたフィーさんは、今では目覚ましの役割を果たしてくれている。
フィーの1日の始まりは更に早い
6:00 フィー起床 夜勤の陰護衛の責任者より毎日城の警備関係含め連絡事項などの報告を受ける。それにより必要な人物へ連絡をいれる。
6:30 (猫化)フィーによる目覚し カリカリカリ カリカリカリ (ドアの音)
目覚まし時計というものが存在しない。高位の者は侍女や侍従により起こされるのが常であり、平民は親兄弟から起こされていくうちに体内時計で起きるようになる。
自分が起きる時間を早くしたいのに侍女を巻き込むのが嫌と溢していた彼女の為に、元より早起きの自分が始めたこと。
「フィーさん良い子! おはようございます。今日もありがとうございます」
『グルグルゴロゴロゴロ (堪らない)』
ご褒美の猫マッサージが堪らなく気持ちいいのだ。
しかし、実は獣人で本来は人寄りの存在だと知ったらマッサージは御預けなのだろう。まあ、異性の男性とした認識に変われば致し方ないが惜しい。
7:00 ルナ ルナ庭園の管理収穫記録
7:00 フィー ルナの護衛任務開始 ひとまず庭園内の危険植物に注意を払いルナへ危害を加えようとする植物ともいえない危険作物は予め対処しておく。
9:00 ルナ 朝食 朝議を終えたアレクを連れたエリーさんを始め侍女さん達が朝の挨拶後、朝食準備をして庭園にてアレクと朝食。
9:00 フィー 巡回 アレクが来たら張り付く必要がないため通常は庭園巡回ならびに陰で報告を受ける。必要ならば仕事をする。
「あの、アレク……」
『ん? どうした?』
「いつもアレクが来る頃になるとフィーさんがお出掛けするみたいで、あの、もしかして喧嘩、とかしちゃいました?」
『え? ああ! 喧嘩はしていないから大丈夫だよ。きっとご飯食べに行っているかな? 今は私がいて護衛が必要ないからね』
「よかった。……護衛?」
『ふふ、張り切ってルナを護っているよ』
ルナの頭には猫のかわいい姿で“シャー”なんて周りを威嚇しながら、たまにすり寄りご褒美をもらおうとする愛らしい姿が浮かび思わず口角があがりフフッと笑ってしまう。
対するアレクは、ルナが脳内で想像しているだろう内容を想像してクスクス笑ってしまう。フィーがルナの側に常にいるのは少々面白くないが……まあ、頼りになる側近で信頼しているからこそ安心して側に居れない時間を任せられるというもの。
「か……かわいいです」
『ふっ、そうかい?』
「フィーさんが帰ったて来たら守ってくれるお礼にブラッシングしてあげます!」
『ブラッシング?』
「はい! 昔、学校の職場体験があってペット幼稚園に行ってブラッシングをしたことがあるんです。
あ……えと、幼稚園は乳児から少し進んだ少し会話で意思疎通が出来て歩けるようになった小さな子どもに社交性の第一段階、成長課題をなるべく上手く進めるように子育てに不安をもつ親御さんの相談にのっていろんな子も一緒に成長して育児をしましょう! みたいな所なんです。
それで、ペットの幼稚園は少し躾に困った飼い主さんを手助けしてペットのトレーニングする所なんです」
『ほう、幼稚園とは興味深いな。今度、詳しく話を聞いてもいいかい?』
「え? あ、はい……、でも、私は人の幼稚園はあまり詳しくないですけど……良いですか?」
『ああ。知っている事だけ教えて貰いたい』
「わかりました!」
『それで、ルナはブラッシングが得意なのか。なら、ブラシを用意しよう』
幼稚園の話も興味深げだったけれど、今度は楽しげな顔で近くの侍女さんに何やら指示をだす。
10:00 ルナ×フィー 食事も済み庭園の水やり
11:00 ルナ×フィー 自室にて休憩、ブラッシング
「フィーさん、いつも守ってくれてありがとうございます。御礼に……これ……やらせてください」
ビクッ!
『…………に、にゃ』
突然の御礼にきょとんと可愛い顔をみせたフィーさんにこれ=ブラシをみせたところ、後ろへゆっくりと下がっていく。
あれ? 嫌いなのかな?
嫌なら仕方ないけど……でも、いつものマッサージが好きなら多分すきだよね。ペット幼稚園でもご褒美扱いのブラッシングでもあったから……。
よしっ!
「嫌だったら止めますので、少しだけ少しだけ。はい! あんよダラーンしてくださいね」
シュパッ!と素早く抱き上げ宥めるように撫でる。
な、な、なんで、こんなことにっ、私は普通の猫ではなく獣人だからいくら猫の体とはいえ……年下の少女にマッサージされるだけでなく身だしなみまで整えられるなど……それに殿下に恨めしい目でみられ……下手したら嫌がらせされかねない……。けれど、暴れて逃げられても、万が一にも猫爪で引っ掻いてしまうなどあってはならな……
『ふにゃんっ、ゴロゴロゴロ』
「えへへ、気持ちいいですか? マッサージ兼ねて傷がないかチェックしてからブラシをしていきますね? いいこですね」
はっ、!
絶妙なマッサージが日夜歩き回る足や肩甲骨の筋肉など調度気持ちいいタッチで揉み込み血液の循環を意識するように摩り血行をならすようにする。それでいて、傷がないかの確認までしていると……うっかりうっとりゴッドハンドに酔いしれてしまった。
「うん! お怪我もないようですね!では、素晴らしい毛並みを更に綺麗にしましょうね。とっても気持ちいいですよー」
『ミィー ゴロゴロゴロ グルグルグル』
ふにゃんっと思わず腰が抜けそうな気持ちよさ。なんだこれは! ブラシも心なしか普段のものよりしっかりとしていて優しい肌触りのような。き……きもちいい……。
ぽかぽかの窓際でルナが育てる癒し効果のある薫り草から癒しの香りがフィーを包み幸せな夢の世界へと誘う。
くぅー
13:00 フィー ルナ付き騎士のひとりの懐へ頭を出しながら寝んね
『ルナ様? フィー様はまだお眠りなのですか?』
「はい、疲れが溜まっていたのでしょうか? 気持ち良さそうに寝ておられます」
皆の視線はルナの膝の上に。窓際に横たわりぐでーっと寝ていましたが、猫は柔かな所が好きだというルナの認識で、ゆっくりルナの膝へきました。周囲はなんて止めるべきか迷い止められなかったのでした。驚きなのは、フィーが全く起きなかったこと。
『そろそろ神々の講義ですよね? 起こしましょうね』
「あ、待ってください」
さて、ここで何ともいえぬ出来事……事件勃発です。
ルナはそのまま自身で抱きながら一緒に行くと……。
さすがに抱えながら歩くなど、ただでさえ小さなルナはむしろ抱かれながら歩くべき距離を移動するのだから反対された。暫くのち、妥協案としてエリーもしくは騎士のうち誰かが懐に入れて移動するという。
もちろん周囲はフィーが獣人であり目上の位を持つ存在だということも知っているため、エリーなど女性に抱かれるのはよろしくない。あらぬ憶測を生む真似はしないに限るということで、消去法で騎士の胸にすっぽり。
さぞ、不思議で何ともいえぬ光景だろう。途中で出会ったアレクは肩を震わせ、爆笑していた。
13:00 ルナ お勉強
『おや、なんだ面白い事になってんな?』
「あ、本日はよろしくお願いします! えと、フィーさんはお疲れなのであのままでも良いですか?」
『おう、構わないぞ。では、始めようか。ところで、俺のこと忘れてるかもしれないからな! 改めて自己紹介とやらをしようか。人間はよくするだろ?』
「はい! 私は、ルナです。……リケア神様……で宜しかったですよね?」
『覚えてくれたのか? 嬉しいなあ。ごほん、いかにも私は酒神を名乗る高位第8神のリケアだ。ついでに酒神を纏める立場を担っている。ま、ルナにとっては父神のひとりだな』
「お父さん……、よ、よろしくお願いします」
お酒の神様という印象は、賑やかで優しいけれどがさつで大雑把で少しも喧嘩好きの男らしいオジサンのイメージがあった。あ、あとビール腹とか。けれど、リケア神はオジサンとは程遠く青年にしかみえない。確かに頬が弱冠ピンクに染まり酔っ払いのイメージは当てはまるけれど、ハーフアップに上げた髪をくるんと簡易団子にして飾りに麦、稲、そして果実のついた髪飾りがついている。残りの垂らされる長い黒髪はサラサラで手触り良さそうな美形です。話しやすいノリの良い見た目が綺麗な覗く八重歯が少しやんちゃそうにも見えるお兄さん。……いや、お父さん……か……。いやいやいや、
日本での常識が抜けるまでにはかなり時間が必要だと思います。この世界には美形しかいないのだろうか。
『ふふふ、ではそろそろ講義を始めようか』
「はい!」
『私が今日教えることは“祝福”について。ルナは緑属性が特に得意だと聞いているが、そこで祝福の力を取り入れているだろう?』
「えと、祈りながら育てています」
『うん。それも祝福。神が祈り授ける特別な力は祝福という。けれど、いろいろな数多の神々が存在しているからね。えーっと、確か日本神界では福の神とか禍津神とか言ったかな? 八百万の神が存在するからそういった陰を担う神もいる。そちらの側面における祝福と私側の祝福とでは対極のものとなる。わかるかい?』
「つまり、海の生物は陸では呼吸ができない。陸の生物は水中で呼吸ができない。みたいな感じでしょうか?」
『ん? んん? えーと、多分なんとなく掴めているかな。神としてあまり宜しくない言葉でいうと、福の神は基本は陽の存在で幸福を祝福としているけれど、禍津神と同様の神は陰の存在。祝福は陽を属性とする者には害悪になる。可愛くいうと疫病神?』
「なるほど! 邪神とは違うんでしょうか?」
『良い質問です。邪神と陰の神は全くの別物です。んーっと、基本は何でも許される神だけど理由なく人を殺めれば、神としての吟じに反したとみなされて、間違いなく神はかりにかけられて神格剥奪。神落ちです。だけどね、それでも何とも複雑だけど邪神とはならない。
邪神は邪に飲み込まれた神。悪意の塊になってしまった存在。神落ちして反省して大変だけど徳を積めば神も再起の可能性がある。でもね、それが出来ない邪悪な心に染まってしまった者は神の形を留めておけない。分かりやすく言えば妖怪になる。それが邪神と呼ばれるもの。
でだ、陰の神は悪の神ではないのだよ。人々からは忌み嫌われる存在ではあるけれど、それは必要悪でもある。我々は特に対立もしていないしね。彼等はその役割りがあってそこにいるんだ。人にはどうしても切り離せない恨み辛みの感情の対応はそちらだし、そこがあるから救われる者がいるのも事実なんだ。だけど悪い神様じゃないから人を憎み苦しめたい訳じゃない。あ! 地獄の閻魔さんみたいな感覚だとおもう!』
難しいけれど邪神は悪い神様が妖怪になった姿で禍津神は厄災の神だけど悪い神ではなくて必要悪の存在。閻魔さまみたいな感じ。閻魔さまの化身は地蔵菩薩様だから、確かに悪い存在ではない!
「なるほど。閻魔さまは小さい頃は怖いと思ってました。だけど、悪い人を裁く正義の味方だってある時思って、だから怖くなくなっちゃいました!」
『くくっ、怖がられないと分かれば彼等は喜ぶ。ちょっとこの珠を掌に乗せてごらん』
また水晶か。魔力は測ったんだけどな。
『陰と陽のバランスがわかる珠だよ』
「わかりました」
ごくり。
『ふむふむ。うん、やっぱりルナは陽の気が強いね。緑が強いから当たり前かな。だけど、確かに陰の力も持っている。そちらは慎重に使うんだよ』
「はい……」




